35.大賢者、信用取引に手を出す
i経済研究所の方は絶好調で、会社保有資産は順調に増えていっている。
先輩方にも給与を支払うこともできているので、先輩方はアルバイトはやめてしまった。
自由な時間が増えたので、先輩方も含め部員全員が平日は8時に経済研究部の部室に集まって会議をするのが常となっていた。
大国主AIが売買を推奨する銘柄に対し、各自が予想に対する意見を述べて、その日に売買する銘柄を決めるのが毎日の日課だ。
AIの平均勝率75%をできるだけ100%に近づけようとすることが、会議の目的だ。
俺とさやかは予知魔法で、どのAI指定銘柄が予想を外しているのか最初から分かっていたので、先輩方の判断意見をうまく誘導しながら売買銘柄を決定する。
これにより会社としての株の売買は、勝率95%という驚異的な数字となっていた。
平均して1ヵ月に会社保有資産は1.5倍となっている。
合間に先輩方も自分の口座での売買を続けており、先輩方はこの利益だけで十分生活できるほどになっているみたいだ。
今日も売買銘柄を会議で決定し、証券取引が始まってから先輩方に会社口座の一連の売買を処理してもらった。
今日は更に会議を予定していた。会議の内容は『会社の株取引を現物から信用に切り替えるか否か』だ。
現物買いだけだと、相場が大きく下がった時には利益を得ることが難しくなる。現物株を売り払ってじっと耐えるだけだ。
しかし、信用取引なら下げ相場でも信用売り(空売り)をすれば大きな利益が見込まれる。しかも、保有資産の3倍までレバレッジが掛けられるので、単純計算で運用成績は3倍増が見込まれる。しかし売買を誤った時の損害も3倍になり、下手を打つと資産のすべてを失いかねない。
すでに、大国主AIは空売り用の、”空売り推奨銘柄”の表示が出来るようにアップデートされていた。
大谷先輩が最初に意見を出した。
「この1ヵ月半の運用成績から考えると、運用をミスる可能性は少ないと思うんだ。だからより早く利益を上げるためには信用取引に全面的に移管すべきだと思う」
岩崎先輩も同調する。
「賛成するわ。ここ1週間は下げ相場だったので、現物買いでの利益はあまり無かったけど、信用取引で空売りができていたら大きな利益になっていたはずよ」
」
近藤先輩も意見を述べる。
「私も信用取引に賛成だけど、AIが信用売りにも対応できるのかが問題ね」
さやかが答える。
「それは大丈夫。今は現物売買用に推奨銘柄を表示しているけど、既に信用売買用の推奨銘柄の予想と表示ができる機能は完成しているわ」
俺は最終ジャッジをする。
「では、会社の運用は全面的に信用売買に移行する方向にしましょう。ただ、今週は様子見として、机上での売買として、その結果が良かったら来週から全面的に切り替えることにしましょう。既に信用取引口座も開設済みです」
こうして1週間様子を見ることとなった。まあ、予知魔法で確認しているので、信用取引でも損することは無いんだけどね。
結局1週間の机上売買で十分すぎる結果となったので、翌週から全面的に信用取引で、しかも信用枠を目いっぱい使う形の取引としたのである。結果として。現物売買の時は1ヵ月で1.5倍増だった資産が1ヵ月で3倍になる程度まで増加していくこととなったのである。
その運用成績を見て、近藤先輩も岩崎先輩も信用取引を開始した。
大谷先輩は元々信用取引はやっていたのだが、大国主AIが信用売りにも対応したことを受けて、空売りも積極的に実行するようになった。
こうして部員全員の保有資産の増加スピードは大きく伸びたのだった。
株の信用取引は結構リスクがあると言われていますが、予知能力のある大賢者にとってはノーリスクですね。
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