134.異世界探査開始
いよいよ異世界への第一回探査出発の日が来た。関係者に見送られ、俺を含めた探査メンバー5人は地下のシェルター内に描かれた魔方陣の中央に移動する。
探査メンバーは以下である
・ピーター・T・ケリー(男)防衛担当
・マイケル・デ・ベッツ(男)生物担当
・ロビン・デ・アレン(女)科学担当
・レイチェル・ローズ・テイラ(女)文化担当
既にメンバー全員で訓練を続けており、気心は知れていた。俺は訓練には参加していないが、何度も顔を合わせており、彼らの力量は把握できていた。
俺は副大統領という肩書もあり、これから行く異世界を良く知っているため、探査チームのリーダーを拝命している。まあやるからには徹底的にやるさ。
今回のミッションは以下である。
・カルンの世界の映像を撮影。特にユレム国の街並みや人々の暮らしぶりを
撮影する。
・ベースキャンプとしての宿の確保。できれば家を確保する。
・異世界転移魔法陣を設置可能な安全な場所の確保と魔方陣の設置
・市民への接触と情報収集
準備は万端。いよいよ異世界転移実施だ。異世界転移は非常に魔力を使うため、予め専用の魔石を複数個準備して、メーティスに転移を発動してもらうことにした。
向こうの世界は魔素の濃度が少ないため、俺の魔力の充填には時間がかかる。
こちらからの転移で魔力を使い果たしたくなかったからだ。
メーティスからカウントダウンが発せられる。
『転移5秒前、4,3,2,1,ゼロ』
次の瞬間俺たちは薄暗い地下室に居た。異世界転移成功だ。
ここに来るのも10年ぶりぐらいか? 最後に来たのはグブトル教団の連中を連れて来た時以来だな。そういえば街道沿いに放置しておいた彼らはまだ生きているんだろうか?
俺の先導で、地下室から地上の屋敷跡地に出る。前回来た時も荒れ果てていたが、今回はさらにひどいな。ここにある異世界転移魔法陣が消失したら二度とここに来れなくなってしまうから、ここの魔法陣をメンテナンスするか、もっと安全な場所を確保して魔方陣を設置することが必要だな。
俺は皆に指示を出す。
「皆さん、無事異世界転移が出来ました。ここから歩いて10分ほどの場所に街道があり、さらに15分ほど行ったところに街があります。その先にこの国の首都、こちらの言葉では王都、が有ります。まずは近くの街ハイレンまで行ってみましょう。何か質問はありますか?」
「この辺りの治安はどうなんでしょうか? 凶暴な動物とかは居ないのでしょうか?」
「王都に近いので治安は比較的良いです。凶悪な動物として、魔獣が居ますが、ここは街道に近いため危険な魔獣は出ないと思います」
「住民と出会ったらどうすればいいですか?」
「基本は私が対応します。慣れてきたら皆さんにも住民との対話をしてもらおうと思います。それまでは勝手に話しないようにお願いします。単独行動もしないようにお願いします」
「了解」
念のため、ストレージから拳銃を取り出し、全員に装着してもらう。
街道まで出たところで、ストレージから荷車と魔布に包まれた馬を取り出す。
馬から魔布を取り除き調子を確認するが、元気なようだ。
メンバーたちが慣れた手つきで荷車を馬に取り付ける。
隣国からの行商人という設定なので、その為には行商用の品物が必要だし、現地の通貨を手に入れるためには何らかの品物を売らねばならない。
街道をしばらく歩くとハイレンの街に到着した。俺は前回ハイポーションを売って入手していた現地の銀貨を取り出し、ゲートにいた守衛に手渡す。商人の場合街に入る税金は銅貨5枚だが、俺たちは通行証を持っていなかったので、倍の銀貨1枚を徴収された。
「お前たちはどこから来たんだ?」
「ライガー国からの行商人です」
「遠くから来たんだな。なんで通行証が無いんだ?」
「途中で強盗に襲われ奪われました」
「よく積み荷が無事だったな」
「ほどんどの積み荷はストレージに仕舞ってありますので」
「お前さん、ストレージ魔法が使えるのか? うーん、分かった。通って良し」
