25.マフィアの最後
砂漠に飛ばされたマフィアがどのような末路をたどるかの記述になります。
本篇の内容にはあまり関わらないので、残酷シーンが嫌いな方は読み飛ばしても大丈夫です。
25.マフィアの最後
C国マフィア チャンの視点:
その日はいつものようにみかじめ料の取り立てについて事務所の一階で打ち合わせをしていた。
俺たちの支配下に置かれた風俗店や飲食店から生かさず殺さず、みかじめ料を如何に算定し取り立てるか、支払いを渋る店主にどのように制裁をするか。
毎回打ち合わせ内容は多岐にわたる。
そんな時、玄関からガキの叫ぶ声が聞こえてきた。
「こんにちは。僕の両親の井本拓也と智子が殺されたことについて聞きに来ました」
ん?井本拓也と智子? 数か月前事故に見せかけて始末したIT関連会社の社長夫婦だな?
そうこうするうちにガキが事務所に引きずりこまれてきた。
「さて、お前の親父の井本拓也? 知らねぇな。誰だそりゃ?」
「しらばっくれても無駄だぞ。俺の所に目撃者から連絡があって、親父とお袋は車に乗せられた状態で海にお前らに車ごとダイブさせられたって言ってたぞ。 アクセルを固定するのに氷を使ったってことも知っているんだからな。その人は裁判になったら証言しても良いって言ってくれているんだ」
ん、なんだと? 氷の塊でアクセルを固定したことまで知ってやがるのか?
その時ボスらが俺のほうを向いて怒鳴ってきた。
「おい、チャン! テメー誰かに見られてたのかよ!」
「ボス、周りに誰も居ないことは確認したんですが」
「馬鹿野郎! こいつは氷でアクセルと固定したことまで知ってるじゃぇえか。何やっていやがったんだ!」
「なんで親父を殺したのか言え、でないと警察に言うからな」
「お前馬鹿か? 生きてこの部屋らか出られるわけがないだろ。おい、チャン、すぐにこいつを始末しろ」
やれやれ、こんなガキの為に余計な仕事が増えそうだ。
俺たちはガキを縛り上げ、日が暮れた後に車のトランクに放り込んで、こいつの親を始末した波止場まで移動する。
洗面器に海水を入れてガキの顔を押し付け溺死させた後に海へ放り込む。
配下の風俗店店長を急遽呼びつけ、釣り客を装って自殺したと目撃証言を言うように命令しておく。
今まで何人も始末しているので、手慣れたものだ、特にガキの一人や二人始末するなんざ、朝飯前だわ。
作業を終えて事務所に戻ったとたん、いきなり感電したような痺れを全身に感じて意識を失った。
しばらくして体中を焼かれるような暑さを感じて目を覚ます。
最初に目に入ったのは雲一つない空と、日本と比較にならないほど凶悪な日差しな太陽だった。
起き上がって周囲を見回すと一面砂漠が広がっていた。
周りにはボスと他のメンバー全員転がったり、間を覚まして呆然と立ちすくんでいる。
全員下着姿で靴下すら履いてない。
ボスが怒鳴る。
「おい、テメーら、何がどうなってる」
誰もかれもが何が起こっているのか理解できず、誰も返事をしない。
既に全員が目を覚ましている。
あまりの暑さのため、汗が止まらない。
周囲を見渡しても日陰すらない。
全員何が起こったかわからずそれぞれ喚き散らしているが、事態は一向に改善しない。
暑さのため猛烈にのどが渇いてきた。
ふと足元を見ると1リットル入りのミネラルウォーターのペットボトルが落ちていた。
おぉ、水だ。俺はペットボトルを掴むと蓋を開け、ごくごく飲み始める。
それを見た他の奴らが『俺にも寄越せ』とばかりにつかみかかってくる。
俺は渡すまいとペットボトルを抱え込むが、多勢に無勢でペットボトルは誰かにもぎ取られる。
ペットボトルをもぎ取った奴も他の誰かに殴られてペットボトルを取り上げら、1本のベットボトルをめぐって大乱闘が巻き起こる。
やがてペットボトルは誰かが殴られた拍子に地面に落ち、運悪く岩の角に当たって真ん中から割けて大半の水はこぼれて地面にしみこんでしまった。
「てめー、何しやがる」
それを見た全員が激高してさらに乱闘が激しくなる。
「てめーら、やめろ」
ボスが叫んでようやく乱闘は終わったが、その頃には全員暑さと乱闘でのケガでボロボロになっていた。
実は史郎がペットボトルのミネラルウォータを1本だけ一緒に転送しておいたのだ。
ようやく全員が落ち着きを取り戻したので、なんとか今後の行動を話し合う。
結果、少しでも緑っぽい何かが見える方向に向かうということでまとまり、方向を決めてのろのろ歩き出した。
焼けつくような砂とゴロゴロ落ちている石で、足の裏がすぐに限界に達し、歩けなくなった。
仕方なくシャツを脱いで破り、足に巻き付ける。
これで幾分ましになった。
他の奴らもそれを見てマネする。
しかし、先ほどの乱闘と暑さで体力を著しく消耗しており、全員のろのろとしか進めなかった。
歩き始めて1時間ほどすると日がだいぶ傾いてきた。
やがて日が水平線まで傾くと暑さもだいぶ楽になってきた。
しかし、のどは焼け付くように乾いている。
その時誰かが叫んだ。
「スイカだ。スイカがあるぞ。」
全員が声をした方に行ってみると確かにスイカより一回り小さいが、見た目はスイカそっくりな実がいくつも転がっている。
だれもがのどの渇きを癒そうとスイカにかぶりつく。
ある者は拳でスイカを割り、ある者は大き目の石でスイカをたたき割り、中身を口にする。
俺もスイカを石で叩いて割り、中の果実を口に含む。
苦い。しかし水分はたっぷり含まれているようだ。
俺は苦さに顔を歪めながらも、果実を貪り食う。
おかげで何とかのどの渇きは癒えたが、強い苦みのため気持ちが悪くなった。
太陽は完全に沈み、代わりに満月近い月が出てきた。
とりあえず一休みしてから、夜のうちに移動しようということになった。
月の明かりで周囲は十分認識できるし、昼間の移動は自殺行為だしな。
俺たちはノロノロ歩き始めた。
歩き始めて2時間もしないうちに猛烈な腹痛に襲われた。
他の奴らも同じように腹を押さえてうずくまっている。
やがて下痢に襲われ、腹痛も激しくなりのたうち回る。
さらに夜が更けるにつれ気温がぐんぐん下がってきた。
下着しかつけていない、しかもシャツは破いて靴代わりにしてしまったので上半身は裸の俺たちは凍えることになる。
更に下痢と腹痛は激しくなる。
夕暮れ時に彼らが見つけて貪り食ったスイカは実は毒性が強いコロシントウリという毒スイカだったのである。
スイカの毒による激しい下痢と腹痛と、夜の砂漠の氷点下近い寒さで、歩くどころか明け方には全員動けなくなっていた。
そして夜が明け太陽が顔を出し、灼熱の昼間が始まった。
俺はもうろうとした意識の中、最後の日の出を見た後俺は意識を失った。
大賢者の前世では、死刑は禁止されていましたが、死刑の代わりに絶対に助からない場所へ転移魔法で飛ばされる刑が最高刑だったようです。
主人公はこの地球でもそれを実施したんですね。




