表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/173

22.大賢者、海外旅行に行く

この章では、主人公は強盗犯人に遭遇し制裁を加えます。

翌日、俺はヨーロッパに向け出発した。


ピッピをどうしようかと思ったが、事前に準備しておいた魔布で包んでストレージに入れて連れていくことにした。

魔法布は絹布に魔力を注入して作る。

これは魔素を含む多くの影響をシャットダウンできるものだ。


前世では魔法攻撃を少しでも防ぐため、兵士の鎧の内側に貼り付けるなどしていた。


もう一つの使い方として、ストレージに生き物を入れる時に利用される。

通常そのままではストレージに生物は入れることはできないのだが、魔法布で包むと入れられるのだ。


ストレージ内では時間は進まないので、ピッピにとっては移動は一瞬の出来事なのでストレスは無いだろう。


この日は早朝から東京経由で成田空港に移動。

荷物は小さめのキャリーバック一つなので楽くだ。

その後成田空港から直行便でイギリスのロンドンに向け移動。


ロンドン到着は出発時間から換算すると24時間も掛かった。

今回の目的は探知魔法で他に魔力を有している人や動物が居ないか確認することだ。

ずっとこの世界で魔法を使える人は俺だけ、というボッチな状態は出来れば回避したい。

仲間が見つかるといいなぁ。


移動中も探知魔法で周囲の人を探知し続ける。

少なくとも日本国内では成田空港も含め、探知に引っ掛かりは無かった。


ロンドン到着後も絶えず探知魔法を働かせながら移動する。

予約してあったホテルにチェックインして一休み。


ピッピをストレージから出して、ピッピにも空から探知してもらうようにする。

ロンドン市街や繁華街はもちろん、大英博物館とか、バッキンガム宮殿とか、観光名所も一通り回りながら探知をかける。


しかし見つからない。

一日歩き回り疲れてホテルに戻る。


夜中にホテルを抜け出して近くにあるハイド・パークの公園に忍び込む。

ここは多くが芝生に覆われた公園だが、いつでもロンドンに来れる様に転移魔法陣を残しておこうと思う。


土魔法で直径3mの円形に芝生をはがし、その下に魔法陣を描く。

その後芝生を元に戻しておく。

よく見れば円形に筋が見えるが、ちょっと見た目は完全に元通りになったな。


その後はホテルに戻り、ぐっする眠ることにした。

明日はフランスに向けて移動だ。


翌朝、ホテルをチェックアウトして、電車で英仏海峡トンネルを通ってフランスへ移動。


パリに着いてからここでもピッピと手分けして探知してみる。

凱旋門、エッフェル塔周辺、ルーブル美術館をはじめとする各種美術館。


人が多そうな所を中心に巡るが探知魔法には何も引っ掛からなかった。

ピッピも頑張ってパリの周囲20kmの範囲を飛んでくれたが、こちらも収穫無し。


うーん、やっぱりこの世界には魔法を使える人は居ないのか?


2日パリに滞在しても成果は無かったが、一応ここでも転移魔法陣を設置しておこう。

パリの中心にほど近い、バガテル公園内の片隅に深夜の時間帯に忍び込んで、転移魔法陣を残していく。


ロンドンに2日間、パリに2日間で延べ数十万人は探知対象としたと思うが、魔力を有する人は見つけられなかった。


魔女狩りの歴史的事実からすると、魔力を持つ人は中世の時代には居た可能性はあるのだが、現在では居ないのか? それともこの世界には最初から居ないのか?


がっかりした気分になりながらも次の目的地に向かうことにした。


シャルル・ド・ゴール空港からアルジェリアのオウド・イララ・クリム・バルケッサム空港に向かう飛行機に搭乗する。


アルジェリアはサハラ砂漠を有する国の一つで、今回の訪問は観光でも探知でもなく、サハラ砂漠のど真ん中に転移魔法陣を作っておくことだった。


なぜそんな所に転移魔法陣を? と思うかもしれないが、転移魔法陣は移動先の魔法陣の中に人がいる場合は移動できないのである。


緊急時に移動しようとした時に転移できない可能性もあり、それなら絶対に人が居ない場所に転移魔法陣を設置しておきたかったのと、何らかの危険物を転移する可能性も考慮して、転移後に被害が出ない場所が欲しかったからである。


