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122.エリクサー商用化計画

転移魔法普及、魔石ネックレス販売、宇宙事業、ストレージ普及と忙しい日々がずっと続いている。

出来るだけ他の人に仕事を回して楽をしようとしていたのだが、どの事業も世界規模での変革を伴うものであり、なんやかやと仕事が降って湧いてくる。


それでも、ようやく一区切りがつき、さやかと橋本さんとでリゾート地に旅行にでも行こうか、最近解禁された土星周遊ツアーにでも行こうか? などと計画をしていた。


そんな矢先、予知魔法が警告を発した。いや、危険を知らせる予知ではなさそうだが、これは何だろう? 一緒にいたさやかは何も感じないらしい。


色々考えを巡らせていた時、ビデオ通話の呼び出し音が鳴り響いた。ものすごく嫌な予感がする。

通話の空いてはMagic Storage社のハートマンCEOからだった。


パーティーかなにかのお誘い程度の連絡でありますように。

そう思いながら電話に出る。


「はい、井本です」


「おー、井本君、お久しぶり。ストレージの販売はおかげさまで非常に好調だよ」


「それはどうも。で、今日は何の御用でしょう?」


「いや、実は新しいビジネスに関して、相談があってね。今日明日で打ち合わせをしてもらえないかな?」


「えっと、新事業なんて間に合っているんですが」


「そう言わず頼むよ。事業の分野は薬だ。聞くところによると、どんな怪我でも直してしまう薬があるみたいじゃないか?」


あー、エリクサーかハイポーションの事を言っているんだな。でも何で知っているんだ?


「なんのことだか分からないんですが……」


「いやいや、信頼できる情報筋から聞いたんだが、フィリピンセブ島で手足が無い女の子を治したそうじゃないか? 日本でも意識不明のほとんど脳死状態の少年を治したって聞いているぞ」


くっそー、CIAだな? メーティスから以前CIA関係者が俺の身辺を探っているとの警告を受けたが、そこまで調べているとは、CIA恐るべし。


「はぁー、それに関しては事業化する気はないんですが」


前世ではエリクサーを巡って戦争まで起きたのだから、安易に世の中に出すわけにはいかないしな。


「待ってくれ。世の中には手足を失って不自由な暮らしをしている人が何万人もいるんだよ。そういう人を助けられるんだ。ぜひ協力して欲しい」


くっくそ。良心に訴えてきたか。無下にも断れないか?


「分かりました。ただ製品化するかどうかの判断はまだ未定ですからね。断る可能性も大きいですよ」


「おぉ!打ち合わせに出てくれるかね? では急だが2日後にホワイトハウスで会おう。ホワイトハウスの転移魔法陣の部屋は以前のままだから、そこに時間になったら転移してくれればいいよ。詳細はメーティスに知らせておく」


そう言うと一方的に通話は切られてしまった。

は? なんでホワイトハウス? Magic Storage社の会議室で良いじゃん? まあ移動が簡単なので良いけど。


俺は早速さやかと橋本さんとメーティスと相談した。


「……という訳だ。エリクサーに関しては誰にも言っていなかったんだが、いつの間にかバレてた。皆はどう思う?」


橋本さんが最初に口を開いた。


「私は例の教祖にめちゃくちゃにされた脳をエリクサーで救われたので、効果はよく分かるの。一般に普及させるのには賛成よ」


「しかしだ、前世ではエリクサーを巡って大規模な戦争も発生したことが有るんだぜ。この世界でも争いが起きる可能性はある」


さやかが意見を言う。


「でも戦争が起きたのはエリクサーの製造が非常に難しくて、世の中にほとんど出回らなかったからよ。豊富に出回っていれば戦争なんて発生しなかったはず。そしてこの世界の科学技術を使えばエリクサーの量産は難しくないわ」