通行料は倍かかったが、特に疑われることもなく街に入り込めた。まあ、王都じゃないからそれほど警備もうるさくは無いからな。
まずは現地の通貨をゲットしないとな。俺は過去の記憶をたどりながら中心部へ移動する。メンバーたちは初めて見る異世界の街が珍しいらしく、辺りをキョロキョロ見回している。
王都に近いためハイレンの街は比較的大きくて整備されている。それでも21世紀の地球の都市から比べたら貧乏くさい。電気もガスも上水道も整備されていない。
「井本さん、街道には結構人の往来がありましたが、この世界では転移魔法での移動は無いんですか?」
「もちろんあるんですが、転移魔法を操れる人が少ないので、魔法での移動は非常に高額になっています。なので一般の人や下級の商人は使えないですね」
「公共交通機関は無いんですか?」
「街と街の間には乗合馬車が運行されていますが、こちらも比較的高額なので、一般人は徒歩での移動が多いです」
やがてお目当ての店が見つかった。40年前と同じ場所で営業してくれていて良かった。名前はカラマ商店で、以前と変わっていないな。
ここは商品の買取もしてくれるお店だ。
商業ギルトに商品を卸してもいいが、身分証が無いので相手にしてもらえない可能性があり、民間のお店に来たわけだ。
こちらの方が高額で引き取ってくれる可能性も高い。
「こんちわ。行商に来たんだが、商品を買い取ってもらえるかね?」
「いらっしゃい。もちろん買い取りますよ。どんな品物をお持ちで?」
俺はサンプルとして小分けにした胡椒と砂糖、そしてハイポーションの瓶を1本取り出した。
「今回の品物はこの3種だ。非常に品質が高いので良い値をつけてくれよ」
「では拝見します」
店主はしばらく品物を鑑定していたが、驚いたような顔を向ける。
「胡椒も砂糖も非常に品質が良いですね。そしてこちらはハイポーションですね。こちらの品質はどんなもんでしょうかね?」
「あぁ、このハイポーションは非常に品質は良いぞ。鑑定はできるか?」
「あいにくハイポーションの入荷が少なく、鑑定は得意ではないんですよ」
「今日は100本持って来ているから、良ければこの見本のハイポーションは無料で試していいぞ」
店の主人は俺の提案を聞いてびっくりした顔をした。
地球ではハイポーションは1本20ドル(2800円)ぐらいで普通に薬局に売ってるので、1本ぐらい全然惜しくないんだが、この世界では一般労働者の年収位したはずだからな。
無料って言われたらびっくりするだろうな。
「えっ? よろしいんですか?」
「もちろんだ。その代わり残りの100本は良い値で買ってくれよな」
一緒に来たメンバーに言って、残りの100本を荷車から持って来てもらう。
「信用できるように、無料の一本はこの中から適当に選んでもらっていいぞ」
「ありがたく試させていただきます」
主人は店の奥に声を掛ける。
「おい、トニーを呼んで来い、今すぐにだ」
奥から店員らしき人が返事を返す。
「トニーなら怪我をして寝込んでるじゃないですか、とても歩ける状態じゃないっすよ」
「いいから引きずってでも連れてこい」
暫くして、顔色の悪い男がフラフラしながら現れた。転んだのだろうか? 顔に大きな痣があった。
「旦那様。お呼びでしょうか? 申し訳ないんですがまだまともに動けなくて、仕事は出来そうに無いです」
トニーと呼ばれた男は今にも倒れそうだ。
「仕事じゃない。いや、仕事の一環でもあるが、これを今すぐ飲んでみろ。ハイポーションだ」
店の主人は100本のハイポーションの瓶から適当に1本を選んでトニーに手渡した。
「えっ?ハイポーション?そんな高い物は飲めないですよ。そんなお金もないですし」
「金は取らない。その代わり効果について確認して説明してくれ」
「わっ分かりました」
トニーはおっかなびっくりハイポーションの瓶の栓を抜きとると、ゆっくり飲み干した。
「どうだ? 何か効果を感じるか?」
この世界ではハイポーションは高額なので、一般市民で服用した人は多くなく、服用したところを見た人も少ないだろう。
