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20.大賢者、ポーションを作る

11月も下旬に入ったある日、俺はポーションを作ろうと思い立った。


回復魔法で少しぐらいのケガなら治せるのだが、瀕死の重傷を負った場合はとても追いつかない。

ましてや自分自身が瀕死の重傷を負った場合には回復魔法を掛けることすら困難な場合もある。


前世での上位ポーションである、ハイポーションは準備しておきたい。

ハイポーションなら、魔法を使わなくても瀕死の重傷でも一口飲めば、直してしまう。


前世でのハイポーションの作成手順は覚えているが、いかんせん材料が無い。

しかし、この世界の薬を色々調べてみた所、漢方薬の材料が使えそうだと分かってきた。


漢方薬ならそのままでは使えないが、適切な材料に魔力を注入して変質化させれば十分な材料になりそうだ。


化学合成されたアスピリン等の薬品でもうまく魔力注入をすれば使えそうだ。


品質の安定している世界の漢方薬の材料なら前世のポーションより高品質な物が作れる可能性も高い。


前世のポーション材料は品質にバラつきが多く、不純物も多々混じっていたから、失敗も多く、成功しても品質にばらつきがあった。


早速市販の漢方薬を買い集め、色々調べる。


そうしたところ葛根湯という薬に魔力を注入するとハイポーションに使えそうだと分かった。


しかし、そのままだと効果がまだ弱いので、他に2,3の漢方薬に魔力を注入した物を混ぜると効果が飛躍的に大きくなることも分かった。


効果を調べるために自分の腕をナイフで傷つけて、お試しポーションを塗ってみたり、飲んでみたりを何度も繰り返す。

さすがにポーションを飲みすぎてうんざりしてきた。


概ね完成だと感じたし、俺自身で飲んでも問題はないことは確認できたが、効果を完全に確かめるために自分で大怪我をしなくてはならないか? それは嫌だな。


どうしようか考えていたところ、近所の中村おばあさんの存在を思い出した。

俺が小さいころ、よくそのおばさんの所に遊びに行った記憶があり、いつもお菓子を出してくれた優しいおばあさんだった。


しかし、最近転んでしまって車いす生活になったと聞いている。


更には緑内障も患ってしまい、失明寸前とのこと。

うん、なんか人体実験みたいでちょっと後ろめたいけど、元々市販の漢方薬を混ぜたものだし、身体に悪さはしないだろう。


それに効果は必ずあると確信しているし、おばあさんには元気になってもらいたい。


昼間は一人で家の縁側にいるって知っていたので、ポーションを持って翌日早速家を訪ねてみる。


お天気も良かったので、おばあさんは縁側で車椅子に座ってうつらうつらしていた。


「中村のおばあちゃん、こんにちは。近所の井本です」


おばあちゃんは目を覚まして返事をする。


「おや、史郎君かい? 久しぶりだねぇ。もうおばあちゃんは目が見えなくなっちゃって姿は見えないけど、大きくなったんだろうねぇ」


「うん、もうすぐ高校に入るんだよ。今日はね、健康に良い飲み物を持ってきたんで是非試してみてよ」


「おやそうかい、ありがたいねぇ」


俺が手渡した小瓶を手にして早速口にしてくれた。


「ちょっと漢方が入っているので、薬っぽいけど、効果は保証するからね」


「あら、葛根湯みたいな感じだけど、ちょっと変わった味だね。効果がありそうだね。ありがとうね」


それからしばらくお互いの近況などを話してから俺は家に帰った。

翌日は月曜日だったので学校に向かうべく家を出た。


途中で中村のおばあちゃんちの前通ったらおばあちゃんが庭に出て歩き回っていた。


俺の姿を見て小走りに近づいてきた。(もう走れるのか?)


「史郎君、昨日の健康飲料って何物だい? あれから1時間もしないうちに目は見えるようになるわ、骨折で立てなかったのに歩き回れるようになるわ、元気いっぱいになるわ、すごい薬だね」


「えっ、昨日の健康飲料はそんな大したもんじゃないし、きっと元々治りかかってたんじゃ?」


「そんなことあるかい。 医者からは一生目は見えないし、歩くこともできないって言われてたんだよ」


「えっえっと、僕学校があるんでもう失礼しますね。 あと昨日の飲料のことは人に言わないでね。きっとその飲料の効果ではないと思うし、もう持ってないし」


「うんうん、秘密ってことだね。分かったよ。誰にも言わないよ。でも本当にありがとうね」


おばあさんは何度も頭を下げて感謝の言葉を言ってきた。

俺は小走りにその場を離れて学校に向かった。


ヤベーヤベー、まさかこんなに効果があるなんて思わなかった。

前世のハイポーションだったら、せいぜい立ち上がることができる、ぼんやり見えるようになる、ちょっと元気が出る、程度の効果のはず。


それが走ることができるわ、視力は完全に回復しているわ、俺が子供のころの記憶のおばあちゃんより全然元気になっているじゃん。


この世界の漢方薬の品質が高いので、ポーションも効果が高いのか?

それとも魔法がこの世界の人には劇的な効果を与えるのか?


とにかく、作ったポーションはむやみにこの世界の人に渡さないように気を付けよう。


とりあえず効果があることが分かったので、瓶に小分けしていざという時のためにストレージに保存して置くことにした。

でも大好きなおばあちゃんが元気になって良かったな。


その後、おばあちゃんの家は大騒ぎとなった。


そりゃそうだ、前日まで目は見えないわ、立ち上がれないわ、体力も衰えて元気もないわ、だった老婆が元気いっぱい歩き回る、というか走り回るし、果てには近所のスーパーまで一人で買い物に出かける始末。


家の人は大慌てでおばあさんを病院へ連れて行った。

診察した主治医はおばあさんの症状を見て仰天した。


元々骨折した部分は概ね治っていたが、足腰が弱って歩くことはもちろん立ち上がることも困難だったはず。


それでも足腰は完治する可能性はゼロではないのでまだ良い。

しかし進行した緑内障が治るなんて前代未聞。


医者は精密検査を実施したが、緑内障は完全に完治しており、後日大学病院の権威ある医者まで巻き込んだ騒動になったらしい。


おばあちゃんは俺との約束を覚えていて、「何もしてないけどある日突然治った。」としていっていたと後日教えてもらった。

主人公はついにポーションを作りましたね。

ポーションは地球人にも効果はあるようです。

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