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118.ストレージ公開 その1

主人公視点:


魔石ネックレスの商業化はとりあえず成功し、i経済研究所と俺はさらに資産を増やしていった。

いや、これ以上資産を増やしてもぜんぜん使う暇がないんだが。


AIメーティス社とMagic-stone社が株を上場し、保有していた非公開株の価値は天文学的に大きくなった。

それだけでもとてつもない資産だったが、さらにメーティスのライセンス料と魔石のライセンス料が莫大な利益を定期的に運んできてくれる。


i経済研究所のCEO、鈴木達也氏とも相談し、節税対策で各種ベンチャー企業への融資を更に増やすことにした。

橋本さんの活躍で、怪しげな人物は確実に避けることができており、単なる節税のつもりが、更なる利益を生んでいたりする。


こんなに儲けなくてもいいんだが……、こちらの世界ではのんびり暮らそう、って目標はどこに行ったのか、毎日目が回るような忙しさだ。


ある日、Magic-stone社のCEOのレナード氏から、”折り入って相談がある”とのメッセージが来た。


”折り入って”、とわざわざ付け加えるのが嫌な予感しかない。

もうこれ以上忙しくしないで欲しい。


会って話したいとのことだったので、俺の方からサンフランシスコのMagic-stone社の本社ビルに移動する。むろんさやかと橋本さんも一緒だ。


Magic-stone社の本社ビルの一室にも魔方陣が描かれており、俺専用となっている。


早速、会議室に向かうと、レナード氏が知らない男性と一緒に待ち構えていた。

嫌な予感がマックス状態だ。


「やあ、井本君、久しぶりだね。おかげさまで事業は絶好調だよ」


「まあ知ってますよ。こちらに入ってくるライセンス料がとんでもないことになってますからね」


「こちらは、NASA時代の友人で、ロバート・J・ハートマン氏だ」


「初めまして、ハートマンです」


「初めまして」


「実はね。メーティスから先日耳寄りな話を聞いてね。ストレージ魔法の件なんだが」


メーティスめ、余計なことを言いやがって。Magic-stone社CEOのレナード氏には、ある程度未公開の魔法の情報は共有してもいいとしていたが、ストレージの情報を聞いて早速食いついてきたな。


メーティスには”世界がより良くなる方向なら、魔法に関する情報を共有しても良し”としていた自分を呪いたくなるわ。


「で、メーティスと魔石に続いて、ストレージもビジネス化すると大成功間違いなしだと思うんだが、どうだろう? もしやらせてくれるんなら、新会社を立上げて、ハートマン氏をCEOにしたいと考えているんだが」


あー、やっぱりその手のお話ね。

一応メーティスに聞いてみよう。


『メーティス。ストレージ魔法をこの世界に公開しても問題は無いか?』


『条件付きで大丈夫です』


『その条件とは?』


『兵器、特に核兵器の格納は禁止します』


『なるほど、テロリストがストレージに核爆弾を入れて、移動されたらたまったもんじゃないからな。制限は可能なのか?』


『ストレージの制御に関して、全て私の管理下に置いてもらえれば大丈夫です。制御装置に探知魔法の魔石を組み込んでもらえれば、箱に入っていても兵器かどうかは探知可能です』


『よし、ではその方向で行くか』


『魔布も同時に公開してください』


『なぜだ?』


『生き物を格納するのに魔布は必須ですが、ストレージ内では時間も止まるので、重症患者などを魔布に包んで一時的にストレージ内に収容するような事態も想定されます』


『なるほどね』


更に橋本さんにも確認した。


『橋本さん、彼らの考えで、怪しい部分は無いか?』


『大丈夫ですね。悪事に使うとか、我々をだましたり利用しようとする意志は無いです』


じゃ、ストレージも公開する方向で行くか。

また忙しくなるなぁ。

試したことは無いが、ストレージも魔石に専用の魔方陣を描けば実現できるだろう。


制御装置も転移魔法と同じ物が使える。物の出し入れをどうするかだな。何もない空間にストレージの口が開くと色々問題はありそうなので、シャッターだけが取り付けられた枠を準備し、シャッターを開けるとストレージが起動し、物の出し入れができるようにする方式がいいかな?


