36.大賢者、テロを予知する
7月も中旬となり、学期末テストが近づいてきた。
わざわざテスト勉強をしなくても、俺もさやかも十分な知識を有しているが、この学校は変な教師もいるので、ひねくれた問題も出てくる可能性がある。
そこで、先輩方から過去問題をコピーさせてもらい、ざっと確認していた。
案の定、日本語的によくわからなく、対策を立てなかったら間違った回答を書いてしまいそうな設問がいくつかあった。それらも暗記しておく。
こうしてテスト勉強も終了して、さやかとリビングでくつろいでいる時に、それは急にやってきた。
予知魔法による災厄の予感である。さやかも俺と同時に予知を感じたみたいで、お互いに顔を見合わせる。
「なにか、非常に大きな災厄が来そうだな」
「そうね。予知魔法のLvが違う私達が同時に感じたってことは、これは人災ね」
そう、自然災害の予知の場合は予知魔法のLvが高い人から災厄を感じ始める。しかし、人災(人が絡む災厄)の場合、災厄を引き起こす人物が災厄を引き起こす決断(もしくは災厄を引き起こすミスジャッジ)をした瞬間に予知できるのである。
予知魔法による災厄の予知は、自分に関係のある事柄でしか予知は困難である。
今回の予知の意味は、”たった今、どこかの誰から俺たちを巻き込む災厄の引き金を引くか、その行動を引き起こす決断をした”ことを意味する。
天災の場合は未来に必ず発生する。しかし人災の場合はそれを引き起こす人がその行動を決断をしない限り災厄は発生しないからだ。
「よし、災厄に巻き込まれるのはごめんだから、詳細を予知していこう」
「はい、……。ここより少し離れた南の方の場所で何らかの災厄が発生するみたいね」
「あぁ、俺にも分かる。ここから南西に30Km離れた場所で何かが起こるな」
「発生は4日後ぐらいかしら?」
「そうだな、4日後の午前中に発生するみたいだな。今日はもう夕方だし、明日災厄が起こる場所の特定をしに出掛けよう」
明日は平日だが、学校はお休みにしよう。先輩方には明日は休みにする旨と、会社の株売買は明日は先輩たちにお任せする、とメールを入れておく。
翌日、俺とさやかはタクシーで南西方向に向かう。目的地がはっきりしないので、南西方向30Km地点にある適当な場所を指定し、運転手さんに伝える。
1時間もしないうちに仮の目的地の場所に到着した。
海が近く、潮風を感じる。
「うん、この近くだな。予知気配が強くなってきている」
「そうね、もう少し海岸よりの西の方向ね」
「よし、ピッピで周辺を探ってみよう」
俺は一緒に連れて来たピッピを飛ばして、視界共有しながら周りを見渡す。ピッピの視界は俺の近くにいるさやかにも共有できるので、二人でそれらしき場所を探してみる。
実は探すまでもなくなんとなく予想はついていた。
その位置から海岸よりの方向には、松岡原子力発電所があるのだ。
この位置からでも良く見える。
この施設で大きな事故があれば、ここから30kmほど離れた俺達の住んでいるエリアにも深刻な影響が出るだろう。
ピッピを原子力発電所の上に移動させてみると、明らかにここが災厄の中心であることが予知魔法で感じられた。
たしかあそこには一般人も無料で入館できる『松岡原子力館』があったな。ちょうど目の前がバス停で、そちら行きのバスも来たので、俺たちはバスで原子力館に向かってみる。
直ぐに原子力館に到着し、ちょうど開館中だったので中に入ってみる。
展望台があったのでそこにエレベーターで登ってみる。そこからは原子力発電所の全貌が見えた。
遠足中だと思われる幼稚園児が保育園の先生に引率されて館内ではしゃいでいた。
俺たちは予知魔法を使い、3日後に何が起こるのかを予知してみた。すると、3日後の午後に発電所の3号機と4号機が爆発する光景が浮かんできた。
「さやかにも予知できるか?」
「うん、一番手前とその向こう側の建物が爆発してるのが分かるわ」
俺は少し時間をさかのぼって確認してみると、その日の午前中に、大型トラックがゲートから侵入し、その時に銃で警備員を撃ち殺しているようにも見えた。
距離が遠いのと、予知魔法では人の行動はぼやけて見えるので仕方がない。
俺たちはいったん展望台から降りて、原子力館の外のベンチに座り、もう少し予知してみることにした。
ピッピを原子力発電所のゲートまで飛ばして、当日の動きをさらに観察してみることにした。従魔に対し、リモートで予知魔法を発揮できるのは便利だな。
どうやら、原子炉を狙ったテロのようだ。テロリストたちはゲートを突破すると、二手に分かれ、4号機と3号機の原子炉建屋の入り口に爆発物らしいものを仕掛け、ドアを爆発で吹き飛ばし、中に押し入るようだ。
その後内部で何があったのかは分からないが、十五分ぐらいで彼らは出てきて、乗ってきたトラックに戻っていった。
テロリストトラックに戻ったころにようやく警察が到着したようだったが、警察と打ち合いをしているうちに、4号機と3号機の建屋内部で爆発が発生したらしく、破壊された入り口からもうもうと煙が出てきた。
そこまで確認したらそれ以上の確認は必要ない。俺はピッピをゲートまで戻して、テロリストがどこから来たのか突き止めることにした。時間を少しづつ戻して予知を行い、トラックの軌跡を追っていかせる。
しばらくして車で10分ほどの廃工場の様な所からトラックが出てきたことが分かった。
俺は予知魔法を解除し、ピッピを通して廃工場の上空から視界共有で観察してみた。よく見てみると工場ではなく、廃材の集積所のような場所だった。
周囲は高い壁に覆われており、出入り口も背の高いゲートが閉じられており、地上からでは内部は見ることはできないだろう。そして予知魔法で見たトラックが既に集積場の中に駐車されていた。ピッピをもっと近づけて観察を続けた。
どうやら集積場はテロリストのアジトのようになっているみたいだ。
トラックの後ろの扉が開いていたので、ピッピに覗かせてみると、大きな箱がいくつも置いてあり、内部の壁にはライフル銃がいくつもかけられていた。
さやかも視界を共有していたので、その後どうすべきか二人で話し合った。しばらく議論を続けたが、概ね行動計画がまとまったので、まずはテロリストのアジト近くまで行ってみることにした。
タクシーを呼んで、アジト近くまで移動する。アジト近くには空き地も多くあったので、その中で一番人気の無い空き地に移動し、そこから探知魔法でアジトを探知する。アジト内には6人の人間が居ることまでは分かった。
俺たちが居る場所は奥まったところにあり、周囲からは背の高い雑草に囲まれており、周囲からは見られない空き地だったので丁度良かった。俺たちはそこの広場に魔法陣を描き、いったん家にジャンプして帰る。
家に帰ってから、さやかと再度話し合う。
テロリストをどう処理すべきか?
俺達が一般人だったら警察に届けるだろう。
しかし、高校一年生の俺たちが、警察に”ここにテロリストが居て3日後に原子力発電所に対しテロ行為を行います”なんて訴えても相手にしてもらえないだろう。
結論として、テロリストたちは俺たちで殲滅することにした。
大方針が決まったので、後細かな手順を相談していく。
21世紀の日本でのんびり生活したい主人公ですが、色々事件に巻き込まれていきます。
今回はテロリストとの戦いになりそうです。はたしてどのように戦うのでしょうか?




