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107.ロケット打ち上げ

教団の襲撃で、少し日程に遅れは生じたが、アバドン迎撃用ロケットの準備がすべて整い、後は発射を待つだけとなった。

宇宙船が大型になるため、ロケットは迎え撃つ側で2機、放出側で2機の4機が順次打ち上げられる。

ロケットには、さやかが考案した魔石の予知魔法の魔方陣を用いたアラームシステムが搭載されている。


これは、ロケット発射時に予知魔法を使い、魔石が破壊される事態、つまりはロケット発射の失敗を予知するためだ。


第一段目のロケットが発射台に設置され、燃料注入も完了。

カウントダウンが開始された段階で、早速さやかが組み込んだ予知魔法の装置からアラームが検出された。

メーティスに信号を詳細に確認してもらうと、打ち上げ直後に魔石が破壊されることが分かった。

つまりは打ち上げ失敗を意味する。


直ぐにカウントダウンをストップし、点検に入る。

原因はすぐに判明した。

第二段ロケットの燃料供給用パイプのバルブが閉じられていたのだ。

本来なら発射直前に開いておくべきなのだが、何故か閉じられており、その部分のセンサーのケーブルも外されていてアラームが発生しないようになっていた。


防犯カメラで確認したところ、一人の作業員の仕業だと判明。

まだ構内に残っていた作業員が警備員により拘束された。


それを聞いた俺たちは、橋本さんをつれて作業員が拘束されている部屋に向かう。

作業員は手足を拘束されて椅子に座っていたが、俺たちが入っていくと睨みつけてきた。

俺はそんな態度は無視して奴の額に手を当てて、探知魔法で記憶を探る。


「こいつは例の教団のメンバーの生き残りみたいですね。教祖からロケットの発射を阻止するように命令されていたみたいです。あと、今回のバルブ以外は工作はしていないみたいですね」


それを聞いた関係者は胸を撫で下ろし、カウントダウンは再開された。

今度は予知魔法によるアラームは検出されず、カウントゼロでロケットは無事発射された。


しかし2日後には次のロケットの発射だ。

今回の事態を重く見たヘスティア―計画の上層部は、対応を取ることにした。

俺たちに相談されたので、橋本さんの協力で関係者全員の確認をすることになった。


その日の内に、作業員とオペレータを全員広場に集められた。

その場で警備隊長よりアナウンスをされる。


「本日、True-Dark教団の関係者がロケット発射の妨害工作を行った。この中で他にも教団関係者は居ないか? いたら今すぐ名乗り出て欲しい。今名乗り出てくれれば罪には問わない」


もちろんこんなことで教団関係者が名乗り出るとは思わない。

ここで橋本さんの読心術が本領を発揮する。


橋本さんによれば、動揺した場合の心は非常にわかりやすく、集団の中でも心の動揺がある人は特定しやすいらしい。

たとえで言うなら、静かに整列している大勢の中で、ひとり叫んでいる人がいたら直ぐに特定できるのと同じだとのこと。


橋本さんは早速数人の動揺している人を特定し、その人たちの心を詳細にて読みこむ。


「分かったわ。この男と、この女が教団関係者ね」


橋本さんは全体を映した映像画面を指さす。

それを確認した警備員が連絡を取り合いその二名を確保した。


このようなやり方はプライバシー侵害とも捉えられそうだが、地球の未来が掛かっている事態であり、米国大統領特別命令も出ており、一時的にプライバシー問題は棚上げされている。


こうして、不安要素は排除され、残りの3機のロケットも無事打ち上げに成功した。

打ち上げられた宇宙船は、地球軌道上で2つずつがドッキングし、イオンエンジンに点火。地球引力圏を離脱し、50億Kmの彼方を目指してそれぞれが飛行を開始した。


新型イオンエンジンは順調で、強力な原子力電池により電力を供給されて、加速しながら目的地を目指す。


それぞれの宇宙船は質量が5トンを超える。これは通常の惑星探査機の10倍はある。

その質量の多くは原子力電池とイオエンジンとその燃料で占められる。

50億Kmを2年で移動しなければならず、その為には強力な推進エンジンが必要なので仕方がない。


ドッキング後、オリハルコン製のパラボラアンテナを展開し、地球との魔力通信も無事確立された。

もちろん、今まで通り電波による通信システムも備えているが、距離が遠くなるにつれ電波の到達に時間がかかるため、メインの通信は魔力通信となっている。


宇宙船の名前は、双子の天使の名前を取って、アバドンを迎え撃つ側が”ミカエル”、転送先の側が”ルシファー”だ。


2機の宇宙船は、加速するだけでなく、位置を厳密に合わせなくてはならない。

その為、現在軌道上にあるすべての宇宙望遠鏡と、地上の主な天文台の望遠鏡がアバドンを監視し、厳密な位置合わせに協力している。


2機の宇宙船の制御装置は魔石水晶を組み込んだ高性能プロセッサーが稼働しており、人工知能が組み込まれている。

これもさやかが開発して組み込んだものだが、地球との通信で、詳細データのやり取りはもちろん、英語を使った音声でのやり取りも行われている。


打ち上げから10日後、ドッキングが成功し、魔力通信が確立した日、ヒューストンの管制室にミカエルからの通信が来る。

これは魔力による通信で。パサディナのオリハルコン製パラボラアンテナで送受信されている。


「地球のみなさん、こんにちわ。ミカエルです。現時点ですべて順調です。搭載されている光学望遠鏡でアバドンをとらえています。これから2年間、よろしくお願いします」


声の質は、天使をイメージした可愛い声となっており、声を初めて聴いた人はみな顔をほころばせた。


「こちらはヒューストンの管制室。感度は良好。こちらでも異常無しを確認している。2年間よろしくお願いする」


管制官は淡々と返信していた。


「こちらはルシファーです。私の方も順調です。皆さんよろしくお願いします」


もう一台のルシファーも順調で、同じくかわいい音声での通信が入る。


現時点ではミッションは順調に推移している。


俺たちも含め、関係者全員が胸をなでおろした。

ミッション完了までにはまだまだ不確定要素も多いが、ついにここまで来たのだ。

ついにアバドンを迎え撃つための宇宙船が打ち上げられました。

魔法と21世紀の科学技術の粋を集めた宇宙船が融合し、太陽系の彼方へ飛行を開始しました。

まだまだ波乱はありそうですが、ミッションは成功するでしょうか?

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