「なるほど。確かにそうか」


『メーティス。エリクサーの量産は問題ないか?』


『製造工程と原材料を確認しましたが、量産に関しての問題はありません。比較的安価に大量に安定的な製造が可能です』


なるほど、たしかに前世では何十年かけても成功しなかったエリクサー製造だったが、この世界の材料と装置を使ったらすぐに完成出来たよな。


『それでエリクサーをこの世に出しても特に問題はないと思うか?』


『人類に貢献することはあっても、大きな弊害は出ないでしょう』


「さやかはどう思う?」


「私もこの世に出すべきだと思うわ。製造工程で魔力を注入する必要があるから、製造に関してはメーティスが必要になるので、密造の心配もないし」


「そうか。分かった。ではエリクサーは公開することにしよう」


「でもその前に製造方法とか、成分とかをガッチガチに特許で固めておきましょう。それと普通の怪我用にハイポーションも同時に製品化しましょう」


うーん、さすがはさやかだな。特許なんて考えもしなかった。


◇◇◇


2日後、ホワイトハウスへ転移魔法でさやかと橋本さんと共に移動した。

既にハートマン氏は部屋で待機しており、満面の笑みで俺たちを迎えてくれた。


「井本君、直接会うのは久しぶりだね。エリクサーの販売に関しては了解してもらえそうかね?」


「はい、そのつもりで条件をまとめてきました」


「おぉ! そうか。これで多くの人の役に立つことができる。紹介しよう。エリクサー製造・販売を手掛ける新会社設立を任せる予定の、アラン・J・ホームズ氏だ」


「ホームズです。NASAで主に宇宙医療関連の研究をしていました」


高身長の白人で、なかなかのイケメンだ。


「井本です。よろしく」


握手を交わしたときに、探知魔法で彼の心理を探ってみる。うん、特に悪意はなさそうだな。


『橋本さん、彼に邪な意識はないよな?』


『はい、大丈夫です』


乗り掛かった船だ。さっさと詳細を詰めてしまおう。

俺は言葉を続ける。


「これがエリクサーのサンプルです」


そういって、茶色の小瓶をストレージから取り出す。


「これがそうか? どのぐらいの効果があるんだ?」


「実は、手足の欠損が修復されることは分かっているのですが、それ以上は明確に確認できていません。私が知りうる情報では、視覚障害や聴覚障害の修復、やけど後の修復などはできるようです。ただ、文献の情報のみで未確認です。あと、細菌性やウィルス性の病気には効果がありません。癌への効果も期待できません」


そうなのだ。前世では100歳近く生きて、大賢者として宮廷内の魔法大臣まで務めた経験が有ったが、エリクサーの効果を見たことがない。それどころかエリクサーの実物すら見たことが無かった。すべて宮廷内の図書室での文献から知りえた知識のみだった。


「なるほど。製造工程は複雑かね? 材料は入手可能だろうか?」


「製造工程は比較的複雑ですが、自動化は可能かと思います。材料の入手もそれほど難しくはありません」


「実は、エリクサーの効果を直ぐに試してみたいんだが、いいだろうか?」


「良いですが、肢体の欠損者とか呼んでいるんですか?」


「ちょっと待っていてくれ」


ホームズ氏はそう言うとどこかへ携帯電話で連絡した。

ほどなくして橋本さんが念話で話しかけてきた。


『合衆国大統領が部屋に近づいてきています。誰かと一緒です』


ドアが開いて、大統領が大統領夫人らしい女性と部屋に入ってきた。車いすを押しながら白衣を着た医師らしき人物も後から入ってくる。車いすには顔や腕に包帯を巻かれた女性が乗っている。


