表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/173

14.大賢者、新学期を迎える

夏休みも終わり今日から新学期だ。

宿題やら筆記用具と一緒に視聴覚室から回収した超小型のカメラも持って行く。

ピッピは僕の肩にとまったり、上空をパタパタ飛んだりしながら一緒に移動する。

不良三人組と朝からトラブルはめんどくさいので、ギリギリに登校して教室に入ることにした。

ピッピとは校庭でお別れ。


教室では生徒はほぼ全員そろっていたが、俺に「おはよう」って言ってくれるのは誰もいない。

いや、委員長だけは「おはよ」って言ってくれた。

おっ恵さんさんも「おっおはよう」って挨拶くれた。

ちょっと嬉しい。


不良三人組は俺が入ってきたのを見かけてこちらに向かってきたが、直ぐに担任教師が入ってきたので奴らはしぶしぶ自席に戻る。

やれやれ、早速金をせびろうとしてるな。


案の定、朝のホームルームが終了した時に不良どもが俺の席に来る。

すかさず携帯電話をビデオ録画モードにして胸ポケットに挿す。

さらに小型ビデオカメラも録画状態にして机の上に置いておく。


俺が座っている椅子をガンッと蹴飛ばし、


「おい、ちゃんと金を持ってきたんだろうな!」


俺はとぼけて質問する。


「えっと、何のお金?」


「ふざけんじゃねえよ。一人2万で合計6万持ってこいって言ったよな?」


「えっと、なんで僕がお金を払わなきゃいけないの?」


「俺たち金が無いんだ、お前に借りるんだよ」


「今まで何度も貸したお金が60万円にもなっているのに返してもらってないし、もう貸せないよ。それより今まで貸したお金すぐに返して」


「あ?お前馬鹿か?返すわけないだろ。あれはもらったの」


「でも貸してくれって言うから貸したのに」


俺は録音を意識しながら奴らから言質を引き出す。


いい加減めんどくさくなってきたし、他の生徒が全校集会のために教室から出始めたので俺も席を立って早足て教室を出て体育館に向かう。


「あっこら待てよ」


奴らの一人が背中を思いっきり殴ってきたが、瞬時に身体強化魔法を発動したので俺はノーダメージだ。

逆に殴ってきた奴は手首を痛めたらしく、顔をしかめてうずくまっていた。


奴らが何か言いながら追いかけてきたが無視無視。


全校集会に行く途中で恵さんに追いついたので声を掛ける。


「恵さん、全校集会が終わった後に、ちょっとお願いがあるんだけど」


と、あることをお願いしておく。


そして長い校長の話も含んだ全校集会も終わり、各自教室に戻る。

後は夏休みの宿題を提出したら今日は終わりだ。


帰りのホームルームも終わった後、担任が職員室に戻ろうとしたところを走って近づき呼び止める。携帯電話は録画状態で胸ポケットに挿して、小型ビデオカメラも録画モードだ。