まあ他にも大きな理由はあったのだが、その理由で転移魔法陣を使うような事態はなるべく避けるつもりだ。


◇◇◇

飛行機はアルジェリアのオウド・イララ・クリム・バルケッサム空港に到着。

ここは、サハラ砂漠の中の空港であり、空港周辺の小都市ハッシメサウド以外に何もない。


いや、所々に油田があるな。

とりあえず、空港近くの砂漠に移動して転移魔法陣を設置しておく。

人口が少なく、ちょっと歩いただけで誰も居なくなるので魔方陣は設置しやすいが、いかんせん暑い。


予約しておいたホテルにチェックインして、この日は一休みする。

翌日、事前にチャーターしておいたヘリコプターに乗るためにハッシメサウドの街中へ向かう。


チャーターヘリを運行する会社の事務所から車で空港まで移動し、ヘリに搭乗。

あらかじめ、周囲100kmに道路や集落や油田が無い地点を地図上で確認しておき、そこまで移動するように依頼する。


空港から200km程の目的の地点まで1時間半ほどで移動。


平らなところに着陸してもらい、パイロットに「すぐ戻る」と言い残し、ヘリから少し離れた場所まで移動しようとした。


ヘリ歩いて20mほど離れた所でパーンという音と共に右の背中に衝撃を受け前方に吹き飛んだ。

同時に焼き付くような痛みを背中と肺に感じ、血の塊を吐き出した。


ぼやけ始めた目でヘリの方を見ると、拳銃を構えたパイロットが見える。

どうやら後ろから拳銃で撃たれたらしい。


強化魔法は掛けていたが、危険もないと判断していてごく弱く掛けていただけだったのが災いした。

銃弾は背中から肺を貫通して肋骨を1本破壊して貫通したようだ。


パイロットはこちらに歩いてくると、俺のズボンのポケットから財布を奪い、とどめを刺すために俺に向かってさらに2発撃ってきた。

パイロットは俺の心臓を正確に狙ってきていた。


すかさず強化魔法を最大にかけたため、銃弾は皮膚にめり込んだだけで食い止めることができたが、さらに出血が激しくなった。


パイロットは俺がもう助かりそうにないことを確認すると俺のバックパックを掴んでヘリに乗り込んで飛び去って行った。

残された俺は灼熱の砂漠の中、もうろうとした意識の中必死でヒール魔法を自分に掛ける。


後から打たれた2発の傷は回復魔法ですぐにふさがったが、肺を貫いた最初の一発の傷は致命的であり、ヒール魔法だけでは治りそうになかった。


意識がもうろうとする中、ストレージにしまっておいたハイポーションを取り出して、何とかそれを飲み込む。

ハイポーションといえども直ぐに効果が出るわけではない。

しかしここで意識を失うと暑さにやられてしまう。


ぼやける目で周囲を見回すも、日陰など見当たらない。


俺はストレージからビーチパラソルとそれを固定可能なビーチチェアを取り出し、力を振り絞って設置する。

日陰になったビーチチェアに倒れこむように座ったところで意識を失った。


1時間後、俺はようやく意識を取り戻した。

ハイポーションの効果が出て、肺の損傷も背中と胸の傷も概ねふさがった。

粉砕された肋骨も修復できたみたいだ。


ストレージからミネラルウォーターを取り出して、失われた水分を補給。

さらに1時間休んだ後にようやく体力が回復できた。


それにしてもハイポーションを準備しておいて良かった。

回復魔法だけでは意識を失う前に傷を治すのは不可能だっただろう。


心臓を撃ち抜かれていたらハイポーションを飲む間もなく助からなかった可能性が高いな。


まだ少しふらつくが元気が出てきた俺は砂漠の一部を直径5mの円形に掘り下げ、土魔法でガラス化、その上に転移魔法陣を描き、上に砂を乗せて分からないようにする。


もうここには用は無い。俺は出来たばかりの魔法陣を使い、ハッシメサウドの空港近くに描いた転移魔法陣まで戻る。


あのパイロットは許さない。前世での最高裁判所判事の立場になって、犯罪者は罰を受けさせてやる。

ヘリコプターは料金は現金で前払いだったし、俺が戻らなくても『目的地に送り届けた』と言えば周囲は納得しただろう。


俺はストレージからピッピに出てきてもらい、周囲を探索してもらう。

俺がチャーターしたヘリはすでに空港に戻っており、俺を撃ったパイロットが燃料補給をしているのがピッピを通して見えた。


俺は強化魔法で走って空港まで行き、パイロットの後ろに忍び寄る。


俺は奴の後ろから攻撃魔法のウインドウボムを使い、空気の塊を奴の背中に浴びせる。

奴は吹き飛ばされて瞬時に気を失う。


ヘリの中を確認すると、俺の財布と荷物が見つかった。

さて、荷物は取り戻せたし、パイロットをどう処罰するかな。


この状態で『パイロットに撃たれた』とこちらの警察に訴えても俺のケガは完治しているし、信じてもらえないだろう。