トニーの言葉を聞く前に、ハイポーションの効果は見て取れた。
トニーの顔色がみるみるよくなり、どんよりしていた目には光が宿ったように見える。フラフラして前かがみだった姿勢も一挙にシャキッとした。
「旦那様、こっこれがハイポーションの効果なんですね。元気いっぱいになりました。怪我をする前より元気なぐらいです」
「おい、トニー。お前顔の痣が消えたぞ」
トニーが慌てて顔に手をやっている。
「えっ?あれ? 昨日階段から落ちて打ち付けてできたところが痛くなくなってます」
「他に代わったことは無いか?」
「えーっと、あっ! ずっと前から悩まされていた腰痛が治ってます。あっ! 階段から落ちて怪我をした右膝と左足の痛みも消えてます。ハイポーションすごいです」
さっきまで死にそうな感じだったトニーは元気いっぱいになってしまい、ぴょんぴょん飛び跳ねている。それを見た店主は慌てて俺たちに顔を向け、拝み倒すように話してきた。
「これは本物だ。いや現在市場に出回っているハイポーションより効果があるみたいだ。こいつは昨日階段から転げ落ちて全身打撲で寝込んでいたんだ。今朝からは熱まで出してうんうんうなっていたんだが、まさかここまで効果があるとはな。全量引き取るし、もしもっと入荷できるんならそれも引き取るぞ」
「まあ、ここにある100本は全部売ってやるよ。次回入荷したら優先的に持って来てやる。その代わり良い値で買ってくれよな」
「もちろんです。1本金貨10枚では?」
こちらの貨幣価値は概ね以下になる。
小銅貨:0.1ドル(14円)
銅貨:1ドル(140円)
銀貨:10ドル(1400円)
大銀貨:100ドル(1万4000円)
金貨:1000ドル(14万円)
白金貨:1万ドル(140万円)
金貨10枚だと1本1万ドル(140万円)だな。
「ちょっと待て、市場で買おうとすると1本金貨30枚から50枚ぐらいしたはずだ。いくら何でも安いだろ?」
「いえいえ、高い代わりになかなか売れないので、劣化のリスクもありますし、金貨10枚ぐらいでないと厳しいですよ」
「これを見てみろ。この瓶の栓は非常にきっちり閉まっていて空気を通さない。さらにこのハイポーションは不純物が全く含まれていない。栓をしたままなら5年は劣化せずに保管できるぞ」
「えっ? そんなに? 分かりました。1本金貨12枚で如何でしょうか?」
「まあいいだろ。それで売ってやるよ。胡椒と砂糖も良い値で頼むよ」
交渉は成立し、俺たちは金貨1万5千枚を得ることができた。地球の貨幣価値で150万ドル(2億1千万円)だな。一回の取引としては悪くない。
「申し訳ありませんが、金貨の在庫が足りないので、本日は半分の7500枚でよろしいでしょうか?残りは明日の朝までに準備しておきます」
「ああ、わかった。残りは明日の朝取りに来るよ。ところで親父、便利屋は確かここの裏通りの先にあったはずだが、まだ営業しているか?」
「便利屋サリーのことですかね? 同じ場所で営業してますよ」
そういえばそんな名前の店だったな。俺達は店主にお礼を言って店を出た。
「ミスターイモト。うまく現地の通貨を入手できましたね。どのぐらいの価値があるんですか?」
サブリーダーのピーターが聞いてきた。
「そうですね。地球の貨幣価値で150万ドル(2億1千万円)ですかね」
「150万ドル? そんなドラッグスストアで売ってるようなハイポーションと、数袋の胡椒と砂糖で?」
「ハイポーションはこちらの世界では高額なんですよ。材料の品質は悪いし、製造技術も未熟なので量産が難しく、なかなか市場には出回らないんです。胡椒や砂糖は、中世ヨーロッパのこれらの価値を考えれば分かると思います」
「それじゃぁエリクサーを持ってくればもっと儲かりますか?」
「いえ、エリクサーはこの世界ではほとんど伝説の薬なんです。値段は付けられないし、下手に国王にバレると投獄される危険もあります。過去にはエリクサーを巡って国同士の戦争になったこともあるんですよ」
