表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/173

108.シェルター

さて、ヘスティアー計画と並行して進められていた避難用シェルター建設はどうだろうか?


アラスカに建設中のシェルターは比較的順調である。

True-Dark教団から押収したシェルターも有効利用することにして、こちらの拡張工事も開始された。

両方合わせて1万人規模の長期滞在型のシェルターは予定通り完了できそうだ。


並行して進められている、原子力潜水艦と原子力空母の改装も順調に推移している。

原子力潜水艦は主に災厄後の南北半球の連絡手段として活用予定で、武装を大幅に解除し、住居スペースと貨物スペースを広げた形となっている。

最初から大災厄対応専用に設計された原子力潜水艦も建造が開始されている。


航空母艦は住居用として改装されている。

飛行甲板は食用の植物を育てるための農園に、飛行機の格納甲板は住居室と貨物室に改装されている。

主に退役寸前や退役決定の空母が流用された。

航空母艦1隻で3000人を収容するシェルターとなる予定だ。


南極基地のシェルター化も比較的順調に推移している。

南極は、大災厄後に地球が太陽に一番近い近日点に位置しても、時期的に真冬になるため太陽は顔を出さない。


したがって、気温はさほど上がらないと予想され、大掛かりな高温対策の設備が不要と予想されており、主に防寒用のシェルターとなっている。

大災厄後でも南極の氷は解けないと予想されていおり、天然の食料貯蔵庫の役割も担うため、すでに大量の食糧が運び込まれている。


半面、南半球の各地へのシェルター建設は難航している。

ニュージーランドやオーストラリアなど、南半球の国が自ら建設しているシェルターは順調だが、北半球の国々へのシェルター用の土地提供が難航している。


土地提供側の国は、土地提供の見返りに、収容者の少なくとも半分は自国民とすることを要求。

他国民の割合を1,2割に抑えたいとする北半球の国々と対立し、交渉は難航していた。

それでも、時間が無いため、建設だけは先行で開始された。


ここまで大規模にシェルター建設を実行していると、報道管制にも限界が生じてきた。

各国政府は”巨大隕石の北半球への落下の可能性と対策”と説明している。


メーティスにも情報統制には協力してもらい、現時点では大災厄の真相は伏せることができている。

いつの時点で真相を明らかにすべきかはまだ結論が出ていない。


さらに大きな問題として、シェルターに収容する人をどのように選別するかが議論されていた。

シェルターがすべて完成したとしても、全世界での収容人員は50万人程度だろう。

それ以外に、鉱山を改造した気休め程度のシェルターを合わせても200万人程度だ。


それに対し、世界の人口は80億人。


人員選別は各国政府にゆだねられているが、長期間の生き残りの為にはどうしても多くの技術関係の専門家が必要になる。

どの様に選別しても必ず禍根は残り、暴動に発展するだろう。

多くの国の政府関係者は、未だに選別方法について結論を出せずにいた。


◇◇◇


ヘスティア―計画のロケット打ち上げから1年が経過した。

現時点では多くな問題もなくミカエルとルシファーの2機は予定通り宇宙空間を航行中である。

新型イオンエンジンも順調で、過去のすべての惑星探査機より高速で飛行中。

既に地球から15億Kmの距離を航行中だが、魔力を使った通信は順調で、ライムラグもゼロなのでヒューストンとのやり取りは非常にスムーズだ。


しかしながら、アバドン迎撃宇宙船が1セットだけでは失敗時に取り返しがつかないことになる。そこで宇宙船をもう一セット建造し打ち上げられることになっていた。


先日準備が整い、打ち上げが実施された。

打ち上げは成功し、宇宙船は”ミカエル2”と”ルシファー2”と命名された。


ミカエル2は1年遅れでの打ち上げにより、仮に迎撃が行われた場合、太陽との距離が20億Kmとなり、海王星、天王星、土星、木星などの外惑星の公転軌道に影響を及ぼす可能性が高い。

それが将来的に内惑星の軌道にも影響を及ぼす可能性もあるため、できる限りミカエルでの迎撃が望ましい。


さらには、アバドン観測専用宇宙望遠鏡も新たに打ち上げられて稼働を開始した。

これによりアバドンのさらなる精密な観測が可能となった。

もちろん、全ての宇宙望遠鏡もアバドンを逐一観測し、位置と速度をより精密に割り出そうとしている。


アバドンを迎え撃つミカエルの位置が少しでもずれるとミッションは失敗する。

ミカエルとルシファーの位置関係は厳密に調整する必要があり、観測精度の更なる向上が求められている。


アバドンの太陽系通過まであと1年となり、各地のシェルターも完成に近づきつつある。

人員の選別作業に入る必要があるが、ここにきてついにアバドンの情報が漏れだした。

各国政府は報道管制を強く敷いていたが、ついには公表せざるを得ない状態にまで追い込まれてきた。


第24回のスミソニアン計画会議の席上で、議長が、


「これ以上の情報管制は困難となりつつあります。1週間後にすべての情報を公開したいと思います」


会場内はざわついたが、誰の目にもすでに情報管制は困難だと思われていたので大きな反論は無かった。


「今まではアバドンを巨大隕石として、その落下による災厄としておりました。そしてミカエルとルシファーの2機は隕石の破壊、もしくは軌道を衝突コースからそらすためと説明してきましたが、その説明も限界に来ています。しかしながら、アバドンがクオーク星であること、太陽の質量の1.5倍である事を公表した場合、素人目にも現在の科学技術では対策は無いことは明白です」