部屋に居た人はさっと直立不動の姿勢になる。

つられて俺たちも姿勢を正す。


「大統領のデイビスだ。井本君とは久しぶりだね」


「大統領。お久しぶりです」


「こちらは私の妻のアンナと、娘のスーザンだ」


「アンナです。初めまして」


大統領夫人が挨拶をしてきた。車いすの娘は無言のままだ。


「実はエリクサーの情報を聞いてね。職権の乱用だとは重々承知しているんだが、娘のスーザンを助けやりたいんだ。娘に使わせてくれないか?」


うん、まあ気持ちは分かる。前世でも王族や貴族は職権を乱用して好き放題していたからな。それに比べりゃかわいいもんだ。


「ええ、大丈夫です。それより大統領の娘さんの様態はどうなんですか?」


娘に何があったのかはニュースで見て知っていた。テロに遭遇し、本来は大統領が狙われたのだが、間違って娘が乗った車が攻撃を受けてしまったのである。


トラックに突っ込まれた車は大きくつぶれ、さらには炎上してしまったが、娘は一命はとりとめたとニュースでは報道されていた。

しかし、娘の様態まではニュースでは報道されず、ここまでひどいとは思っていなかった。


「うむ、知っているとは思うがテロに遭遇してね。火が付いた車に閉じ込められ、全身やけどと両足と右手の切断、さらには両目が失明している。エリクサーで治るだろうか?」


「それはすべて怪我の内に入るので治るはずです。さっそく服用しますか?」


俺はそう言ってエリクサーの瓶を大統領に手渡す。


「ありがとう。感謝する」


「大きなけがをエリクサーで治すと、激しい空腹を感じるはずです。スーザンさんに食事の用意をお願いします。できるだけ消化の良い物が良いですね」


大統領が頷き、秘書と医師に向かって指示をする。

秘書は食事を準備に行くのだろう。部屋を出て行った。


医師は娘の包帯を取り始めた。包帯を取り除くと、酷い火傷の跡が露になった。

顔と左腕全体に火傷は広がっていた。

包帯を取り除いたのは、火傷の跡がどう変化するのかを見極めるためだろう。


医師がエリクサーの瓶にストローを差し込み、スーザンに飲み干すように促す。スーザンは無表情のまま、黙ってエリクサーを飲み干した。


橋本さんが念話で話しかけてくる。


『スーザンさんは、精神がかなり病んでいるようです。意識はあるのですが、はっきりしていません』


『そうか、これほどひどいけがを負ったんだ、当然かもな』


10秒ほどするとスーザンの身体に変化が現れた。白く濁っていた眼球がきれいな青色の瞳へと変化していく。本人も今まで真っ暗だった視界が急に開けてきたのを実感したのだろう、驚いた表情をしながらあちこち見回している。


顔と手のやけどの跡も、急激に消えていき、きれいな白い肌に変化していった。

最も大きな変化は膝から下が無かった両足と肘から先の無かった右腕が復活したことだった。

手足の復活には30秒ほどかかったが、完全に復活した後、スーザンは信じられないような表情で、手足を確認していた。右手の手のひらを握ったり開いたりしている。


大統領夫人はしばらく言葉も無くその様子を見ていたが、やがて娘が元の姿に戻った事実を認識したのだろう、涙をポロポロ流しながら、娘を抱きしめていた。

大統領もその二人を見て涙を流しながら妻と娘を抱きしめている。

部屋に居たハートマン氏とホームズ氏も、感動してもらい泣きしている。


医師は驚きの表情をしながらも冷静で、大統領家族が落ち着いたとことで、両目や手足、火傷の修復状態などをチェックしていった。医師が口を開く。


「とても信じられないですが、両目の失明は完全に治っています。手足も少し細いですが、完全に機能しているようです。火傷の後も完全に消えています。さらには、彼女に元々あった額の傷跡も消えています。後で精密検査をさせてください」


驚きと感動からようやく落ち着いた大統領が俺に突進してくる。


「井本殿、本当にありがとう。感謝してもしきれない」


感極まったからか、俺を抱きしめてくる。こんなおじさんにハグされてもうれしくないぞ。

大統領夫人も俺の所に駆け寄ってきて、お礼を言いながら、こちらも俺にハグしてきた。うん、大統領夫人は美人さんだからハグは許す。


そんなことを考えていたら、橋本さんがこちらをジト目で見てきた。

おいおい、心を読まないでくれ。


部屋の中が落ち着いてきたところで、スーザンの為の食事が運ばれてきた。比較的消化の良い物で、かなりの量だ。

スーザンがそれを見て目を輝かせる。


「あー、お腹がペコペコになってたの。嬉しい。直ぐに食べて良い?」


「これ、はしたないでしょ。隣の控室に行きましょう」


大統領夫人がそう言って、娘と共に別室へ移動していった。

大統領からは改めて礼を言われる。


「本当にありがとう。娘はテロに巻き込まれて一命はとりとめたが、身体はあのようになってしまい、何より心が死んでしまっていた。娘の声や笑顔を久しぶりに見ることができた。あらためて感謝する」


「いえ。礼には及びませんよ。喜んでいただけて良かったです」


「今日はこれから重要会議が目白押しなので、もう行かねばならないが、このお礼は後で必ずお返ししたい」


そう言い残して、大統領は秘書と共に部屋から出て行った。


橋本さんから念話が入る。


『スーザンさんの心ですが、死んだようだった状態からいきなり正常に戻ったみたいです。身体が治ったのだから心も明るくなるのは当然かもしれないですが、心の回復が急激すぎる気がします。エリクサーは心理面でも効果があるんでしょうか?』


