31.大賢者、経済研究部に入部する
翌日、午前と午後の授業を受けたところで約束の時間になり、俺とさやかはカフェテリアに行った。
既に大谷先輩は待ってくれており、俺たちを見るとニコニコ声をかけてきた。
「おっ、来てくれたな。部室はこっちだ」
そう言って俺たちを案内してくれた。
案内された部室は8畳ほどの部屋だった。
中にはホワイトボードとパソコンが設置されており、部員らしき女子生徒が二人いた。
「紹介する。新入生の井本君と佐藤さんだ」
「井本です。よろしく」
「佐藤です。よろしく」
「そしてこちらは、岩崎 恵美さんと近藤 佳奈さんだ。二人とも2年生だ」
お互いに、あいさつをする。
岩崎さんはすらりとした長身で、スタイルも良くモデルかと思えるほど美人さんだ。
近藤さんは小柄でかわいらしい感じのおとなしそうな子だ。
「まあ、この二人が入部してくれるかは分からないが、経済研究部に興味があるみたいだ。できれば入部してもらえると嬉しい。実は部員はこのメンバーだけで、3年生がいなくて、部活動としての最低人数の5名を4月から割ってしまっていてね。存亡の危機なんだ」
「といっても、どんな部活か全然分からないもんで」
「よし、では説明しよう。日本の教育っていくつか問題があると考えている。一つは英語だな。中学から高校まで6年も英語を勉強しても、全然話せるようにならないよな?」
「えっと、そうかもしれないですね」
俺とさやかの場合、知力強化魔法により既に英語は完璧にマスターしており、英語が話せないっていわれてもピンとこないのだが。
「そして、もう一つの大きな問題は、投資に関してまったく教えてくれないということだ」
うん、これは分かる。高校の教科書をすべて読破したが、投資に関する内容は無かったな。
「そこで、この部活では、世界経済や経済の基本を研究しながら、主に株投資を実践して投資に関する知識を深めることを目指してるんだ」
「おぉ? そうなんですか?」
「そう、なのでここに居る3人は既に株取引口座を持っていて、少額ながら株の売買も行っている」
「なるほど。投資を実践すればより本気になりますもんね」
「株取引に関しては、この3人は今のところ収益はプラスだ。つまり、色々勉強もできるし、お金も儲かるという一石二鳥の部活なんだぜ」
俺はさやかの方をちらっと見てみる。
さやかは小さく首を縦に振った。
「分かりました。面白そうなんでこの部活に俺たち入ろうと思います」
「おぉ! ありがとう歓迎するよ。あと、強制ではないが君たちも株投資の口座を開いてもらえると、この部活がもっと楽しくなるけど、どうする?」
「あ、それなら僕は既に持ってますし、さやかも現在口座開設申請中です」
「えっ?そうなのか? 佐藤さんはともかく、井本君は中学校時代に既に株取引をやっていたってこと?」
「はいそうなります」
「すばらしい。大歓迎するよ」
部長は大谷先輩とのことで、部員が5人になったので廃部にならずに済んだと大喜びだった。
学内の売店でジュースやお菓子を買って、簡単に歓迎会となった。
大谷先輩は、
「俺は高校と大学で経済を徹底的に学び、並行して投資で資金を溜めて、大学入学と同時に起業するんだ」
岩崎先輩は、
「私は株投資やもう少ししたらFX取引にも手を伸ばして大学進学の資金を貯める予定。バイトでお金貯めてるけど、家が貧乏だから高校の授業料も私が払わなきゃだからなかなか資金が貯まらなくって」
近藤先輩は、
「私は母親しかいなくて、高校は出してやるが後は知らん、って方針なので、岩崎さんと同じでバイトと投資でお金を貯めて、大学資金を高校の内に作る予定なの」
「で、君たちは計画とかあるの?」
「はい、僕たちはすぐにでも起業しようと考えています」
「えっ?そうなの?詳しく教えてくれない?」
俺はさやかと少し顔を見合わせ、念話でお互いの意思を確認する。
俺はさやかとまとめた起業計画を話しすることにした。
「これはまだ計画段階ですが、今月中に起業するつもりでいます。業務内容は株の予想および自動売買のソフトを作り、主に株投資を行い資金を溜め、最終的にはスタートアップ企業への投資会社とするつもりです」
その後、俺はホワイトボードを使いながら起業計画の概要を説明した。
・俺たちは会社を早急に設立する。代表取締役は俺。本社所在地は俺の家、
・資本金は1000万円で、それを原資に主に株投資で会社資産を増やしていく。
・株価に関しては、高い確率で予想ができる手段を準備している。
・法人名義での株売買を行い、利益を得る。
・ある程度資金が貯まったところで、ベンチャーキャピタルとして、有望な企業に出資する。
出資する。
・俺とさやかは設立した会社の社員となり、給与をそこからもらう形とする。
大雑把に説明を終えると、先輩たちから質問が飛んできた。
「株価を高確率で予想する手段ってなんなんだ?」
「はい、実はさやかはプログラムの天才で、独自アルゴリズムの株価予想AIソフトを開発中なんです」
「え? そんな都合のいいアプリがあるの?」
「まだ開発途中ですが、成績は良いですよ。仮運用ですが半年前に50万円だった資金が、今や2000万円近くになってます」
うん、運用成績は嘘では無いが、株価予想アプリってのはハッタリだ。これから作る予定なので完全に嘘ではないかもしれないが。
「マジか? いくら何でもすごすぎないか?」
「勝率70%ぐらいなので、AIの推奨銘柄を更に絞り込んで売買するといい感じです」
「うーん、面白そうだな。もしよければ俺もその会社設立に一枚かませてもらえないか?本やネットで色々勉強するよりよっぽど為になりそうだ」
静かに聞いていた岩崎先輩と近藤先輩も、目を輝かせながら、
「私たちもぜひ参加したいわ」
とお願いされた。
「はい、大丈夫です。色々協力してください。給料も出せると思いますので皆さんも従業員ってことで、これから会社設立を開始したいと思います。1ヶ月後位には運用開始しようと思います」
よし、従業員も見つかったし、資金を溜めるために頑張るぞ。
主人公は経済研究部に入部。仲間が増えました。
これからさらに資金を貯めていきます。