議長は会場を見回してから言葉を続ける。


「パニックを抑えるためにはヘスティアー計画の詳細も公開する必要があります。それには人々に魔法の存在を公開しないと説明が付きません。しかし魔法の存在をどこまで信じてくれるかは未知数です。我々の内部でもまだ半信半疑の人が居るぐらいですからね」


「そこで、井本氏から転移魔法の全面公開を提案されています。これに関しては井本氏より説明してもらいます」


話が振られたので俺は発言を開始する。


「井本です。議長が言われるように魔法でアバドンを移動させるなどと言っても誰も信じてくれないでしょう。なので実際に転移魔法を商用化して一般化することを提案したいと思います」


会議に参加している人は一応に驚いた表情をしていた。

転移魔法は魔石などの特別な仕掛けが必要と考えられていたからだ。


実際には転移魔法は転移魔方陣が有れば発動できる。

今までは俺かさやかが魔力を使い魔方陣を作動させなければならなかったが、魔石を使った研究の結果、魔石を組み込んだ制御装置を準備すればメーティスによって転移魔方を動作させることができるようになったのだ。


俺は言葉を続ける。


「ヘスティアー計画のミカエルとルシファーは、魔石組み込みの制御システムで転移魔法が発動されます。それと同じことで地球上でも転移魔方陣を準備すれば制御システムにより転移魔法をいつでも発動可能です。これを一部の区間の商用移動用に一般に開放することにより、魔法について理解し、アバドンを太陽系を素通りさせることが可能だと信じてもらえると考えます」


俺の提案を受けて盛んに議論が続けられたが、概ね了承され、米国政府およぶ各国政府へアバドンに関する情報公開と、転移魔法の一般公開を通達することとなった。


その後有識者により詳細が詰められ、以下の事が決定された。


 ・アバドンに関しては最新情報を公開する。


 ・公開は世界同時とする。


 ・ヘスティアー計画についても公開する。


 ・魔法に関しては信じてもらえるように、転移魔方陣による転移を公開する。


 ・転移魔法は一般旅行客にも利用可能とし、まずはニューヨーク、

  ロスアンジェルス間を商用利用可能とする。


 ・この魔法が公開されると、航空各社の株価が暴落する可能性があるので、

  転移魔法の利用権利は当面航空各社が担うこととする。


 ・この魔法の軍事利用は当面認めない。


 ・管理は全てメーティスとし、軍事利用や不正利用と判断された場合は

  魔法発動は停止する。


他にも細かな取り決めが行われたが、これが21世紀の地球に初めて魔法が一般化さることが決まった瞬間だった。


もちろん、商業利用の場合は俺に転移魔法のライセンス料金が転がり込むようにした。


会議終了後直ぐに発表の草案の作成を開始するとともに、ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港の一角とロスアンジェルス国際空港の一角に、魔法による移動用の施設が設置された。


施設と言っても、50人ほどが同時に転移可能なサイズの魔方陣を描いた部屋を準備して、その部屋の出入り口にゲートを設けただけだ。

さらに魔法を発動させるための装置と魔法を発動するメーティスの為に、監視カメラとアナウンス用のスピーカをセットした程度で。1週間で準備は完了した。


1週間後のアバドンに関する情報公開の日。

この一週間で情報漏れはさらに進み、メーティスでも情報制御が難しくなったので完全に放置状態となっていた。


何もしなければあと1年ちょっとで人類は滅亡に瀕する事と、対応のためにシェルターを建設中との情報は流出しつつあったが、アバドンを迎撃するための宇宙船が飛行中である事は夢物語と思われたのか。あまり情報は拡散もされず、政府によるの嘘の情報だと捉えられていた。


各国政府による同時の情報公開との取り決めにより、一部国では深夜の発表となったが、米国時間の19時(日本時間朝の9時)に全世界で同時発表が行われた。


発表内容は以下である。


・アバドンという巨大質量の星が太陽系に接近中であること。


・アバドンは質量が太陽の1.5倍だが、直径は8Kmと極小のクオーク星で

 あること。


・地球衝突の恐れはないが、アバドンが太陽系を通過すると、地球の公転軌道が

 ずれる可能性がある事。


・公転軌道がずれた場合、深刻な気象変動が起きる事。


・気象変動を生き残るため、各地に大規模なシェルターを構築中であること。


・アバドンを排除するため、無人宇宙船が2隻飛行中であること。


・アバドンを排除するために、魔法を使うこと。その成功確率は高いこと。


・その魔法は瞬間移動を可能とする転移魔法であること。


・転移魔法の技術を応用して、ニューヨークとロスアンジェルス間に転移魔法の

 航路を開き、一般旅行客にも開放すること。


すでにかなりの情報はSNS等で拡散されていたが、政府の正式発表ということで各国国民はかなり動揺が走った。

太陽の質量の1.5倍ということで、地球に衝突しないまでも、深刻な影響がありそうなことは素人でも想像できた。

さらにはSNS上ではデマや流言飛語も飛び交い、人々の不安を増長させたのだった。


それ以上に人々を困惑と興奮させたのは、政府が公式の場で”魔法”という言葉を使ったことだった。

特に日本人の反応は大きく、大手SNSが一時パンクする事態に陥るぐらいだった。

主人公はついに魔法を一般に公開してしまいましたね。

パニックは防げるのでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