15.大賢者、担任を撃退する
翌日、俺は退院することになった。
祖母には心配をかけてしまったが、俺の怪我がかすり傷程度だったので安心して俺の退院と共に実家に戻った。
学校では今回の事態収拾を図るためのヒアリングが関係者を集めて行われることとなった。
俺はもちろん山本弁護士を伴って学校へ行く。
恵さんの両親も高橋弁護士を伴って同席することとなった。
学校側としては穏便に済ませたかったようだが、弁護士同伴と聞いて校長先生や教頭先生は難色を示したが、「弁護士同伴での話し合いに応じなければ告訴も辞さない」との強硬な申し入れもありしぶしぶ了承した。
恵さんの両親とその弁護士の参加に関しても「なぜ部外者が?」との思いもあったようだが、恵さんが突き落とし事件の録画をした目撃者ということと、その他にも重大な案件がある、ということで強引に同席を了承させた。
校内の会議室には、校長、教頭、担任教師の田部井、不良の3人とその親、俺と山本弁護士、恵の両親と高橋弁護士がそろった。
まず開口一番不良3人組の親の俺への謝罪から始まった。
「友人同士のふざけあいとしても、井本君を屋上から転落させてしまったことは申し訳ないと思っている。治療費は払います」
友人同士のふざけあい? こいつら何を言ってるんだ? 子供も子供だが、親もどうしようもないな。
続けて担任の田部井が、
「屋上でふざけあいしていたんだから井本君にも責任はあるし、怪我も大したことは無かったので今回はお互い謝罪ということで良しとしましょう」
なるほど、田部井の入れ知恵で友人同士のふざけあいで屋上うっかり俺が落ちたことにしようとしているんだな。
校長も教頭もウンウンと頷いている。
俺はあきれてしまい、山本弁護士の方を向く。
俺の代わりに山本弁護士が口を開く。
「私は井本君とその保護者の代理人の弁護士、山本と言います。どうやら事実誤認があるようなので訂正させていただきます。井本君はここにいる玉置君、原田君、津山君の3名から2年にわたり暴行と恐喝を受けており、トータルで60万円以上お金を盗られています。今回の事件もお金を巻き上げようとしたところ、井本君が拒否しようとしたため暴行を受け、その結果校舎の屋上から投げ落とされたというのが真相です」
山本弁護士はそう言って持参したノートPCで不良三人組と俺との当日のやり取りの音声付動画を再生した。
そこには言い逃れができない内容の不良共の言動が録画されており、不良三人組とその両親と田部井は真っ青になって固まった。
山本弁護士はさらに続けて、恵さんが撮影した、俺が屋上から投げ落とされる動画も再生した。
さらに、俺が田部井に相談したが、軽くあしらわれた時の動画も再生した。
奴らの顔色は真っ青を通り越して白くなっていた。
山本弁護士は続けて、
「屋上から人を投げ下ろす行為は明らかに刑事事件に相当します。それをもみ消そうとした田部井教師の言動も許されるべきではありません。我々はそちらの加害生徒と保護者および学校を告訴する用意があります」
校長をはじめ、加害者全員が土下座せんばかりに頭を下げて来た。
その後の話し合いで告訴を取り下げる代わりに以下の条件で不良三人組の両親との示談が成立した。
・加害生徒は慰謝料としてそれぞれ100万円づつ合計300万円を支払う。
・過去に巻き上げられた金品の速やかな返却と謝罪。
・不良三人の登校禁止と速やかなる他校への転校。
告訴されたら息子たちが少年鑑別所に収監されるのは明らかだったので、彼らの両親は即座に了承し山本弁護士が用意してきた書類にサインした。
ちょっと手ぬるいかもしれないが警察沙汰になると目立ってしまうしね。(もう十分目立っているけど)
一応の決着がついたので不良三人組のご一行には退出いただいた。
彼らはぐったりうなだれて部屋から出て行った。
彼らが出て行ったあと校長と教頭と田部井は大事にならなかったことに安どの表情を浮かべていた。
しかし山本弁護士は田部井に向かい話し始めた。
「次に田部井先生への制裁についてお話しさせてください。井本君から過去何回かいじめと恐喝について相談されていたにもかかわらずこれを放置しましたね」