『うむ、それに関しては前世でも聞いたことが無いな。ただ、以前橋本さんの脳を修復する時にエリクサーを使った時は、橋本さんの心は後遺症もなく正常に戻っていたので、心理的な治療効果もある可能性は高いな』


『そうですね。私の時の回復感覚と今のスーザンさんの心の変化を見る限り、心の病にも非常に効果がありそうです』


ふむ。世の中には深刻な心の病に悩まされている人も多いと聞くからな。そういう意味ではエリクサーの適用範囲は広いだろうな。


ホームズ氏が感動冷めやらない表情で話しかけてくる。


「井本君。エリクサーの効果をまさに確認できたよ。これは早急に実用化を進めるべきだ。直ぐにでも事業をスタートさせてくれ」


やっぱりそうなるよな。ようやく少しは忙しさが無くなってきたのに、また忙しくなりそうだな。

俺は覚悟を決めて、事前に作成しておいた事業化に関する提案書を取り出し、詳細を詰めることにした。


数時間の議論の後、まとまった内容は以下となった。


 ・エリクサーの製造方法や原材料などの情報は新会社に公開する。


 ・エリクサー1本辺りのライセンス料は100ドルとする。


 ・製造方法に関し、世界主要国に特許の申請を井本とさやかの連名で実施する。


 ・新会社の設立資金はi経済研究所が融資を行い、新会社の株式の49%の権利を

  有するものとする。


 ・エリクサーの製造に関しては、生産数量や流通はメーティス管理とする。


 ・エリクサーと同時に、ハイポーションの情報も公開するので、

  同時に製造販売をする。


製造途中段階で魔力注入が必要になるので、メーティスの管理は絶対必要だが、テロリストにエリクサーが利用されないように、流通にもメーティスを関与させたい。


これらで概ね了承され、新会社が設立されることとなった。


新会社の名称は、”Magic medhicine社”とすることに決まった。製造に関しては各国の主要製薬会社に委託する形のファブレスの形式にするらしい。


ただし、医薬品扱いとなるために、各国の認可を得る必要があり、量産までには数年は掛かりそうだとのこと。


まあ、後はホームズ氏とメーティスに丸投げだ。資本関係と特許関係はi経済研究所に丸投げしておこう。


◇◇◇


スーザン視点:


私は失意のどん底にいた。ニューヨークで暮らしていた時、大統領であるお父様が国連本部に来た時に、おねだりして大統領専用車に便乗させてもらったのが間違いだった。

大統領を国連本部に送り届けた後、私だけ専用車で帰ろうとしてそこでテロリストに襲われてしまった。


本当はお父様を狙ったらしいけど、被害を受けたのが私だったってわけ。大型トラックで突っ込まれ、さらには火炎放射器で車を焼かれてしまったみたい。その時はもう既に意識が無かったけど。