生物をストレージに入れるときに必須な魔布に関しても問題はないだろう。

シルクであれば魔布にできるので、シルクの布に魔力を注入するのも、魔石の量産ラインを少し改良すれば可能なはずだ。


俺はハートマン氏とベル氏に回答する。


「分かりました。検討はしますが。ストレージ魔法に関しては、魔方陣の検証がまだ完了していないので、一度持ち帰って1週間後に再度打合せしましょう」


「おぉ! 了解してくれたんだね。井本君ならきっと魔方陣とやらを編み出してくれると信じているよ」


「ご期待に添えるように頑張ります」


まあ、魔方陣を検証するのはさやかなんだがな。

これでまた忙しさに拍車がかかるな。勘弁してほしいな。魔法関係を公開するのはこれを最後にしよう。

メーティスにもよく言っておこう。


俺はこれ以上は忙しくならないようにしようと決意を固め、家に戻ったのだった。


自宅に戻り、さやかはメーティスと共にストレージ魔方陣について検討を開始した。

ストレージ魔方陣は前世でも存在しなかったが、今までの状況から全ての魔法に関しては魔方陣が存在すると予想された。


さやかは魔方陣開発ソフトを駆使しながらストレージ魔方陣を作り出すことに夢中になっている。

コンピューターを駆使しないと編み出せない魔方陣を、一部とはいえ前世の祖先どうやって手作業で作り出していたのだろう。

こうしてコンピュータでの魔方陣開発風景を見てみると不思議に思う。


「さやかは前世の祖先がどうやって転移魔法陣を編み出したと思う?」


「私も解析ソフトを作りながら不思議に思ったわ。これほど複雑な模様を、コンピュータ無しで作り出すのは不可能に近いと思う」


「だよな? ごくわずかに記述が違っていても魔法は発動できないんだから、試行錯誤するにしても膨大な時間がかかるはずだ。というか、魔方陣で魔法が発動できるなんて発想はできないだろう」


「私は遠い過去に、別の世界からの転移者がいたんだと思うわ。その世界では魔法は使えてなおかつ科学技術が発達したんだと思う」


「なるほど、そういう考えもあるな。ということは、例の呪いの人形の魔石製作者の小林忠治って人も、そのような世界からの転移者だったんだろうな」


「そうね。あ、解析結果が出たわね。うん、ストレージ魔法の魔方陣、完成したわ」


「えっ?もう?」


「このコンピュータは特注品のモンスタークラスの性能だからね。世界最高スピードクラスのプロセッサーが9個も搭載されているのよ」


何のことやらよくわからないが、要するに完成したってことだな。


『メーティス、魔方陣に問題は無いか?』


『問題ありません』


さやかは早速レーザー刻印機で魔石に魔方陣を描きこむ。

魔石の大きさを変えて、何個か作成して、ストレージとしての機能を確認する。


・パチンコ玉クラスの魔石の場合:

 ハンドバッククラスの搬入口サイズで、容量は大きめのスーツケースぐらい


・ピンポン玉クラスの魔石の場合:

 搬入口サイズはスーツケースほどの大きさで、容量は軽トラック1台分ぐらい。


・野球のボールクラスの魔石の場合:

 搬入口は2m×2mほどで、容量は大型トラック2台分ぐらい。


中に荷物を仕舞まったまま、魔石の魔力切れを起こした場合も検証するが、その場合は取り出せなくなるだけで、魔石が魔力を取り戻せば荷物は取り出せることも分かった。


俺とさやかは元々ストレージ魔法が使えるので、何もない空間からいきなり物を取り出すのに違和感は無かったが、一般人が使う場合は戸惑うだろう。

さやかの考案で、取り出し口とセットとなった形での製品化を提案することにした。


バックタイプ:

 ハンドバックや、バックパックに模した形で、容量はスーツケースクラス


スーツケースサイズ:

 スーツケースサイズの平らな板で、折り畳み可能。広げてドアを開ける形。

 容量は軽トラック1台ぐらい


大型サイズ:

 折り畳み式のドアの形式で、広げてドアを開けると大型トラック2台分の容量。


バック組み込みや、折り畳み式のドア方式など、なかなかいいアディアだと思うので、特許申請しておこう。


発明者は俺で、特許を書くが、めんどくさいので、メーティスに丸投げして、主要国の国際特許として登録申請してもらう。

原案だけメーティスに告げて、特許そのものもメーティスに書いてもらう。


3Dプリンターなども駆使して、試作品が完成したので、約束どおり一週間後にレナード氏とハートマン氏との第二回目の会議を行うことになった。

魔石ネックレスに続き、ストレージまで一般に公開するようですね。

世界経済へのインパクトも大きそうです。

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