17.大賢者、強欲叔父さんを撃退する
秋の兆しがみられる頃、両親の四十九日の法要が執り行われることになった。
法要の前に父親の書斎をさらに整理していたところ、机の引き出しの書類入れから借用書が出て来た。
貸した側は父親となっており、借りた側が父親の弟となる叔父の高澤 直宏となっていた。
金額は2000万円と巨額だった。
あれ?この叔父さんは両親の告別式の後、税理士と名乗る人物と共にやってきて、親父に金を貸しているからと言って2000万円の借用書を見せて親父の預金のほとんどを持って行った奴だよな?
当時はまだ前世の記憶も戻ってなく両親の死で途方に暮れていた時だった。
なんかおかしいぞ、この借用書によると父親が金を借りていたんではなく、金を貸していた側になるはず。
葬式の後叔父に見せられた借用書と日付と金額は同じだが名前が入れ替わっている。
絶対おかしい。
そんな疑問はあったが、とりあえず四十九日の法要はつつがなく執り行われた。
叔父も来ていたので、叔父が帰ろうとする前に捕まえて借用書のコピーを見せて問いただしてみた。
「親父の机からこの借用書が見つかったんだけど、なにかおかしくないですか?」
叔父は馬鹿にしたような顔をして、
「はっ?なんだそれ? お前がパソコンでも使って作った偽物だろ?」
俺は黙って叔父さんの額に手を当てて、探知魔法を使い叔父を記憶を探知する。
結果は叔父がうそを言っていることは分かった。
「気持ち悪いな、なに人の頭を触っているんだよ」
叔父が俺の手を払いのけたが、必要な情報は手に入れた。
前世ではこの魔法を使える人は少ないながらも存在し、向こうの世界での裁判の判断として使われていた。探知魔法での相手の記憶を探知できる魔法は『真実の目』と呼ばれ、使える人は一生安泰だと言われているほど重宝される能力だった。
『真実の目』は間違うことはないため、裁判の時の有力な証拠とされた。
というより、『真実の目』の判断が裁判のすべてと言ってよかった。
証拠を集める必要もなく、被告人が真実を言っているかどうかが確実に分かるため、犯罪者が無実になったり冤罪が発生することも無かった。
その点では前世の方が21世紀の地球より優れていたな。
当然、大賢者でもあり、最高裁判所の判事でもあった前世の俺はこの能力は有していた。
さて、叔父が詐欺を働いたことは俺にとっては明白になった訳だが、この世界で『俺の魔法能力によると詐欺は明白だ』と訴えても誰も相手にしてくれないだろう。
しかし父親が残してくれた遺産をだまして取って行った叔父は許せなかった。
なにより現時点で生活費がやばくなってきていたのでお金は取り返したい。
高校の入学金や授業料もかなりかかる。
俺は父親の全資産を相続した形になっており、無駄に大きい家屋と土地だけでも莫大な相続税が発生している。
先日支払われた不良三人組からの慰謝料では全然間に合わなかった。
とは言っても祖母にお金を出してもらうのも申し訳ないのでここは叔父から取り返すことにした。
魔法を使って叔父をボコボコにしてもお金を取り返すことも難しそうなので、結局高橋弁護士に相談することにした。
そういえば、借金を返済した時に、叔父は「これで貸し借りは無しだな」といって借用書をびりびりに破いてゴミ箱に捨てていたな?
その時は親父の書斎で話していたし書斎の掃除なんかその後ずっとしていなかったのでまだゴミ箱に借用書が残っているのでは?
ゴミ箱を探すとびりびりに破られた借用書が出て来た。
よし、これは動かぬ証拠となりそうだ。
翌日学校を休んで各種資料を持って高橋弁護士に会いに行った。
「高橋先生、先日はお世話になりました」
「おぉ。井本君、その後はどうだね? 相談ってなんだね?」
「実は父親の叔父に対する借金なんですが」
と言って見つけた借用書と破られた借用書と銀行の預金通帳を見せ、叔父からの借金返済で父親の現金遺産がほとんど持って行かれた件を話した。
そして先日叔父を問い詰めたときにうそを言っていると強く感じた旨も伝えた。
(さすがに探知魔法でうそを言っていると判明したなんて言えないよね)
「たしかにこの預金通帳を見る限り借用書の日付の日に2000万円が叔父と思われる口座に振り込まれているね。そして借用書が2通あるのは貸した側と借りた側で同じものを1通ずつ保管していたんだと思う」
高橋弁護士は破られた方の借用書を慎重に調べた。
「井本君の父が保管していた借用書と破られた借用書では貸した側と借りた側の名前が入れ替わっているね。後で詳しく調べるけど、よく見ると名前部分を偽造してあることは明白だ。しばらくこれらの資料を借りておくね。あとはこちらで相手側に内容証明を送ったりするけど都度報告入れるから」
俺は高橋弁護士にお礼を言って今後のことを任せて家に帰った。
◇◇◇
後日、弁護士から、叔父との示談交渉が決裂したとの連絡が入った。
叔父はあちこちに借金があったようで、詐欺で取られた2000万円も別の借金の返済に当てられ全く残っていないとのこと。
さらに住んでいる屋敷や土地も抵当権が既に設定されていて、換金出来そうにないことが分かった。
「ガキをだまして何が悪い。金を返せと言われても、一銭もないぜ」
などど開き直ったので、詐欺罪で告訴したとのことだった。
かろうじて高級乗用車を売却して得た現金150万円ぐらいが振り込まれたが、それ以上は難しいらしい。
やれやれ、これじゃぁ弁護士費用とトントンで全然意味がなかったな。
今回は文書偽造も行っていたため、悪質と判断され、余罪もいくつも有ったみたいで実刑は免れないだろうとのことだった。
まあ、叔父には一矢報いたってことで良しとしよう。
詐欺で取られた遺産は返ってこなかったが、
主人公は、父親の遺産をだまし取った叔父に対し、制裁を加えます。
今回もあまり魔法を使わずに制裁していますが、これから徐々に魔法を使う頻度は上げていく予定です。
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