「先生、また玉置君、原田君、津山君の3人からお金をせびられました。今度は2万円ずつ6万円よこせと言われたんです」


田部井はあからさまにうんざりした表情を浮かべこう言った。


「何度も言うように生徒間のお金の貸し借りは禁止だ、わかったか?」


「でもお金を渡さないと殴られるんですよ。何とかしていただけないでしょうか?」


「あっ?生徒間同士の暴力も禁止なの。分かったらさっさと帰れ」


はい、いじめと恐喝の放置の言質いただきました。


俺が自分の荷物を取りに教室に戻ると不良どもがやってきた。


俺は早速携帯電話と小型ビデオカメラ(今は胸のボタンの代わりに服に付けている)を録画状態にする。


「おいこら、早く金出せ!」


「やだよ」


俺は挑発するように右手の中指を突き出し走って教室を出る。


「このやろう待て」


奴らは追いかけてくる。

俺は奴らを振り切り、A棟からB棟へ走って移動する。

そしてB棟の4階まで駆け上がり、さらに屋上に通じる階段も駆け上がる。


屋上へのドアは通常施錠されているが、前もって鍵を開けておいたので問題なく屋上へ出る。


不良どもは屋上まで追いかけて来た。

俺は予め確認しておいたA棟側の端まで移動し振り返る。

不良どもは勝ち誇ったような顔をしながら近づいてくる。


「もう逃げられないぜ。早く金を出せや」


「もうお金は出せません。許してください」


俺は神妙な声をこう言ったが、顔は奴らを挑発するために、小ばかにしたような表情をする。


俺の表情を見て腹を立てた奴らは、俺が予想した通り3人で俺の腕や髪の毛をつかむと屋上の縁へ突き落すようなそぶりをする。


「おら、早く金を出さないと突き落すぞ」


よし、もう一押ししておこう。

俺は念話魔法を発動し奴らの脳に直接声を届ける。


『3人がかりでしか弱い者いじめ出来ない軟弱なお前らに、俺を突き落す度胸なんて無いだろ! 突き落せるもんなら突き落してみろよ。この弱っちい軟弱者めが!』


口パクしながらの念話なので奴らには俺が普通にしゃべっている様に感じただろう。

録画機器には当然この声は記録されない。


激高した奴らは、


「てめー、ふざけてんじゃねえぞ!」


と言いながら3人で俺を担ぎ上げると屋上から投げ落とした。

屋上の端に居た俺たちはA棟からは丸見えで、不良共がしかも大声で怒鳴っていたので、多くの生徒が俺たちを見ていた。

俺が突き落とされるのを見て、あちこちの窓から悲鳴が聞こえた。


「キャー!!」


その悲鳴で不良どもは我に返ったらしく一瞬顔を見合わせると大慌てで屋上から逃げ出した。


頭の悪い不良どもでも、4階建ての屋上(5階相当)の高さから投げ落とせは人は死んでしまうことは容易に想像できただろう。

そして人を殺せば罪に問われることも。


彼らは大騒ぎとなっている校内の様子から、自分たちのしでかした事の重大さに気が付き、半ベソをかきながら家に逃げ帰っていったのである。


いっぽう俺はというと、奴らを挑発した場所は校舎の脇に大きな木があり枝が校舎近くまで伸びており、その枝をクッションにしながら地面に落ちた。


途中で身体強化魔法を同時発動し、枝のクッションで地面に落ちたときはそれほどの速度でもなく怪我も無かった。これは計算通りだ。


それでも無傷だと怪しまれるので枝にこすれたときにかすり傷は付くように調整し、さらに頭にわざとたんこぶをつけて気絶したふりをしておく。


目撃者が多数いたため学校中が大騒ぎになり先生も慌てて駆けつけて来た。

やがて救急車も到着し俺は校医の先生と共に救急車に乗せられ病院へ向かうこととなる。救急車と入れ違いにパトカーも到着していた。


総合病院へ着いたときに意識が戻ったふりをして目を開ける。

それに気が付いて、救急車に便乗していた校医が話しかけてくる。


「井本君、大丈夫?お話しできる?」


「あ、大丈夫みたいです。ちょっと頭が痛いけど、他は特に痛いところとか無いです」


それでも緊急に診察を受けることになる。


病院の医師からは、


「頭を強打している可能性があるのでCTスキャンを実施します」


直ぐに退院できると思っていたのに、めんどくさい事になってしまったな。たんこぶなんて作るんじゃなかった。

しかし、いまさら後悔しても仕方がないのでおとなしく検査を受けることに同意する。


