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2.大賢者、魔法を使ってみる

まずは魔法を使うための基本エネルギーである魔素が、この世界にどれだけあるのか確認してみる。


前世では意識することもなしに周囲の魔素の濃さを感じることができていたが、転生後の今はまだ魔法がうまく使えないからか意識を集中しないと感じられない。


それでも10分ほど意識を集中していたところ、ようやく魔素を感じることができた。


ふむ、前世の世界より魔素が濃いな。

これは魔素を消費する人間や動物が居ないので魔素が濃いのかもしれない。

体内にある魔石は周囲の魔素を吸収して魔力を貯めこむ。

その魔力を消費して魔法を使うのだ。

この世界にも大気中に魔素有って良かった。


次に自分の魔石に意識を集中してみる。


うん、感じる。魔素を吸収していつでも魔力を使える状態だ。

それにしても健康診断で魔石が見つかって、それを手術で取り除かれてなくて良かった。

切除されていたら魔法は二度と使えなくなるところだった。


では早速魔法を使ってみるか。……だめだ使えない。


転生後、14年も魔法を使っていないし、そもそもこの身体で魔法を使ったことがないんだから急には無理だな。


前世の世界で子供が初めて魔法を使う練習方法を思い出し、初歩の攻撃魔法の一部である火魔法から挑戦してみる。


初歩の魔法なんだから簡単に使えるようになるかと思ったが、なかなか魔法が発動せず焦ってきた。


「あれ? なんか感覚が戻らないぞ。 前世ではどうしてたっけ?」


焦りつつもしばらく試行錯誤したら、指先からろうそくの炎のような火が出せるようになった。


「よかった、この世界じゃ魔法は使えないかと思ったわ!」


前世では大賢者としてすべての魔法が使えていたので、別の魔法も順次試してみる。


火魔法が発動出来てコツがつかめたので、他の魔法はそれほど苦労せず使えるようになった。

もっとも前世の基準ではまだまだ幼児レベルだが。


空間魔法:文庫本程度が魔空間ストレージに収納できた。

予知魔法:サイコロの目を予知できた。

探知魔法:周囲10mの動物の探知ができた。

回復魔法:ヒール魔法を発動し、虫刺され程度なら直せた。

強化魔法:ちょっと走るのが早くなり、ぶつかってもそれほど痛くなかった。

土魔法 :庭に直径20cm、深さ20cm位の穴をあけることができた。

水魔法 :水を盃1杯分ぐらい出せた。

攻撃魔法:火魔法でマッチの炎程度の火を2mほど飛ばせた。

従魔魔法:この世界には従魔がいないので発動は無理だ。


いずれも魔法を習い始めた児童レベルだが、複数の魔法が使えるというのは前世でも稀だったことを考えると幸先が良い。


時期はちょうど夏休みに入ったところだし、(両親の葬式のため学校を休んだが、そのまま1学期が終わってしまった)練習の時間はたっぷりある。


どうせ部活にも入っていないし、学校に行っても友人がいるわけでもないし、不良どもに金をむしり取られるだけなので、そのまま学校には顔は出さず(担任には電話連絡で状況は伝えた)魔法の練習を続けた。


”ピンポーン” 家の庭で魔法の練習をしていると、呼び鈴が鳴った。


誰だろう、訪問販売なら追い返そう、と思い玄関に行くと知らない女の子が玄関にいた。


「井本君、色々大変だったね。夏休みの宿題や連絡プリントを持ってきたよ」


「あ、あぁ」


えっと、誰だっけ?

賢者の時の記憶が勝っていて中学生の俺の記憶を押しのけていたので、彼女が誰だか思い出せなかった。

中学生の史郎の記憶を辿ってワンテンポ遅れて誰だか思い出せた。


そうだ、クラスメイトで学級委員長の金井容子さんだ。

学年トップクラスの成績で、超絶美人で、天から二物を与えられた女子である。


「えっえっと……あ、委員長? わ、わざわざありがとう」


とぎこちなく返す。


そうそう、思い出した。委員長の金井さんはクラスでも人気者の女子生徒であり、俺は非常に苦手としていた。

ボッチだった俺にとって雲の上の様な人なのに、孤立しがちな俺になぜか積極的に話しかけてきてくれる。


そのおかげで委員長に憧れている男子生徒はもちろん一部女子生徒やさらには不良の3人組に目を付けられ、無視されたり、虐められる要因の一つとなっていたのだが、彼女は気が付いていないっぽい。

