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32.大賢者、AIソフトを使う

翌日から授業の合間に会社設立に向けて動き出した。

この世界は便利なもので、会社設立の代行会社ってある。

ネットで良さそうな会社に目星をつけ、会社設立は丸投げすることにした。


とは言っても自分でやらなくてはいけない作業も多々あり、精力的に作業を進めていく。

さやかには、株価予想AIソフトを作ってもらうことにする。

当面は、予知魔法で予知した内容をこっそり入力して、それをもっともらしく表示するだけだから直ぐに完成できるだろう。


それっぽく見せるため、100万円以上出して高性能パソコンを購入し、ソフト開発環境とネット環境も整えた。


さやかは知力強化魔法を使い、すさまじい速さでソフトウェアを開発していった。


本当は、ユーザーインターフェースだけそれっぽく見せて、予知魔法で得た株価のデータを表示するだけの簡単なソフトのつもりだったのだが、さやかは1週間をかけてガチに独自のアルゴリズムを備えた株価予想AIソフトを完成させてしまった。


プログラマーならだれでもわかると思うが、ソフト開発において一番時間がかかるのがソフトの不具合バグを見つけ出し、修正することだ。


しかし、強化魔法を知力強化に使ってプログラミングをしているさやかにとっては、プログラムの記述時(コーディング時)に、予想されるすべてのバグを排除しながら開発していくらしい。

プログラムの記述完了したと同時にほぼ100%バグ無しのソフトが完成するのだ。


俺には理解できないが、かなりすごいことらしい。

世の中にたくさんいるプログラマーの皆さん、チートすぎてごめんなさい。


1週間でソフトは完成したが、予知魔法を使わなくても、株価予想AIだけで十分に儲けられそうなほどの精度だった。


さやかはこのAIソフトに『大国主AI(おおくにぬしAI)』と命名していた。


大国主AIは世界の株情報、為替情報、商品相場情報をネットから自動収集し、さらには経済関係やその他の世界のニュースを取り込んで、独自のアルゴリズムで株価を予想する。

まだ仮運用の状態だったが予知魔法の補正無しでも勝率70%というさまじい性能だ。


もちろん予知魔法での補正パラメータを入力すれば、勝率は100%となるが。


さやかは、


「まだ多少改良の余地があるんだけど、十分な性能を得るためにはコンピューターの並列分散処理が必須で、少なくともこれと同程度のパソコンをあと4台は欲しいの。更に20万円程度の高性能なグラフィックボードも付けてもらえる?」


え? 株の予想にグラフィックボードが必要なの? あぁそう、CPUでは苦手な大量の演算をするのに高性能なグラフィックチップが必要なのね?


うーん、プログラミングに関しては、さやかの方が俺より数段上だな。

とりあえず、会社設立後に会社経費で購入することにして、しばらく待ってもらうことにした。


さやかは大国主AIを完成させると、次に魔法陣解析ソフトの開発を開始した。

さやかは一度何かを始めるととことんのめりこむ傾向があるな。

たしか前世でも同じような傾向があったと記憶がある。


それでも俺たちは学校にもちゃんと通っていた。

週2,3回学校に行けばいいし(自主学習とレポート提出は必要だが)、魔法陣を学校向かいの公園に設置していたので通学時間がほぼゼロなのもありがたかった。


授業が終わると部活にもちょくちょく顔を出していた。

この日は、朝8時半に部室に集まり、大国主AIのデモをすることになっていた。


大谷先輩は、


「株価予想のAIのデモが楽しみだよ」


「はい、現在このパソコンと自宅の大国主AIがつながっているのでこれからデモを開始します」


そう言って、さやかはパソコンを操作して説明を開始した。


「この数値は昨日の14時に大国主AIから購入推奨された銘柄です。今回はその推奨銘柄の中から、翌日大きく値上がりする可能性の高い銘柄を私の方で厳選して表示させてあります」


