33.大賢者、会社を運営開始する
5月の連休も終わり、いよいよ会社の設立が完了した。
会社は株式会社として、全株を俺が出資した。出資金額は1000万円。
会社名は『i経済研究所株式会社』井本のiを取って命名した。
早速、法人名義でのネット銀行口座とネット証券の取引口座を開設する。
さらに、さやかに頼まれていた、高性能PCの残り4台を会社名義で設備として導入。
さやかが事前に準備していた、会社のホームページも完成しており、各種検索エンジンへの登録も完了させた。
会社の目的は自己資金による株投資での利益を出すことに加え、ベンチャー企業、スタートアップ企業への出資だ。
まだ自己資金がそれほどないので、出資はもう少し先になるが、それまでは株の売買で自己資金を増やしていく。
経済研究部の先輩方にも、会社設立の報告をして、会社ホームページを使って説明する。
・当初の予定通り、大国主AIを使って、会社の投資資産を増やしていく。
・ベンチャーキャピタルとして、有望企業へ出資する旨ホームページに
掲載し、募集を募る。
先輩方へは、AIの示す推奨銘柄情報を元に、会社の証券口座で株を売買してもらうことと、出資依頼の要求がどのぐらい来るかは分からないが、それらの対応をしていただきたい旨伝える。
「会社に所属していただくので、色々お願いすることとなります。まずは大国主AIが値上がり予想した銘柄を、毎日の会議で更に絞り込んで勝率を上げてもらいたいと思います」
「なるほど。現在の値上がり的中率75%を、更に絞り込んで勝率を上げていくんだな?」
「その通りです。もちろん給料はお支払いします。とりあえず月20万円からでいかがでしょうか?」
先輩方はその給与金額を聞いて驚いた。
「えっ? そんなにもらっていいの?」
「それだけもらえるなら今のバイトは辞めることができる」
「是非お願いします」
先輩方は大いに乗り気だった。
「では、正式に雇用契約しましょう。あと、AI用パソコンが1台だったのが5台に増え、さらに高性能グラフィックボードでの高速演算を並列で処理することができるようになりました。先日のデモの時は一部業種のみ予測可能でしたが、これからは一部上場企業のみですが全業種が予測対象になります」
「会社名義の証券口座で株の売買をすることは分かった。大国主AIの情報を使って個人の口座での売買も許してもらえるんだろうか?」
「はい、それも大丈夫です。ただし、大国主AIの予想結果は企業秘密として、絶対に外部に漏らさないでください。別途秘密保持契約を皆さんとで結びたいと思います」
◇◇◇
会社の運営は最初から上々だった。
大国主AIの予想だけでも75%の確率で的中するのに、最終的には予知魔法で得た情報でふるい分けするので損するわけはない。
先輩方も、今までやっていたバイトもやめて、自由時間が増えたと大喜びだ。
会社の証券資産は800万円からスタートし、2週間後には1000万円を超えた。
最初は全く知名度が無かった会社だったが、検索エンジンへの登録や、DM代行会社を通じての宣伝により、徐々に認知度が上がってきて、『出資をお願いしたい』との依頼もぽつりぽつりと来始めた。
まだ資金が十分ではなかったので、出資までは至らないが、先輩方には出資依頼の内容の精査をお願いしておいた。
ある日の会社会議での出来事、
「では、本日の役員会議を始めます。さやかさん、AIでの買いと売りの推奨銘柄を提示お願いします」
俺たちの高校の特性上、みんなが学校に来ているとは限らないので、リモート会議となっている。
さやかがAIが示した情報を説明する。
確率が75%とは言え、外れる確率もあるた。
株の売買時は皆で吟味するのが会社方針となっている。
大谷先輩が発言する。
「東方電気を売るように推奨されているが、配当金が高いし、配当権利確立日はもうすぐなので、しばらくは値が上がるのではないかと思う。もうしばらくは保有したほうが良いのでは?」
俺は予知魔法で確認した情報と照らし合わせてから返事をした。
「たしかにそうですね。ではこの銘柄はあともうしばらく保有しましょう」
概ねこのような感じで、先輩方が株の売買に関して意見を述べ、それに対し俺が予知魔法での結果を元に最終判断を下す形式だ。
先輩方は、さらに自分の個人口座での売買も大国主AIの情報を元に行っており、各自の保有資産はぐんぐん増えているようだ。
会社のホームページも先輩方にお願いして常に更新を続けている。
岩崎先輩は帰国子女で、英語が堪能であることが分かり、英語版のホームページ作成をお願いしたり、ベンチャー企業への出資条件について、細かな部分に関して、先輩方とも相談して決定したりして、ゆっくりではあるが、着実に会社運営は進んでいった。
◇◇◇
大谷先輩視点:
新学期になって僕は困っていた。
何がって? もちろん経済研究部の部員数だ。