なんやかやで検査と診察が終わったのは夕方だった。

大きな怪我は無いと診断だったが、大事を取って今晩一晩は入院ということになった。


連絡を受けて駆けつけてくれた祖母が手続きを取ってくれる。


心配そうに病室に入ってきたが、元気そうだったので安心したみたいだった。

心配かけちゃって申し訳ない。


祖母が入院の手続きのために病室を出たのを見計らったかのように担任の田部井が入ってきた。

俺は枕元に置いてあった携帯電話を掴むと、すかさず録画状態にした。


「ったく、手間かけさせやがって。いいか?お前は校舎の屋上で友達かとふざけて遊んでいて落ちたってことにするんだ」


「えっ?僕はふざけてなんかいなかったし、屋上から投げ落とされたんですが?」


「だから、それじゃあ大事になるだろ? いいな? 友達とふざけて遊んでいたらうっかり落ちたって言うんだぞ。逆らったら内申点に響くんだからな!」


そういうと病室から出て行ってしまった。


はい、担任の卑怯な言質の録音取れました。

携帯電話を確認すると、ばっちり田部井の顔の映像と共に音声も入っていた。


その後、鈴木恵さんが半べそをかきながら病室に入ってきた。


「井本君大丈夫なの?屋上から落とされて死んじゃったんじゃないかと思った」


「心配させてごめん。診察の結果かすり傷だけで問題無いって」


「良かった。井本君に頼まれたので携帯でA棟から屋上でのやり取りを録画してたんだけど、まさか投げ落とされるなんて思ってなかったんで心臓が停まるかと思った」


彼女にはあらかじめ携帯電話で屋上に俺の姿が見えたら録画するように依頼しておいたのだ。


「私にあの位置で屋上の様子を録画するようにってお願いされたけど、こうなるってわかってたの?」


「奴らにお金をせびられるのは分かっていたんで、屋上に逃げることは決めていたんだ。けどまさか投げ落とされるとは思ってなかったけどね」


本当は最初から彼らに投げ落とされるまで計画していたんだけど、そこまで言う必要ないよね。


録画した画像を見せてもらったが、携帯電話を小型三脚で固定してから撮るように依頼していたので、落とされた瞬間もブレることもなくはっきり録画されていた。


「うん、ありがとう。この動画と、この間の視聴覚準備室での映像で田部井をやっつけることが出来そうだよ。もうすぐ弁護士の先生が来るからもうちょっとここに居て」


「え?弁護士さん?」


恵さんは弁護士と聞いて戸惑っているみたいだったがちょうどその弁護士先生が病室に入ってきた。


「高橋先生、こんにちは。お忙しいところお手数おかけします」


「井本君こんにちは。今日は大変だったみたいね。元気そうだけど本当に屋上から落ちたの?」


「はい、これを見てください」


といって、さっきの動画を見せる。


「こっこれは! よく助かったわね」


「運が良かったんですよ。それで今回の本題の担任教師の件ですが、こちらにいるのが鈴木恵さんで田部井のセクハラの被害者です」


俺と恵さんと弁護士先生とで、病室でしばらく恵さんと話をしていたが、田部井を徹底的にやっつけることで意見が一致した。


俺はさらに先ほどの田部井との病室でのやり取りの録画を見せた。


田部井がこの恐喝事件と屋上から突き落とすという傷害事件までももみ消そうと俺に圧力をかけている証拠がばっちり収められており、高橋弁護士もこれにはさすがにあきれていた。


「これは想像以上に腐った教師ね。徹底的にやりましょう。まずは彼女のご両親と相談してくるわね」


といって、先生は恵さんと共に病室を出ていく。


さすがに疲れた俺はひと眠りすることにした。

病室の窓の外にピッピがとまって心配そうに病室内を覗き込んでいた。


後で聞いた話だが、高橋弁護士が動画を見せながら恵の両親に説明したところ、当然のことながら両親は激怒し、


「費用はいくらかかってもいいから徹底的に担任教師を制裁して欲しい」


と依頼したとのこと。


高橋弁護士は正式に恵の両親と契約し、俺の方の弁護は同じ弁護士事務所の山本浩二弁護士に依頼することになった。


こうして弁護士2名体制で田部井に制裁を加えることになった。

さて、不良三人組とセクハラ・モラハラ教師を撃退する材料がそろいました。

次の章でざまあします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