探査隊メンバー達は驚いた顔をしていた。地球でも中世ヨーロッパでの薬の価格は高額だったはずだ。しかも効果は眉唾だったと聞く。
この世界ではハイポーションはあまり流通はしていないので、今後はあまり持ってこない方がいいだろう。
派手に売りまくると国王や領主に目をつけられる危険もある。
効果が低いがたくさん流通していて比較的安価なローポーションと呼ばれる薬の方が売りやすい。
現在は地球では作られていないが、地球に帰ったら作ってみようかな。
「ミスターイモト。今からどこへ行くのですか?」
「便利屋と呼ばれる店があって、そこで皆の身分証明書を作ってもらう予定です。王都に入るには身分証は絶対必要ですから」
俺はそう言って皆を5分ほどの距離の裏道にある店に案内した。前世でたまに利用した店だが、まだ有ったとはな。非合法な商売もしていたのでもう無くなっているかと思ったが、領主への賄賂をたっぷり払っているんだろう。
店に入ると初老の男が店に居た。中古の道具などを売っている古道具屋だ。もちろん古道具屋としても商売しているが、この親父の本当の職業は色々な非合法の商売だ。身分証明書の作成もその一つだ。
「親父、俺たちの身分証明書を作ってくれ」
親父はこちらを一瞥すると返事をした。
「どんな証明書が必要なんだ?」
「ライガー国出身でユレム国への移住者の商人としての証明書だ」
「まためんどくさい依頼だな。紙の証明書と金属のとどちらにするんだ?」
「金属で頼む」
「分かっていると思うが非合法だからな。一人金貨8枚だ。びた一文負けないからな」
「それでいい」
「金属プレートだと肖像画を刻まねばならないから、お前たち今日一日ここに居てもらうことになるが大丈夫か?」
「それなんだが、肖像画は準備してあるからこれでどうだ?」
俺は予め準備しておいた俺たちの写真を渡した。
「なっなんだこの肖像画は! こんなに小さいのに、こんなに細かく描かれている肖像画は初めて見たぞ。ライガー国ではこんな技術があるのか?」
「まあね」
俺はあいまいに答えておいた。
「これだけ精巧な肖像画があれば、本人たちはいらないな。費用は前払いだ。明日の朝来てくれれば渡せるぜ」
「わかった。代金を渡しておく。明日朝取りに来るからよろしく頼む」
俺達は店を後にした。それにしても、あの親父は前世に俺が来た時も居なかったか?
あれから50年は経っているんだが、見た目が全然変わっていないあの親父は化け物か? いや息子って可能性もあるな。
店の外に出た後でピーターが聞いてきた。
「ミスターイモト。俺たちの身分証明書を作ってもらったんですか?」
「そうですね。非合法の何でも屋に依頼したんですよ。明日の朝にはできるみたいだから、受け取った後に王都に行きましょう」
周辺都市ならいざ知らず、王都では身分証明書が無いと入ることが難しい。
「今夜はどこに泊まりますかね?」
「そうですね、宿に泊まってもいいですが、俺たちが大金を持っていることがバレていると襲撃される恐れもあるから、街を出て少し郊外でキャンプを張りましょう」
「了解」
俺達は一旦街を出る。そろそろ夕暮れ時になり暗くなり始める。荷車を引いていた馬を魔布に包んでストレージに収容し、荷車も収容する。そして街道を少し外れてからジープをストレージから取り出す。
「よし、全員ジープに乗車。少し街から離れますよ」
既に真っ暗になっており、周囲には誰もいない。ピーターが運転席に座りエンジンを掛ける。俺は助手席に乗り、後部座席に残り全員が乗り込んだことを確認してジープにて移動を開始する。
街道から外れたが、比較的平らな土地なので、ジープの運転の障害物は少ない。やがて中規模な川が見えてきたので、川の近くでキャンプすることにした。
とはいっても、テントを張ったりするのもめんどくさいし、虫に襲われるのも嫌なので、無理を言って調達してもらったキャンピングカーを取り出す。
大型バスぐらいあるバカでかいキャンピングカーで、確か価格は120万ドル(1億6800万円)だっけ?