放置しておくと第二第三の犠牲者も出るかもしれない。

俺はパイロットの額に手を当てて、こいつの記憶を探る。

こいつは過去にも複数人の顧客を砂漠で始末して金やカードを奪っていたことが分かった。

犠牲者は5人にも及んでいた。


有罪だ。


俺は周囲に誰もいないことを確認すると、魔布を取り出すとパイロットをそれで包み、ストレージへ収納する。


そのまま、転移魔法陣まで戻り、ストレージからパイロットを取り出し、魔法陣の上に横たえる。


奴はまだ気絶したままだったので、ポケットの物を全部取り出してから、奴を先ほど設置したばかりの砂漠内の転移魔法陣へ転送しておく。


そう、砂漠内の魔法陣のもう一つの使い方は今回の様な犯罪者をこのように捨てるためだったわけだ。

前世では死刑は禁止されていた。

代わりに、絶対に生きて帰ってこれないであろう場所に転移させて事実上の死刑とするのが、最高刑だった。

今回もそれに従うことにする。


しかしまさか設置してすぐにその目的で使うとは思ってもいなかった。


周囲100Kmには集落も道路もない場所に、水も食料も無しに放り出されて生きて戻れるとは思えない。


上空をヘリが飛んできて発見されるか、ラクダを連れたキャラバン等に遭遇する可能性もあるが、望み薄だろうな。


しかし、問答無用で俺を銃撃し、とどめまで刺してきた奴に同情はしない。

さて、もうここには用は無いので、次のフライトで帰るとしよう。


◇◇◇

パイロット視点:


今日の客は日本人のガキ一人だ。

なんでか分からないが、奴のフライト先は何もない砂漠のど真ん中だ。

これはチャンスだな。

外人のガキが砂漠で行方不明になっても特に大事にはならないだろう。


金は持っていそうだし、日本人のクレジットカードはパスポートと一緒だと高く売れる。


俺は愛用の拳銃を機内に持ち込み、言われた通りの場所まで輸送する。

到着後、ガキがヘリから少し離れた所で背中を撃ち抜く。


心臓を狙ったのだがちょっとズレて右の肺を撃ち抜く形になった。

これだけでも致命傷で助からないだろうが、近づいてさらに心臓に2発打ち込んでとどめを刺す。


それでもまだ息をしていたが、もう助からないだろう。

俺は財布とバックを奪うとすぐにヘリでその場を離れる。

簡単なお仕事だったな。


その後空港に到着し、ヘリに燃料を補給していたところ、背中に衝撃を受けて意識がなくなった。


次に意識が戻った時は砂漠のど真ん中だった。

俺は反射的に携帯電話を探すが、ポケットの中には携帯どころかハンカチ一枚もない。


周囲を見回すが見渡す限り何もない。

ここがどこなのかも見覚えも無い。 いやまて、少し先にヘリが着陸した後らしきものが見える。


近寄ると、足元に空の薬きょうが落ちているのが見えた。

ありえねぇ。ここはさっきガキを殺した場所だ。


何が起きたんだ。パニックになったがなんとか落ち着き、先ほどのフライトを思い出す。

ここから一番近い集落か道路がどちらの方向か考えるが、絶望的な気分になる。

一番近い道路まで100Km以上あるはずだ。


今は昼の12時でこれから一番暑くなる時間帯だ。辺りを見回しても砂漠以外何もない。

砂漠では足が取られるので頑張って歩いても時速2kmがせいぜいだ。

水も食料も無い状態で100Km先までたどり着けるとは思えない。


俺が居なくなったと知ったら会社の人間が俺のフライトプランからこの場所を割り出して誰か捜索に来てくれるのでは?


いや無理だ。ガキを殺すつもりで、提出したフライトプランにはでたらめを書いてある。

そもそも、空港には俺のヘリがあるんだから、俺がここに居るとは誰も思わないだろう。

ここにいても誰も助けに来ない。


とりあえず一番近い道路の方向に向かって移動しよう。


のろのろ動き出したが、身体から急激に水分が失われ、2時間も歩いたところで歩けなくなった。

意識が急激にもうろうとしてきた。


どこか日陰で休みたいが、周囲180度砂漠ばかりで日陰などどこにもない。

これはあのガキの呪いなのか?


それでも何とか歩き続けたところ、オアシスが見えてきた。

緑の木々が見える。

もう少しだ、力を振り絞りオアシスにたどり着く。

しかしそこにたどり着いて周囲を見渡してもやはり砂漠以外何もない。幻だったのか。


俺はそこで意識を失った。

主人公はついに強盗犯に襲われ、これを撃退します。

サハラ砂漠の転移魔法陣はこれからもちょくちょく使われる予定です。

励みになりますので、面白いと思った方、ブックマーク、ポイントをつけていただけると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