30.大賢者、高校に入学する
4月になった。
俺は富士フリーダム高校に入学した。
この時のステータスは
名前:イモト シロウ(転生者)
性別:男
年齢:15
魔力:900/900
魔法:
・空間魔法:Lv5
・予知魔法:Lv6
・探知魔法:Lv5
・回復魔法:Lv5
・強化魔法:Lv5
・土魔法 :Lv5
・水魔法 :Lv5
・従魔魔法:Lv5
全ての魔法がLv5以上となった。
前世では魔法大臣クラスのステータスだ。
株価の予知を毎日のように実施していたためか、予知魔法はLv6まで来ている。
さやかも手続きが終わり、特に問題なく同じ高校に入れた。
現時点で財産は十分増えたので、さやかの分の入学金も授業料も俺が出しておく。
一応、我が家の住み込みの家政婦さんって名目だからな。
きちんと給料を支払う形で、税金関係も登録している。
富士フリーダム高校は、中学でまともに出席していなくても、卒業さえしていれば入学は拒まない学校だったので、ほとんど中学で授業を受けていたかったさやかも問題なく入学出来た。
中学でほとんど授業を受けていなかったのでそれを挽回すべく強化魔法で知力強化状態にして、中学の教科書や参考書はもちろん、高校3年間の教科書や参考書まですべて知識として入学前までに叩き込んでいた。
下手したらこのまま東京大学を受けても合格レベルに達するんじゃないか?
さて、俺が進学校ではなくこの高校を選んだ最大の理由は、通学の時間や授業選択で、かなり自由がきくからだ。
中学の2,3学期中、既に完全に覚えている内容をじっと座って聞き続けるのはかなり苦痛だった。
高校3年間もそんな苦行をするつもりはさらさらない。
かと言って、この世界で暮らすなら、高校そして大学と進みたいとは考えている。
さて、予知魔法がLv6になったことで、予知の時間的範囲や正確さがかなり広がった。
何年も先までは見通せないが、かなり先でも非常に大きな出来事が起こる場合は『予感』を感じることができる。
その能力だと思うが、何年先かは分からないが、非常に良くないことが起こる『予感』がする。
まだしばらくは先になりそうだが、前世での大賢者としての経験からすると、この世界は近い将来非常に大きな災厄に襲われると考えられた。
何が起きるのかは現時点では不明だが、今から色々準備しておこうと思う。
なにが起きるんだろう? 比較的先の未来と思われるが、ここまで強い危機感を感じるということは天災の可能性が高い。
大きな戦争が勃発する可能性も無いことは無いが、戦争の場合は人間の判断が引き金になるため、予知魔法で予知することはほぼできない。
核戦争とかではなさそうだ。
考えられる可能性としては、大地震、火山の大噴火、隕石の落下。
とりあえず今できることは財力を強化することだな。
何が起こるかわからないが、この世界ではとりあえず資金さえあれば大抵のことは何とかなるみたいだし。
また、別の観点からの対策として、魔力と科学技術の融合の研究を進め、新たなる可能性を追求したいと考える。
魔法だけでも色々できるのだが、21世紀の地球の科学技術と魔法を融合すると、できる範囲や事柄が一挙に広がりそうだ。
そのためにも資金が必要だ。
大雑把な計画はあるが、詳細はこれからだな。
入学式を終え、学校説明のオリエンテーションとなった。
この学校は授業タイプとして色々選択できるのだが、俺たちは通学タイプの中の週2,3日通学すればOKなコースを選択した。
早速、入学式の翌日から授業を受けるため登校する。
週2,3日といっても、毎日通学しても問題ないし、ほとんど行かなくても録画配信の授業を視聴し、レポートを提出すれば単位が取得できる。
授業形態も所属クラスというものは無く、大学の授業のように選択した講義を1年から3年生が混じって受けるような形式だ。
真っ先に行ったことは、学校内でほとんど人が入り込まない場所を見つけ、そこに転移魔法の魔法陣を準備することだった。
学校内には良さそうな場所が無かったが、道路を挟んだ向かい側にあまり人気の無い公園があり、そこの奥に良さそうな場所があったので、そこに魔法陣を準備した。
◇◇◇
高校での授業1日目。
俺は基本さやかと同じ授業を取ることにしたので、さやかと共に出席する。
今回は数学の授業だ。
うーん、やっぱり既に知っている内容の授業を受けるのはちょっと苦痛だな。
「さやか、どう思う?」
「私はこの時間は魔法の研究の時間にするわ」
「ん?練習じゃなくて研究?」
「そう、魔法陣って結構複雑よね? 誰が最初に作ったかは不明だけど。魔法陣の改良って試行錯誤で非常に困難よね?」
「確かにそうだな」
そう、大賢者と呼ばれていた私ですら生涯に改良した魔法陣はほんの数種類だ。
