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12.大賢者、同級生を救う

不良共を振り切ったが、もう少し訓練を続けたいので、別の公園に移動する。

少し離れた岡の上の方にある小さな公園に行く。

普段誰もいない、ベンチが数カ所あるだけの公園だが、今日は一人先客がいた。


人がいるんじゃちょっと訓練は難しいか? と思い、公園を後にしようと思ったが、寂し気にベンチに座っている女の子に見覚えがあった。


えっと、誰だっけ? 記憶をたどっていくと同じクラスの鈴木恵さんだった。


おとなしくて目立たない子だが、容姿スタイルの整った生徒で男子からは密かに人気がある子だったかな。

そのまま後にしようと思ったが、寂し気な様子が気になったので声をかけてみた。


「鈴木さんこんにちは。なんか元気がないけどどうしたの?」


「あ、井本君。えっと、何でもないの。」


うーん、何でもないって言っても、元気がないんだよなぁ……。


「調子悪そうだし、僕で良ければ話を聞くよ」


「……」


何か話したそうな顔をしていたが、声が出てこない。

ちょっとリラックスさせるために軽めのヒール魔法を彼女にを掛けてみる。

そっと手のひらを彼女の頭にかざしてヒール魔法をかける。


ヒールは怪我や体調不良に効果があるが、気分を落ち着ける効果もあるのだ。

彼女は落ち込んでいた気分が急に楽になった気がしてびっくりしたみたい。

少し迷っていたが、ぽつりぽつりと話し始めた。


「あの、よければ相談に乗ってもらえないかしら?」


そして、彼女から聞いた話は胸糞が悪くなる内容だった。


今日担任の田部井先生から電話があり、進路相談とのことで明日学校まで来るようにと呼び出されたそうだ。


しかし、彼女は以前から田部井先生にセクハラをされており、明日もきっと嫌なことをされるんだと悩んでいるとの事。


人の来ない視聴覚準備室でセクハラされることが多いという。


卑怯なことに、言うことを聞かないと内申書を悪く書いて希望高校に進学できなくさせると脅されているとの事。


彼女は時々涙を浮かべながら話をした。


「ごめんね。急にこんな話しても困っちゃうよね」


俺はしばらく考えた後返事を返した。


「いやいいよ。 それよりこのままにしておけないので僕に任せてくれる?

必ず何とかしてあげるから」


「え、でも相手は担任の先生だし。井本君にも迷惑かけちゃうよ」


「だいじょうぶ。僕を信じて。それに僕もあの担任には思うところがあるから」


そう言って、明日は進路相談の時間の前に一度学校で待ち合わせることにした。

公園で別れたのち、直ぐに家に帰り対応策を考えてみる。

あの担任には不良達から金を巻き上げられた件を訴えてもまともに対応してくれなかった恨みもある。


今の俺なら魔法を使えば証拠も残さずにボコボコにできるが、それじゃあ解決にならないな。


前世では、俺は大賢者と共に、大法廷の判事の職も兼任していた。予知魔法で罪人の犯罪を確認できるし、探知魔法で記憶も読めるので、俺の判断は間違えがなかったし、俺の判決は国王でも覆すことができなかった。


