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21.大賢者、クリスマスを楽しむ

株取引のおかげで高校の入学金や当面の生活費には問題が無くなった。

余裕が出たので以前から考えていたヨーロッパ旅行を計画することにした。


以前から探知魔法で魔力を持つ人や動物が居ないか探知していたが、東京まで遠征したにもかかわらず、魔法を使える人は探し出せなかった。


この世界に魔法を使える人は居ないかもしれない。

しかし、中世ヨーロッパでの魔女狩りの歴史を調べてみると、過去に魔法を使える人がいた可能性は高い。


今でもポルターガイストなどをたまに耳にするが、これも魔法と考えると理解できる。


ということは、魔女狩りの本場?のヨーロッパに行けば魔法を使える人を探し出せるかもしれない。

そう思った俺は冬休みにヨーロッパ旅行をしようとネットで航空チケットやホテルを予約しておいた。


イギリス→フランスと移動する予定。

さらに別の目的がありサハラ砂漠にも寄ろうと考えている。


冬休みは12月24日からだから25日には日本を立つ計画だ。

12月も下旬になり、期末テストも終わった22日、帰ろうと支度していた時に恵さんが近づいてきた。


「井本君は24日は何か用事ある?」


「24日?旅行の準備があるけど特に用事は無いかな」


そう、海外に行く場合は色々準備は必要なんだろうが、俺には空間魔法のストレージ機能があるので、必要と思われるものは全部ストレージに突っ込んでおけばいいし、何より空間魔法がLv4になっているので地球上とこからでも魔法陣さえ描けば自宅に戻ってこれるので大して準備することは無い。


「あ、あの、その日にケーキを作ろうと思うの、お邪魔じゃなければケーキを持って行ってもいいかしら? プレゼントも渡したいし」


ん? ケーキ? プレゼント? 何のことだ?

この世界での記憶を探ってみたら、クリスマスってイベントがあることを思い出した。


「えっと、用事も無いし良いよ。うちまで来る?」


確かこの国では12月24日や25日に友人や恋人同士が集まってパーティーしたりプレゼント交換するんだったな。


いかん、ケーキもプレゼントも持ってくるんだから俺もプレゼントやごちそうを準備しなくては。


「えっ? いいの? じゃあお昼過ぎに井本君の家まで行くね」


「おっおう。じゃぁ一応食べ物も準備しておくね。クリスマスパーティーしようか?」


恵さんは嬉しそうに照れた微笑みを浮かべた。


「ありがとう。楽しみにしてるね」


そういって彼女はパタパタと自分の席に戻っていった。


うーん、記憶が戻る前の俺だと、同い年の女子とイベントを楽しむなんて、ドキドキするシチュエーションなんだろうけど、前世の100歳の記憶を持っている俺からするとひ孫ほどの年齢差なんだよなぁ……。


まあせっかく好感を持ってくれているんだから仲良くしておこう。


そう思っていたら視線を感じてそちらを見ると委員長の金井さんがジト目でこちらをにらんでいた。


うーん、なんで睨まれているんだろ? なんか俺って悪いことしたのか?


そうこうするうちに終業式の日の23日になった。

改めて明日の予定を恵さんに聞かれ、13時に俺の家に来ることを確認した。


その時に、さりげなく恵さんの額に手を近づけ探知魔法を使って、彼女がプレゼントで欲しいと思っている物をサーチした。

さらに好きな食べ物もサーチしておいた。

探知魔法のLvも上がってきているので、額に触れなくてもある程度の情報を得ることができるようになっていた。


終業式は午前中で終わったので、電車でデパートのある街まで行き、彼女が欲しいと思っていた某キャラクターブランドの猫のキャラクターのお財布を購入した。


結構いい値段がしたが、彼女が喜ぶなら問題ない。


俺はまだこの世界の常識に疎いので、ネットでクリスマスプレゼントについて調べてみると、クリスマスカードも一緒に渡したほうが良いと分かったので、カードも購入する。


その後、パーティーのためにデパートの地階で彼女の好みの食べ物を選ぶ。


こちらもネットでクリスマスパーティーの定番の食べ物を調べておき、それと彼女の好みの物と一致する物を選んで購入する。


おっと、クリスマスカードにもメッセージを書かないとね。


こちらの世界の15歳の女の子にどのようなメッセージを書けばいいのかさっぱり分からなかったので、これもネットで検索して良さそうな定型文をそのままパクって書いておいた。


