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128.予知魔法商業化3


Magic forecast社が起業して1年。いよいよ予知魔法による気象予報が開始された。新規に開発された気象衛星に予知魔法の装置が搭載され、打ち上げられた。


いや、打ち上げられたという表現は正しくないだろう。昨今の衛星や探査機は、重力筏により宇宙空間に移動され、そこからロケットエンジンで所定の軌道に投入されている。


打ち上げを担当したNASAの職員は試験映像で送られてきた映像を見て興奮した。

北米上空の雲の様子が1時間後はもちろん、3日後まで非常に鮮明に表示されるからである。

7日後ぐらいになるとかなり不鮮明になってくるが、概ね1ヶ月後まで天気予報に十分使える解像度で雲の様子が映し出されていた。


これで気象予報としての機能は十分満足できることが判明した。次に実施された試験は、過去の地上を映像化することだった。衛星に搭載された予知魔法装置は、過去の地球も映像化可能なように設計されている。試験運用の一環として、太古の昔の地球の様子の映像化を実施してみる。


1億年前、10億年前、大陸移動説が概ね立証された。

27億年前、地球大気にまだ酸素が少なく、赤茶色の地球の姿が映像化された。

46億年前、火星程度の大きさの惑星が地球と衝突する様子も映像化された。


しかし、過去になるほど魔力が必要になるようで、1億年前の画像は、動画換算で3秒しか撮れなかった。

しかも、その後は魔力がチャージされるまで十数分のインターバルが必要だった。

46億年前になると0.1秒程度しか動画は撮れず、ほぼ静止画1枚といった感じだ。


試験運用だったので、2,3時間での動作確認のはずが、得られる過去の映像が劇的で、その日のNASAの職員は夢中になってしまい、徹夜で映像化を行っていた。

翌日それがバレて、当日の責任者はこっぴどく叱られたが。


この日を境に、予知魔法宇宙学と呼ばれる新たな宇宙研究分野が追加された。


◇◇◇


一方、同時に実用化された地震予知の装置も日米で同時に実動作確認が実施された。

試験運用での動作確認で、1年程度の期間で地震発生の有無を確認された。米国カリフォルニアではこれから1年以内に大きな地震は発生しないことが分かったが、日本の東南海地震の確認の為に愛知県に設置された装置では、一ヶ月後に巨大地震が発生するという結果が出たのである。


再度検証が行われたが、結果は同じで、気象庁は1ヶ月後に紀伊半島を震源とする大規模な地震が発生することを正式に発表し、日本国内は大騒ぎになった。

紀伊半島から愛知県、静岡県に掛けて大きな被害が発生し、それほど大きくは無いが津波も発生することが予想された。


日本政府はMagic forecast社に緊急で試作機も含む地震予知装置の提供を打診し、Magic forecast社はこれを承諾し、技術者と共に、試作装置と量産が始まったばかりの装置も複数台を緊急に提供した。


日本政府と各自治体の動きは素早かった。元々この地域では地震の発生確率が高いことは分かっていたので準備は進められていたのと、メーティスからの日本政府と各自治体への助言も功を奏したのである。


一ヵ月しか準備期間が無かったため、倒壊が予想される建造物の補強工事は限定的にしかできなかったが、復旧のための資材や人員の事前準備、避難所の事前準備など、矢継ぎ早に実施された。


静岡県内にある原子力発電所は防潮堤は完成しており、現在は稼働中だったが、万が一のため急遽停止され、防潮堤を超えた海水が建屋内に侵入しないように土嚢を積み上げるなどの対応が実施された。


かき集めた予知装置は10台ほどだったが、24時間体制で危険と思われる個所を中心に地震時の被害の有無をチェックし、大きな被害が発生することが判明した場所では特急での補強工事が行われた。


そうこうするうちに、地震発生当日を迎えた。

その日大きな地震が予想される三重県と愛知県と静岡県は政府命令ですべての公共交通機関は朝から運行が停止された。各種学校や、一部インフラ関係以外の会社も操業停止とされた。

高速道路も全面的に通行止めとなった。


各自治体から住民に対し、地震発生30分前には家のブレーカーを落として指定された避難所に避難をする命令が出され、住民の多くはそれに従った。


多くの家屋の倒壊も予想されたので、全国からプレハブの仮設住宅が集められ、仮設置も完了していた。初めての魔法による地震予知とのことで、日本のマスコミはもちろん、全世界のマスコミも押しかけてきていた。


そして、ついに地震発生。


予想通りの時間に、予想通りの場所と規模で地震が発生。M8.0の規模で、最大震度が7という大地震となった。土砂崩れや家屋の倒壊も相次いだが、特に危険な場所では事前に避難していたので人的被害は最小限にとどめられた。


予知できなかった場合の被害は、死者が1万人を超えると予想されたが、事前の予知により、死者ゼロ、重軽傷者100名程度であり、人的被害は非常に軽微で済んだのである。


家屋の倒壊は20万に達したが、多くの家がブレーカーが落とされ、ガスの元栓も閉められていたし、地震発生と同時に電力も遮断され、都市ガスも事前に停められていたため、火災発生件数は非常に少なかった。


予知魔法により、比較的揺れの大きな余震まで予知していたため、余震情報も毎日出され、事前に揺れることが分かった市民は非常に落ち着いて復興を開始出来た。


前もって補修用の部材や機器が準備されており、被害の大きな場所も予知されていたため、ほとんど混乱もなく復興作業は驚くほどスムーズに進められたのである。


日本での地震予知の効果を目の当たりにした各国は先を争うように地震予知システムの導入を開始し、Magic forecast社はものすごい数の注残を抱え、工場は24時間操業体制となり、更に新工場もいくつか建設することになったのである。

ここまでで魔法の商業化のお話はおしまいです。(たぶん)

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