目を覚ました時は既に病院で治療が完了した後。真っ暗だったので電気を点けるようにお願いしたんだけど、実は私の目が見えなかったみたい。

起き上がろうとして初めて両足と右手が切断されていることに気が付いたわ。


両親はすぐに駆けつけてくれたけど、どうすることもできないし、私は泣きわめくしかできなかった。

当時付き合っていて結婚を約束していた彼氏も駆けつけてくれたけど、私の惨状を見たらがっかりしたみたいで、以後2度とお見舞いに来なくなっちゃった。

手足も視覚も婚約者も、私はすべてを失った。


病院を退院して自宅に戻っても何もする気にならなかった。部屋に引きこもってじっとしているしかなかった。

目が見えないので、昼なのか夜なのかも分からない。


ある時お父様に当ってしまった。


「なんで私がこんな目に合わないといけないの? すまないって謝るぐらいなら魔法でも使って元の身体に戻してよ」


お父様は黙って部屋から出て行ったが、まさか本当に魔法で治せないか調査していたって後から聞いた。


それからしばらくしたある日、お父様が部屋に来て、「お前を治療しに行くぞ」と言って私を連れ出した。


でも私の心は死んだままだった。ここまで壊れた私の身体を治すことなんてできるわけない。どうせ義手や義足が準備出来たとか、そんな所でしょ。

頭の片隅でぼんやりとそんなことを考えながら車で運ばれ、どこかの建物に到着した。


エリクサーがとうとか、娘に試してみて欲しいとか、何やら新薬でも試してみるのかしら? バカバカしい、目が治ったり、手足が生えてくる薬でもなければ私は救われないわ。

相変わらずカスミがかかったようなぼんやりとした意識の中で、医師が進めるままに薬を飲んだ。ちょっと苦みがある薬だったが、飲みにくいほどでは無かった。


飲み終わった瞬間に何かが変わったことが感じられた。まず身体中が熱くなったような感覚を感じ、ぼんやりしていた頭の中が急にクリアになった。


えっ? 何が起こったの? 次に今まで真っ暗だった視界が急に明るくなり、ぼんやりと周囲が見えるようになる。


えっ? 見える? なんで? 私が戸惑っていると、ぼんやりとした視界が急激にクリアになり、周囲がはっきり見えるようになる。あ、お父様。お母様。お二人の心配そうな顔がはっきり見える。


次に、今までずっとひりひり痛くて、痛みが無い部分は痒くてたまらなかった火傷した全身の皮膚から急に痛みも痒みも無くなった。

視覚の復活で戸惑っていたので、火傷の痛み痒みが無くなったのに気が付くのが少し遅れた。喉のあたりの火傷の引きつりの感覚も無くなった。


思わず顔を手で触ろうとして強い違和感を覚える。あれ? 右手がある?

そう、私は顔を触る時両手で触っていたのだ。いつ右手が戻ったの? 私は右手を見ながら手のひらを開いたり閉じたりしてみる。

右手の感覚は本物で、しばらく右手を眺めていたら、無いはずのものが視界に入った。

そう、私の両足だ。


膝から下が無かったはずの足が、元に戻っている? えっ? うそでしょ。足をバタバタさせてみると、ちゃんと動くし、感覚もある。義足じゃないことは直ぐに分かった。慌てて立ち上がろうとしたら、「まだ立つのは早いです」と横に居た医者から止められた。


ようやく私の身体が元に戻ったのだと分かり、涙があふれてきた。お母様も泣きながら私を抱きしめてくれ、お父様がさらに二人を抱きしめてくれた。そんな感動に浸っていたら、急に空腹感が襲ってきた。

お腹が空いたなんて感じを超えた、もう一週間も何も食べていなかったような猛烈な飢餓感だ。


ちょうどそこへお父様の秘書の方が食事を台車に乗せて部屋に入ってきた。美味しそうな食べ物に目が釘付けになってしまった。


「あー、お腹がペコペコになってたの。嬉しい。直ぐに食べて良い?」


「これ、はしたないでしょ。隣の控室に行きましょう」


お母様からたしなめられて、私はお母様と共に車いすで隣の室へ移動してそこで食事をとることにした。

もう我慢できずに次から次へと食事を口に運んだ。

今まで生きてきてここまでお腹が空いたことは無かったわね。

全ての食べ物がめちゃくちゃおいしく感じた。

お母様がドン引きする位たくさん食べちゃった。


食事しながら何があったのかをお母様から聞かせてもらった。エリクサーとかいう魔法の薬を飲ませてもらったらしい。非常に貴重な薬で、これから各種の治験を実施し、生産工場を確保して、数年後には実用化する見込みらしいけど、試作の薬をいただいたらしい。


以前私がお父様に向かって、「魔法でも使って元の身体に戻してよ」と放った言葉から思い立ち、CIAを使って調べてみたとのこと。、すると過去に世界の救世主の井本氏がフィリピンで手足が切断される怪我を負っていた少女を魔法で治したって情報を得たみたい。

自分が動くと立場上問題があるので、知り合いの実業家を使って井本氏に探りを入れたら、エリクサーというすごい薬がある事が分かったって。


魔法って本当にすごいわね。そしてこの魔法の薬を新会社を設立して事業化する? そんなの成功が約束されているような事業じゃないの。今までニューヨークでぼんやり暮らしていたけど、これで今後の目標が決まったわね。私は新会社に設立当初から参加しするわ。こんな素晴らしい薬は一刻も早く世の中に出さないといけないわ。


隣の部屋ではエリクサーの生みの親の井本氏と会社設立の打合せをしているとのこと。井本さんにお礼を言わなくっちゃ。そして設立する会社に参加させてもらおう。


私は決意も新たに、隣の部屋に向かった。

ついにエリクサーとハイポーションまで商用化しますね。

まだまだ色々な魔法が商用化されそうですね。

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