よし、準備万端。


翌24日、午前中は明日からの海外旅行の準備をする。

といっても、着替えとか色々必要なものをストレージにポイポイ放り込むだけだけどね。


手ぶらで飛行機に乗るのも変な目で見られそうな気がするので、父親のスーツケースの中で比較的小さいのを持っていくことにした。


あっという間に旅行の準備は終わったので、クリスマスパーティーの準備をする。

まあ、テーブルに昨日買って冷蔵庫に入れておいた食べ物を並べただけだけどね。


おっと、飲み物も適当に準備しなくちゃ。近所のコンビニでジュースとかお茶のペットボトルをいくつか買って置いておく。


そうこうするうちに13時になり、恵さんが父親の運転する車で家に来た。

彼女の父親がケーキらしい箱を玄関まで持ってきてあいさつする。


「こんにちは。この間は色々ありがとう。今日は娘をよろしくお願いする」


「いえ、こちらこそ手作りのケーキが楽しみで感謝してます」


恵さんもプレゼントらしい包を抱えて恥ずかしそうに玄関に入ってきた。


「夕方迎えに来る」


と言って父親は帰っていった。


恵さんを家に招き入れダイニングテーブルに案内する。


「いちおうパーティーっぽい食べ物準備しておいたよ、一緒に食べよう」


恵さんは辺りをきょろきょろ見回して、


「すごくきれいにしているのね。一人暮らしって聞いていたのでもっと散らかっているかと思った」


それもそのはず、空間魔法の一部にクリーン魔法があり、それを毎日かけていた。汚れとか埃とかは一瞬で取り除いてしまうのだ。

これは転移魔法の一部であるが、ゴミたちがどこへ転移するのかは前世では謎とされていた。


恵さんの手作りのケーキもテーブルに置き、プレゼントを手渡された。

俺も準備しておいたプレゼントを恵さんに渡す。


恵さんからもらったプレゼントを空けてみると手編みのマフラーが出てきた。

おぉ、これは嬉しい。明日から行くヨーロッパはかなり気温が低そうだからな。


身体強化魔法があれは寒いのは特に問題ないが、マフラーがあれば暖かいよね。


恵さんもわくわくした表情でプレゼントを開けた。


中身が恵さんの欲しがっていた財布だったので一瞬びっくりした顔になった後、こぼれる様な笑顔になった。


「井本君、嬉しい。これ欲しかったんだ」


うん、知ってた。


「僕も嬉しいよ。明日から旅行に行くのでマフラーはありがたい」


「えっ?旅行に行っちゃうの? どこに? いつ帰ってくるの?」


「あ、うん。イギリスとフランスとドイツとアルジェリアに行ってくる。帰ってくるのは冬休みの最終日」


恵さんはがっかりした顔をした。


「そう、お正月も会いたかったな」


「ごめんごめん、お土産買ってくるから」


その後、恵さんはクリスマスカードを開いて見て顔を真っ赤にして照れていた。


ん? なんか顔を真っ赤にすることなんてメッセージに書いたかな?


ネット検索して出てきた定型文をそのまま書いただけなんだが……。


『これからもずっとずっとよろしく』的な内容が響いちゃったかな?


前世でもあまり女性関係は疎かったし、この世界の15歳の少女の心理なんてわからん。


その時窓ガラスをコツコツとする音がした。

見てみるとピッピが仲間に入れてもらいたいらしく窓ガラスをつついていた。


俺は窓を開けてピッピを家に入れてあげる。


ピッピは大喜びで室内に入ってきて俺の肩にとまった。


「えっ? なに? スズメ?」


「うん、俺の……友達のピッピっていうんだ。雛の時に死にかけているのを助けたらなついちゃってね」


「そうなんだ。可愛いね。ピッピよろしくね」


ピッピは恵さんを見上げて『チュン』と返事をした。


俺が準備した食事も恵さんには好評でその日は夕方までビデオを見たりゲームしたり、ピッピと戯れたりして楽しく過ごせたと思う。


和やかな雰囲気のまま、17時に父親が迎えに来てパーティーはお開きに。

うーん、なんかこんな平和な生活って良いなぁ。

俺は魔獣や他国との戦いに明け暮れていた前世と、この平和な世界を比べていた。


どう考えてもこっちの世界の方が良いよな。


◇◇◇

鈴木恵視点:


私は井本君ともっと仲良くなりたいんだけど、なんか井本君はつれないんだよなぁ……。


こちらから話しかけると笑顔で返してくれるんだけど、向こうからあまり話しかけてくれない。

休み時間も一人で遠くを見ている感じでぼーっとしているし。

昼休みに一緒にご飯を食べているのも、私から誘ってるし。


よし、クリスマスイブは絶対一緒に過ごすぞ。

意を決して終業式の前日に彼に声をかけた。


「井本君は24日は何か用事ある?」


「24日?旅行の準備があるけど特に用事は無いな」


「あ、あの、その日にケーキを作ろうと思うの、お邪魔じゃなければケーキを持って行ってもいいかしら? プレゼントも渡したいし」


井本君は少し怪訝な顔をしたあと


「えっと、用事も無いしいいよ。うちまで来る?」


と言ってくれた。

私は内心飛び上がらんばかりに喜んで。


「えっ?いいの? じゃあお昼過ぎに井本君の家まで行くね」


と返す。


「おっおう。じゃぁ一応食べ物も準備しておくね。クリスマスパーティーしようか?」


「ありがとう。楽しみにしてるね」


私はもううきうきしてどんなケーキを作ろうか色々考えを巡らせた。


そして24日の朝。

前日夜から準備していたケーキを仕上げるために、早朝から台所で大騒ぎ。

生クリームをケーキの土台に綺麗に盛り付け、飾りとなるイチゴやフルーツやチョコを盛り付ける。


台所の片付けが間に合わないため、散らかったままケーキを箱に詰めてお父さんに井本君の家まで車で送ってもらう。お母さん片付けお願い。


井本君の家の中はピカピカだった。

えっ? 井本君一人暮らしだよね? なんでこんなに家の中綺麗なの? 私より女子力高い?


ちょっと戸惑ったが、私の作ったケーキもプレゼントも女子力高いわよ! と思い返し、ケーキを見せて、プレゼント交換も済ませる。


井本君からもらったプレゼントを見て驚いた。

前々から欲しいなって思っていた猫のキャラクターグッズの財布だった。

えっなんで? 子供っぽいなって思たので、親友にも誰にも言っていなかったのに、偶然? でも嬉しい。


そしてクリスマスカードを読んで感動してしまった。


「楽しいクリスマスを、そしていつも仲良くしてくれて、本当にありがとう!これからもずっと一緒にクリスマスをお祝いしようね。Merry Christmas」


これからもずっと一緒!? これってお付き合いしましょって意味だよね?

なんか顔が真っ赤になって照れてしまった。

そして私が渡したマフラーも井本君は喜んでくれた。


なんかヨーロッパに旅行に行くみたいで、現地は寒いのでこれをしていくって嬉しそうに言ってくれて、ますます照れてしまった。


その後、ケーキを食べつつ、井本君が準備してくれたオードブルを食べたんだけど、私の好みの物ばかりで感動してしまった。

さらに、ピッピって名前のスズメが窓から入ってきて井本君の肩や指にとまったりして可愛かった。

その後もゲームしたりお話ししたりで、なんか人生で一番楽しい時間じゃないかと思った。


でもその後、井本君の志望校を聞いて愕然としてしまった。

以前も富士フリーダム高校に行くって言ってたけど、てっきり冗談かと思っていた。

井本君は学年トップなので、実際はかなり上の学校を狙うかと思ったが、もし私が背伸びして届く学校だったら絶対頑張って一緒の学校へ行くって思っていたのだけど、単位制の高校?


その高校なら私でも、誰でも入れると思うけど、両親が絶対賛成してくれない。

私も井本君と同じ高校に行きたいけど、その学校は不良も多いみたいだし、ちょっと行きたくはない。

楽しい時間を過ごしたのだが、最後に谷底に落とされちゃった感じ。

私はどうすればいいの?

異世界からの転生者の大賢者。ちゃっかりクリスマスを楽しんでますね。

恵さんとはこれからどうなっていくっでしょうか?

励みになりますので、面白いと思った方、ブックマーク、ポイントをつけていただけると嬉しいです

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