正直迷惑だったが、良かれと思い接してくれているのだから文句も言えない。


彼女は、


「なによその久しぶりに会ったかのような言い方は!!」


といいだした。


まあ、魔法の練習の邪魔だ、とっととお帰り願おう。


「とにかくありがとう、じゃあ、僕は忙しいのでこれで」


「あ、ちょっと待ってよ……」


何か言いかけた委員長を無視して、玄関のドアを閉める。


さて、もう少し練習して勘を取り戻すか。


◇◇◇


夕暮れになり、お腹も空いてきたのでいったん練習はやめにする。

それにしてもステータス表示魔法具が無いのは不便だな。


前世では街の各所に魔法のステータスを表示する魔法具が備え付けられており、誰でも無料で魔法ステータスを確認できた。


大賢者である俺は個人的に所有しており、随時自分の魔法の能力や、魔力の残り具合が確認できた。


ステータスを見られないと、自分の魔法能力や魔力の残り具合が確認できない。


『魔法具はこの世界ではないだろうし、自分で作るのも大変だな、何とかならないかな?』


色々考えたが、井本史郎としての記憶からRPGゲームでの「ステータスオープン」コマンドを思い出した。

これ、できるんじゃないか?


「ステータスオープン!」


試しに探知魔法を自分にかけながら言葉を唱えてみると、


「おぉ! 見えた!」


名前:イモト シロウ(転生者)

性別:男

年齢:14


魔力:120/200


魔法:

 ・空間魔法:Lv1

 ・予知魔法:Lv1

 ・探知魔法:Lv1

 ・回復魔法:Lv1

 ・強化魔法:Lv1

 ・土魔法 :Lv1

 ・水魔法 :Lv1

 ・攻撃魔法:Lv1

 ・従魔魔法:Lv-


やはり長年(と言っても現代日本で数年だが)RPGで鍛えてステータスの概念が刷り込まれていたからか、簡単にステータス情報が目の前に浮かんできた。


向こうの世界じゃこんなこと思いつかなかったな。

ステータスを確認したが、生前と比べ、非常に低い。


従魔魔法だけはこの世界に魔獣が居ないので試すことはできなかったため”-”となって数字が出てきていない。


まあ、魔法力を上げる方法も熟知しているし、前世の知識も記憶もあるのですぐにレベルは上がるだろう。


夏休みの1ヵ月は魔法の猛練習でレベルを上げることに決めた。

この世界では魔素の濃度が高いので、使った魔力も直ぐ補充されるみたいだ。


先ほど魔力切れ寸前まで魔法を使ったのに、もう半分以上回復している。


お腹が空いたので、とりあえずありあわせの物で夕食を済ませ、自室に戻る。


告別式の後、記憶が戻ったりで、バタバタしていたので自室に戻るのは前世の記憶が戻ってから初めてだったが、そこには漫画とフィギュアとゲームがあふれていた。


そうだった。俺は根っからのオタクだった。

前世ではアニメとか漫画とか電子ゲームが無かったので、オタクという概念は無かったが、現世ではすっかりはまっていた。


だからまあクラスで孤立していじめの対象になったりしたんだがな。

特に異世界物の作品にハマっていたが、まさか自分が異世界人だったとは。


元々異世界人だからこそ異世界物にハマってしまい、さらに記憶が戻っても大してパニックにならなかったのかもしれない。


無意識のうちにPCを立ち上げ、最近はまっているゲームをプレイしたがいつものように集中できない。

ゲームの中で魔法を使うより、リアルに魔法を使うほうが楽しいからな。


明日からバリバリ練習しよう。

主人公は魔法が使えるようになりました。

前世では大賢者だったので、多くの魔法が使えるみたいですね。

励みになりますので、面白いと思った方、ブックマーク、ポイントをつけていただけると嬉しいです。

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