高いだけあって非常に豪華である。
シャワーはもちろん冷蔵庫もキッチンも付いており、ベットも人数分設置してある。
「では屋外キャンプなんてけち臭いことは言わず、今夜はこれで寝ますよ。女性二人は冷蔵庫から食材を出して料理をお願いします。男性は周囲の警戒と、川へホースを運んで水の補給をお願いします」
「了解」
料理と言っても冷凍食品を電子レンジで温めればいいだけなので、直ぐに準備できた。
今日のディナーは牛のステーキとクラムチャウダーのシチューだ。パンも野菜も果物もたっぷりある。俺たちは交代で見張りを立てながら食事をし、シャワーを浴びてから就寝する。
キャンピングカーにはワインとかウィスキーも置いてあったが、未知の世界なので飲酒は禁止だ。
食事しながら今日の反省会を行う。反省会と言っても特にトラブルは無かったので、メンバーの異世界の感想を聞くのがメインだった。
サブリーダーのピーターがまず口を開く。
「初めての異世界だったが、非常に興味深いね。まさに映画で見たことのある中世ヨーロッパって感じだ。思ったより魔法を見る機会が少なかった、というか、まったく魔法を見ていないんだが、通常魔法って使わないのか?」
「火を起こすときに使う火魔法とか、外で喉が渇いたときに使う水魔法は比較的見る機会は多いと思いますが、今回は見られなかったですね。それ以外の魔法は通常あまり見ないというか、探知魔法とか身体強化魔法は傍から見ても分からないですからね」
「俺たちの世界では転移魔法はバンバン使われているが、こちらでは全然使われないのか?」
「転移魔法を操れる人が少ないのと、貴族や領主が金儲けのために高い料金を設定しているので、一般人は転移魔法による移動はほとんど使えないですね。王族や貴族、金持ちの商人が使う程度ですね。地球の様に一般市民が気楽に使える様な感じではないです」
「予知魔法や探知魔法で犯罪がばれるので、治安は良いかと思っていたけど、あまり治安が良くなさそうだね。どういうことなんだ?」
「これもこれらの魔法を使える人が少ないので、よほど凶悪犯罪や、貴族に対する犯罪でない限り、魔法による犯罪調査が行われないんですよ。なので強盗や暴行など結構やりたい放題ですね」
「この世界には魔石は無いの? 地球みたいに魔石を使って魔法を発動すれば転移魔法とか予知魔法はやりたい放題じゃないの?」
「魔石を使っての魔法発動って、この世界ではまだ発見されていないんですよ。それに魔石に魔法陣を描くのは顕微鏡レベルの手作業になるけど、こちらでは顕微鏡は発明されていないし、されていたとしてもとても量産できることはないでしょう。地球では半導体技術を応用して大量生産してますから比べようが無いですね」
「それにしても、文化や生活水準がかなり低い気がするな。このような文化水準は何年ぐらい続いているんだね?」
「私の知っている限りでは3000年ぐらい前から生活は変わっていないみたいですね。ずっと停滞しています。音楽も絵画も彫刻も、地球のギリシャ時代やローマ時代の方がよほど進んでいると思いますよ」
「なるほどね。あまり文化的にはこの世界と交流を持つ意義はなさそうね」
ロビンさんが、ノートPCに記録をつけながらそう言った。
「俺もそう思いますよ。文明の度合いが地球とは違いすぎるので、観察するのはいいですが、接触や干渉は避けるべきだと思います」
「話は変わるが、私が一番驚いたのは、月が地球のそれとはまったく違うことだな」
「あ、私もそれにさっき気が付いたわ。まるで月から見る地球の様な感じなのね」
「それなんですが、こちらの世界の月は、たぶんこの星と同じ程度の大きさで、”セシス”と呼ばれています。望遠鏡が発明されていないので、まともに観測はされたことが無く詳細は不明ですが、海と大陸があり、動植物は繁栄していると思われます」
「人間も住んでいるんだろうか?」
「知的生命体の兆候は確認されていないですね」
「興味深いな。今度望遠鏡で観測してみよう」
「まあ、とにかく明日は身分証を入手したら王都へ向かい、王都でも色々観察しましょう。今日はもう休みましょう。明日も早いですからね」
「了解」
俺たちは交代で見張りをして眠りについた。
ついに異世界探査が開始されましたね。
主人公にとっては勝手したる異世界ですが、今後地球政府はどのように異世界に関わっていくのでしょうか?