なぜこの模様で魔法が発動するのかは長年の謎なのだ。
「私、中学校時代に引きこもってた時、パソコンでプログラミングして遊んでいたの。だから、魔法陣のパターン解析のプログラムを作って魔法陣の解析を進めようと考えてるの」
「えっ?そんなことが可能なの?」
「前世ではコンピュータが無かったから解析は難しかったけど、この世界なら可能かと思う。最終的には魔法陣シミュレーションまで作ろうかと思ってる」
そういうとさやかはタブレットPCを取り出すと、PCの画面に製作途中と思われる解析プログラムを見せてきた。
さすがは前世で若くして魔法副大臣にまで抜擢されただけはある。
俺には考え付かないアイディアだな。
「うん、期待しているよ」
俺も何かやろう。
当面の課題は将来予想されている災厄に備えるための資金作りだな。
現在も続けている株での資金作りでも十分儲かるのだが、いかんせん個人売買だし、俺もさやかも未成年なので、資金があっても色々制約も多そうだ。
色々考えて法人化すればいいんじゃないかと思い立ち、会社を設立することに決めた。
早速授業終了後にさやかと一緒に図書館に行き、会社設立関連の書籍を数冊借りる。
カフェテリア(学生食堂)でお茶しながらさやかと会社設立方法と、会社はどのような業務形態にすべきか話し合う。
その結果、投資会社を設立するのがいいのではないかと結論付けた。
現在の資産で会社を設立し、法人名義で株投資を続ける。
資金がある程度溜まったらスタートアップ企業への融資や投資を行い、大きなリターンを得る。
まだ、スタートアップ企業へ融資するほどの資金は無いので、しばらくは株投資で資金作りだな。
さやかからは、株に関しては自動売買ができるソフトをパソコンで作りたいとの申し出があった。
その自動売買ソフトに、株予想のプログラムも組み込んめば、売買はかなり楽になるとの事。
そんな感じでさやかと二人、カフェテリアでコーヒーを飲みながら(さやかは紅茶だったが)ノートにアイディアを書いていく。
「おーい、君たちは新入生?」
とつぜん声を掛けられた。
振り返ると、いかにもさわやかイケメンという感じの生徒がいた。
この学校は制服はあるが。私服登校でもOKなので、この学校の指定制服を着ている生徒は現時点でほとんどが新入生だ。
俺たちもせっかく買ったので指定の制服を着てきている。
しかし、2年生、3年生はほとんど私服か、女子生徒はどこかの学校の制服をアレンジして着ている子も多い。
俺たちの服を見て新入生と判断したのだろう。
「はい、新入生です」
「うん、ようこそ我が高校へ。ここは自由でいいぞぉ。でこちらは彼女?」
「はい、自由な高校って聞いていて入学しました。彼女じゃないですよ。従妹です」
事前に決めておいたとおり俺たちの関係を従妹と説明した。
さすがに赤の他人が同じ住所じゃ怪しまれるし、同じ誕生日だから双子の兄妹って手も考えたが、全然似てないし、苗字も違うのでので、従妹ってことにしたのだ。
「従妹?そうなんだ。それにしても面白そうな本を読んでるね。会社を興すの?」
「えぇ、そのつもりなんです」
「おぉ、スゲーな。それじゃあ俺たちの部活に入らないか? 経済研究部っていうんだ」
経済研究部? 部活動にしてはひどく珍しいな。大学のサークルならありそうだが。
「なんか面白そうですね。見学に行ってもいいですか?」
「是非来てくれ。明日は3時には午後の授業が終わるから、その頃ここで待っててくれ」
「はい、わかりました。えっと……」
「あ、ごめんごめん。名前言ってなかったな。おれ大谷 翔。2年生だけど、一度別の高校を中退して入り直してるんで、年齢的には3年生だな」
「ありがとうございます。僕は井本史郎。彼女は佐藤さやかです」
「佐藤です。よろしくお願いします」
「よろしく。じゃあまた3時にここで」
大谷先輩はそう言って去っていった。
俺たちは引き続き、会社設立とその運営形態について打ち合わせを続けた。
会社設立は16歳以上でないと印鑑登録ができない等のため難しいらしい。
しかし、俺たちは4月生まれなので、ちょうど16歳になったところだ。
早速実印を準備して会社設立に取り掛かろう。
将来会社は俺たち二人だけではなく、従業員も入れる予定だ。
その際に、従業員に『株価は魔法で予想している』、などど言えるわけもないため、『独自アルゴリズムのAIソフトで予想している』とすることにした。
その為にもさやか考案の株予想ソフトは必要だな。
ソフトの開発に関してはさやかに任せることにした。
主人公は高校生になりました。
相棒のさやかと共に活躍していきますのでお楽しみに。
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