「なるほど、翌日必ず値上がりするんなら、前日に買って、その翌日に売却しておけば損する可能性は少ないわけだな」


「設定を変えれば、1週間後の売却推奨や、1ヶ月後に売却推奨へ表示を切り替えることも可能です」


「ふむふむ、過去の勝敗のデータはあるかな?」


「はい、こちらが過去1週間の勝敗データになります。3日前にソフトをアップデートしていたので、アップデート後にさらに勝率が上がってきているのが分かると思います」


岩崎先輩が驚いたように声を出す。


「直近で勝率75%? すごいじゃない」


俺もそう思う。予知魔法の補正無しでよくまあここまで予想できるAIが作れたよな。

さやかは天才だ。


このソフトは裏コマンドで予知魔法の補正を入力可能なので、そうすれば100%の勝率となるけどね。


近藤先輩も声を上げる。


「もう一度、昨日14時時点でのAIの推奨銘柄を出してくれる? もうすぐ場が始まるから結果を確認しましょう」


ちょうど9時になったので、先輩たちは自分のスマホで大国主AI推奨銘柄の株価を確認し始めた。


「おどろいたな、日経平均が下がっているにもかかわらず、推奨銘柄はほとんど上昇している。一番低い銘柄でも1%は値上がっているな」


「どうですか?なかなか性能が良いでしょう? 現在はパソコン1台で演算していますが、会社設立後は4台増強して5台で並列演算させてより高い勝率を目指します」


「すごいな。俺は今日は保有株をいったん手放して、このAIの推奨銘柄を買ってみるか」


岩崎先輩も、近藤先輩もその意見に同意した。


「AIの翌日予測の傾向としては、大引け(その日の市場のクローズ時)直前が最も正確な値になるので、14時半過ぎに推奨された銘柄を買うと良いですよ」


「そうか、良し分かった。これから授業もあるし、14時にまたここに集合しよう。午後もAIを活用させてくれるかな?」


「はい、大丈夫です。14時にまた集まりましょう」


こうして、いったん解散して、それぞれの授業に向かった。

さやかは授業中もタブレットPCを使って、魔方陣解析ソフトのコーディングをしていた。


午後になり、14時に皆が集まった。

「では、AIの本日購入し明日売却の推奨銘柄を表示します」


「ふむふむ、おっ! この銘柄は俺も注目していた銘柄だな。んっ? こんな銘柄は知らないが大丈夫なのか?」


「勝率は75%ぐらい行くかと思いますが、負ける可能性も25%ありますので、2,3銘柄に分散したほうが良いですよ。各自の間でも同じ銘柄ではなく分散してみてはいかがでしょう」


大谷先輩は、


「よし、俺は現物買いではなく、信用買いで持ち金の3倍を買うぜ」


と強気に出ていた。


結局大引けまでに、大谷先輩は信用取引で資産の3倍分を3銘柄購入。岩崎先輩と近藤先輩は現物買いでそれぞれ3銘柄を購入した。


それぞれが別銘柄を購入したので、全部で9銘柄が購入された。


岩崎先輩は、


「会社情報も、各種指標も、チャートもほとんど見ないで株を購入したのって初めてだよ」


とちょっと興奮気味。


今回は、裏コマンドで予知魔法で判明した株価情報をAIに入力してあるので、勝率は100%。購入した株は明日は全て値上がるんだけどね。


「では、明日は9時前にここに集合して結果を皆で確認しよう」


その後、会社設立の状況を皆に説明してから今日は解散となった。


◇◇◇

翌日、8時50分には全員が部室にそろった。


大谷先輩は、


「みんなおはよう。昨晩のダウ平均は下がっていたし、シカゴ日経平均も続落していた。少なくとも今日の日経平均は下げから始まるはずだ。昨日買った株は大丈夫かな?」


と朝から心配そうだった。


「まあ、あと数分で結果はわかりますよ」


9時になった。予想通り、日経平均は1%程度の下げからスタート。


各自自分の購入した銘柄の値動きを見ているが、買い気配の状態でなかなか値がつかない銘柄もあった。

さらに数分後、保有株が次々に値が付き始めて、先輩方は嬉しい悲鳴を上げ始めた。


「きゃー、すごい。私の資産、いきなり15%増よ」


岩崎先輩は飛び上がって喜んでいた。


他の先輩も大喜びで興奮していた。


「井本! これはすごいな。日経平均が下げている中で、これだけ上げてくる銘柄を推奨できるなんてな」


「ですね。僕もびっくりしてます」


「それで、これら銘柄は保持したほうが良いのか? 今日売ったほうが良いのか?」


「はい、AIに昨日推奨した銘柄の今後の予測を表示させます。 銘柄の右に▼マークがついているのは明日は下がる可能性が高いことを示しています。」


「おいおい、ほぼ全ての銘柄に▼マークがついているじゃないか?」


「ですね。なので早めに手放すことを推奨します」


先輩たちは大慌てで売却の操作をする。


数分後にはすべて売却が完了し、全員で昨日から本日にかけての成果を報告する。


大谷先輩:3銘柄平均で10.5%アップ

岩崎先輩:3銘柄平均で11.3%アップ

近藤先輩:3銘柄平均で12.0%アップ


全て税金を引かれた後の純資産増のアップ率だ。


大谷先輩は、


「このAIすごいな。こんなの公表したら大騒ぎになるぞ」


「いえ、二人で相談したんですが、このソフトは公開するつもりはありません。このAIの指示で売買をしてうまくいくのは全体の売買数に比べ、非常に少額の場合に限られます。広く世間に公開して、多くの人がこの予想を使って売買すると、予測は外れてしまうと思います」


とさやかは言う。


「たしかに大勢の人が同一の予測に従って売買したら、変動が大きくなりすぎる気がするな」


その後、大国主AIを週間予測モードにしたりて、部員はその推奨銘柄を参考にしながら売買を続けるのだった。


相棒のさやかはコンピューターソフトウェア開発の天才のようですね。

これから仲間と共に主人公は会社を大きくし、資金を貯めていきます。

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