「いっいや、私は井本君の相談に親身に乗ってあげておりました」
「それではこれをご覧ください」
山本弁護士はPCで俺と田部井の会話と病室での事件もみ消しの強要の会話を再生した。
田部井は真っ青な顔色になり、校長と教頭は真っ赤な顔色になる。
校長は土下座せんばかりに俺と山本弁護士に頭を下げた。
「この件に関してはどうか内密にして私に一任していただけないでしょうか? 田部井君にはそれなりの処置を約束します」
「下手をすると生徒の命にもかかわることですからね。内密などは無理です。井本君とその保護者とも相談しまして、県と市の教育委員会にも内容証明郵便で事実を報告させていただいております。そろそろ到着しているんではないですか?」
山本弁護士はさらに言葉を続ける。
「それに、田部井教師の問題行動はこれだけではありません。この後は高橋弁護士からお話があると思います。まあとりあえずいったん休憩にしましょう」
そう言って話を一旦中断し、休憩に入った。
青白い顔色の教師達と対照的に、鈴木恵の両親は相変わらず怒りの表情を浮かべている。
シーンとした部屋で俺はピッピとの視界共有を使い、部屋を出て行った不良達の様子をうかがう。
校舎から出て行った不良達は親からこっぴどく叱られていた。
まあ奴らは自分の都合の良い話しか親にしていなかったと思うので、田部井のシナリオ通り生徒同士がふざけていてうっかり俺が落ちたって聞いていたんだろうな。
それが蓋を開けたら恐喝で金を巻き上げただけでなく、屋上から突き落としたなどと真実を聞かされたら怒るのも無理はない。
リーター各の玉置に至っては親父にボコボコに殴られていた。
いい気味だ。
そうこうするうちに休憩も終わり、高橋弁護士が話し始めた。
「先ほど紹介を受けました弁護士の高橋です。鈴木恵さんとその後両親から依頼を受けております。今回は田部井教師のわいせつ行為に関して事実確認とこちらの要望についてお話しします。鈴木恵さんはここ数カ月田部井教師からわいせつ行為を強要をされています。当方としましては田部井教師の告訴も視野に入れております」
田部井教師は冷や汗をかきながら震え出した。
「ば、ばかな。私はわいせつな行為など断じてしていない」
「それではこれをご覧ください。これはこの学校の視聴覚準備室の設置されたカメラの動画になります」
そういって机の上のPCを操作して先日俺が設置した隠しカメラにの動画を再生する。
そこには恵さんを強引に抱きしめたりキスを強要しようとしている田部井が音声付きではっきり映っていた。
さらには”逆らったら内申点を下げる”との脅しの音声もしっかり聞こえてきた。
言い逃れが出来そうにない証拠だが、田部井はなんとか反撃をしようと口を開いた。
「こっこれは盗撮だ。違法な手段で撮影されたものは証拠にならない」
高橋弁護士は落ち着いてこう反論した。
「たしかに盗撮に近いので刑事裁判では証拠として認められない可能性はあります。民事裁判では認められるかもしれませんがグレーですね。では田部井先生は裁判で証拠の無効を訴えて戦いますか?」
さらに続けてこう言う。
「未成年の恵さんが自身を守るために井本君に相談して、井本君が設置したカメラです。井本君はこの学校の生徒であり、不法侵入にはならないですし証拠として認められる可能性もあります。すでにこちらの動画も教育委員会には提出済みです」
教育委員会に提出済みと聞かされ田部井も校長と教頭もがっくりとうなだれた。
「こちらの要求は以下になります」
・田部井からの謝罪と慰謝料300万円の支払い。
・田部井はこの学校の教師を辞任する、もしくは学校側からの懲戒解雇処分を
実施すること。
・田部井の教員免許の返納
「これらが認められない場合は刑事裁判および民事裁判にて争うことになります」
戦意を喪失した田部井はすべての条件を飲む旨承諾した。
ようやくセクハラ・モラハラ教師と不良たちへの制裁ができました。
あまり魔法を使ってないですが、派手に魔法を使うと魔法についてバレてしまうので、主人公は慎重にやっています。
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