しかしこの世界で「罪は明らかです。魔法で確認しました」なんて言っても誰も相手にしてくれないだろうし、狂人扱いされるな。


そう考えると魔法を使ってこの手の問題を解決するのは困難だ。


色々考えた結果、対応策がまとまったので、庭の魔法陣から東京の魔法陣に買い物の為移動する。


秋葉原に向かい、隠しカメラを取り扱っているお店に行き、超小型だが高画質で長時間録画できる隠しカメラを3つ購入する。


直ぐに家に戻り、カメラの動作確認と充電をやっておく。


この世界では魔法が使えない代わりに科学技術が進んでいて、魔法と変わらないか、それ以上の便利さがあるな。


準備が整ったので今日は早めに寝ることにした。


◇◇◇

翌朝、夏休み最終日。

朝早くに家を出た俺は、学校に向かう。


部活や進路相談などもあるので、既に校門も校舎も開いていた。

俺は視聴覚準備室に行く。


ここは、隣にある視聴覚室で使う高額な機器が置いてあるので、鍵がかかるようになっている。

視聴覚室での授業が無ければ人が入ることはほとんど無い。


当然鍵がかかっていたが、家から持ってきたスプーンを土魔法の一つの錬成魔法で鍵の形に変形させて、難なく合鍵を作る。


簡単な鍵なので、1分もしないうちに合鍵が完成した。

鍵を空けて準備室に入ると積んである機器の隙間に3つの隠しカメラを目立たないように設置する。

3つの内1つは無線で携帯からリアルタイムに映像が見られる高機能品だ。


設置が完了し、動作も確認してから外に出て鍵を使って施錠しておく。

恵さんとの待ち合わせ時間が近づいたので、校舎裏の待ち合わせ場所に移動。


そこには彼女が心配そうな顔で既に待っていた。

俺は彼女にこれからの行動について指示する。


 ・スマートホンを録画状態にして鞄に差し込んでおく。


 ・進路相談なのになぜ準備室なのかを質問する。


 ・何度も呼び出されセクハラされて、もう嫌だとはっきり言う。


 ・セクハラについて断固拒否し「内申書を悪く書く」との言葉を引き出す。


 ・鍵がかけられていると思うので、部屋から出ようとしてドアが開けられない

  ことを確認し、そのことに対しても言葉で担任に質問する。


「ヤバそうなら、俺が飛び込んで助けるから心配しないでね」


といって、スマートホンで監視カメラの画像を見せる。


「ほら、視聴覚室の中はリアルタイムで監視できるから。いざとなったら助けに行くから安心してね。鍵も持ってる」


そういうと彼女は少し安心した顔をした。


「これで証拠をつかめばもう田部井に好き放題やらせないさ。怖いと思うけど、必ず担任の言葉を引き出してね。確固たる証拠になるから」


そう言って。彼女の頭に手をかざし、ヒール魔法をかける。

念のため強化魔法もかけておく。


彼女が呼び出されている時間が来たので視聴覚準備室に向かう。

俺は少し離れて移動しながら準備室の隣の工作室に入り、スマホで準備室の画像を見ながら待機する。


田部井は先に準備室に入っているようだ。

彼女はノックをしてから準備室に入る。


「失礼します。今日は進路相談とのことですが、どうして視聴覚準備室なんですか?」


「分かっているだろう?ここなら誰も来ないしな」


「先生、もうこれでここに呼び出されるのも3回目です。もうセクハラ行為はやめてください」


「セクハラじゃないって何度も言っているだろう。先生と生徒の間には信頼関係が大事だろ。そのためにはスキンシップが重要なんだよ」


と言いながら彼女の腰に腕を回し、抱き寄せる。


「やめてください」


と言いながら彼女は強引に腕を振りほどき、ドアに向かう。


ドアを開けようとしても、彼女が入った後に田部井がカギを掛けたのでドアは空かない。


「ドアは空かないよ。言うことを聞かないと内申点に響くって何度も言ってるだろ? 志望校に落ちると両親ががっかりするよ」


そういいながら田部井は彼女を強引に抱き寄せキスしようとした。


もう十分証拠画像は抑えたと判断し、これ以上は危険なのですぐさま準備室に向かい、スプーンで作った合鍵を使ってドアを開ける。


「なんか悲鳴が聞こえたんですが、大丈夫ですか?」


わざとらしくそう言いながら準備室に入る。


びっくりして田部井は彼女を離してしまい、その隙に彼女は部屋を飛び出た。


「えっと、大丈夫でしたか?」


「ドアを開けるならノックしてから開けろ! そもそもここは一般生徒は立ち入り禁止だ! そもそもなんでお前がカギを持っているんだ!」


田部井は俺を睨みつけながら怒鳴る。


「えっ?鍵開いてましたけど」


と俺はとぼける。


「いやまて、そんなはずは……」


「とにかく何もなかったみたいなんで失礼します」


と言いながら足早に部屋を離れる。


しばらく様子を見ていると田部井がぶつぶつ独り言を言いながら部屋から出て職員室に戻っていった。


俺は隠しカメラを回収すると校舎裏で彼女と落ち合う。


「大丈夫だった?」


「うん、今までは全く言い返せなかったんだけど、井本君のおかげで今日はしっかり言い返せた。ありがとう」


そう言って彼女は嬉しそうに微笑んだ。


「なんか、昨日井本君と会ってから急に前向きに考えられるようになったんだよね。井本君には大感謝だよ」


あれ?彼女ってこんなキャラだっけ? もっと物静かなイメージだったけど。

昨日と今日彼女に掛けたヒール魔法が利いているのかもしれない。


前世ではあの位の魔法では効果も少なく、持続時間も精々1時間程度だったけど、この世界の人は魔法に対しての免疫が無いので効果が大きく出るのかもしれないな。


シャーク正人選手の時も魔法の効果は大きく持続時間も長かったように感じた。

これからは人に魔法を掛けるときは気をつけよう。


「まあ、僕は何もしてないけどね。それより証拠の動画は取れたと思うので、あとは僕に任せてもらえる? 信頼できる学校外の大人に相談して奴を追い出してやるよ」


「うん、お任せしちゃうね」


そういうと、恵さんは昨日とは打って変わって楽しそうな感じで去って行った。

さて、彼女の分も含め、セクハラ・モラハラ教師を成敗しますか。


主人公はついに魔法を使って活躍を開始します。

まずはセクハラ・モラハラ担任の成敗ですね。

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