昨年度まで在籍していた3年生が4人も卒業してしまい、とうとう僕たち2年生の3人だけになってしまった。
しかしながら傍から見ると、地味でどんな活動をしているのか分からない部活のため、新入生の獲得にも苦労していた。
「僕たち高校生は投資や経済に関して、もっと深く勉強しないといけないんだけどなぁ」
そうぼやいてみても仕方がない。
その日、授業の合間にカフェテリアに行ってみたところ、新入生らしい2人を見かけた。
よく見てみると、会社設立関係の本をたくさん積み上げて読みふけっているではないか? この子達なら入ってくれそうだ。
そう考えて早速声をかけてみる。
「おーい、君たちは新入生?」
「はい、新入生です」
「うん、ようこそ我が高校へ。ここは自由でいいぞぉ。でこちらは彼女?」
「はい、自由な高校って聞いていて入学しました。彼女じゃないですよ。従妹です」
「従妹?そうなんだ。それにしても面白そうな本を読んでるね。会社を興すの?」
「えぇ、そのつもりなんです」
「おぉ、スゲーな。それじゃぁ俺たちの部活に入らないか? 経済研究部っていうんだ」
こんな感じで約束を取り付けて、経済研究部に翌日見学に来てもらえることになった。
そして翌日、彼らを部室に案内して色々話を聞いてみら彼らはすっかり乗り気で入部の返事をもらえた。
「分かりました。面白そうなんでこの部活に俺たち入ろうと思います」
「おぉ!ありがとう歓迎するよ。あと、強制ではないが君たちも株投資の口座を開いてもらえると、この部活がもっと楽しくなるけどどうする」
「あ、それなら僕は既に持ってますし、さやかも現在口座開設申請中です」
これはびっくりした。少なくとも井本君は中学生の時から株取引をやっていたのか?
「えっ?そうなのか? 佐藤さんはともかく、井本君は中学校時代に既に株取引をやっていたってこと?」
「はいそうなります」
「すばらしい。大歓迎するよ」
その後、部員たちとお互い自己紹介も終わり、彼らの今後の計画を聞いてみた。
「で、君たちは計画とかあるの?」
「はい、僕たちはすぐにでも起業しようと考えています」
「えっ?そうなの?詳しく教えてくれない?」
そして彼らの企業計画を聞いてさらに驚くことになった。
・会社を早急に設立する。
・資本金は1000万円で、それを原資に主に株投資で会社資産を増やしていく。
・株価に関しては、高い確率で予想ができる手段を有している。
・法人名義で株売買を行い、利益を得る。
なんだと? 高校一年生で起業? まあそれは良いとして、『株価に関しては、高い確率で予想ができる手段を有している』だと?
その時は詳細は言葉を濁して教えてもらえなかった。
数日後、さやかさんが作った株価予想AIの説明をされてさらなる衝撃を受けた。
直近の勝率が75%?
とりあえずAI推奨銘柄を試しに我々で購入してみた。
僕の場合、信用口座もあったので、信用取引で資産の3倍近くの株を信用買いした。
確かに最初のデモではすごい成績だったが、真に受けて確認もせずに、あまり聞いたことのない銘柄に資産のすべてを突っ込んでしまったことになる。
家に帰って、購入した銘柄に関してより詳しく各種指標を確認してみた。
確かに悪い銘柄ではなさそうだが、明日値上がりする根拠は薄いような気がする。
しかも、日本時間の深夜10時半にスタートしたニューヨーク市場は大幅な値下げから始まっている。
これじゃあ明日の日本市場は下げになりそうだな。
しかも僕はここまでの資金を突っ込んで信用買いを実行したのは初めてだったので、非常に不安になってしまった。
下手すると資産が1日で半減しかねないからな。
そしてあまり眠れない夜を過ごし、翌日9時前に部室へ集合した。
岩崎さんも近藤さんも不安だったみたいで、昨晩は不安であまり眠れなかったみたいだった。
その後、新入生の2名も部室にやってきて、皆でパソコンで証券会社の取引ページに接続する。俺たちは同時にスマホで各自の取引画面を表示。
9時になり市場が始まり、結果を見ると驚愕した。日経平均はニューヨーク相場の影響で大きく下げているのに、俺たちの購入した株は軒並み大幅高で、20%もアップしている銘柄もあった。
特に僕は信用取引で、保有資金の3倍もの株を買っていたので、総資産は大きく増えていた。
井本の指示で長期保有は避けて、全員その場ですべて利益確定の為一旦株をすべて売却した。
1年近く株の取り引きをやっていたが、1日でこんなに資産が増えたのは初めてだ。
彼らの作成した株価予想AIにあらためておどろいた。
それにしても、佐藤さんはともかく、井本は非常に不思議な奴だな。
2才年下のはずなんだが、めちゃくちゃ年上と接しているような気分になる。
常に落ち着いているし、株価が大幅に上がったら俺なんか飛び上がって喜ぶのに、淡々と処理しているし。あいつは何者なんだろう?
主人公はいよいよ会社を立ち上げました。
これからは仲間と一緒に資産を増やしていきます。




