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105.真闇教団掃討作戦

この攻撃で、危うくロケット本体が破壊されるところだった。

既にロケットに搭載される宇宙船本体も運び込まれており、これらに着弾したら計画は大幅に遅れ、地球を救うことができなくなってしまう所だった。


今回はロケット本体に被害はなかったが、打ち上げ日程が遅延し、作業員の犠牲者まで出てしまった。

事態を重く見た米国政府とヘスティア計画本部は教団を徹底的につぶすことを決意。

教団を第一級クラスのテロリスト集団と位置づけ、最優先で摘発することとなった。


調査が進むにつれ、隠されていた教団の秘密が判明してきた。

ボストン郊外の本拠地とシェルターは表向きで、大災厄時用のシェルターはアラスカに設置されていた。


表向きは普通の企業を装った炭鉱開発となっていたが、実際には本格的なシェルターで、5000人ぐらい収容可能なかなり大規模な物だった。

ここまで調査できたのはメーティスの力によるところも多かった。

シェルター建設に必要な各種建築機械や資材の物流や、教団の資金の流れを確認し、総合的に判断した結果だった。


色々判明した情報をまとめると、


 ・教団は巨大シェルターをアラスカに建設中であること。


 ・富裕層の少なからぬ人が、教団にかなりの寄付をしている。


 ・教団に敵対する人物が入院したり、不可思議な死を遂げることが多い。


 ・過去、この教祖を脱税の容疑で捜査したが、捜査員の多くが精神疾患に

  なり、捜査が中断していた。


 ・シェルターの建設資材は、スミソニアン計画の準備した資材から流出

  している。


これらの情報を入手し、俺はさやかと橋本さんとメーティスで話し合った。


「教祖は間違いなく超能力で人の心を操っているな」


「私もそう思う。しかも邪魔な人間は脳を破壊して廃人にするか抹殺しているわね」


「橋本さんが受けたダメージからすると、かなりの遠距離からでもそれは可能だな」


「そうね。ただし、こちらから心を読みにいかない限り、そこまで遠距離での攻撃はできないと思う」


「さやか、俺たちの魔力で奴に対抗できるか?」


「分からないわね。身体強化で教祖からの攻撃を防ぐことは難しいんじゃないかと思う」


「なぜそう思う?」


「身体強化の魔法の継続は脳からの指令よね? その脳が少しでも影響を受けると身体強化魔法が乱れる、そうするとますます脳へのダメージが大きくなり、魔法の維持が困難になり、その繰り返しでこちらが一方的にダメージを負うことになりそうね。特に先制攻撃を加えられたらひとたまりもないわね」


「急な攻撃を防ぐ方法はないかな?」


「やはり魔石ペンダントによる物理結界しかないと思うの」


「そうだよな たしかに奴からは魔力は感じられなかったし、魔石ペンダントによる自動物理結界は効果はあるはずだよな。もう少し試してみよう」


俺はそう言うと、物理結界の魔法陣を描いたペンダントを取り出すと首に掛ける。

まだ物理結界は作動させていない。


「橋本さん、僕の心は読める?」


「はい、読めます」


俺は魔力を込めて、物理結界を作動させた。


「これならどう? まだ俺の心は読める?」


「あ、読めません。急に読めなくなりました」


『それではこの念話は聞こえる?』


俺は念話で話しかけてみる。


『念話は聞こえます』


よし、少なくとも魔石ペンダントの物理結界でも読心術系の超能力は防ぐことができるな。

しかし脳への攻撃も防ぐことができるかは不透明だ。


俺は結界を張ったまま、橋本さんに近づいてみる。

物理結界の効力のテストなので、ハグするんじゃないかってぐらい近づいてみる。

橋本さんは俺が近づくと顔が真っ赤になる。

そして橋本さんは目の前にいる俺の心が読めないことで、かなり違和感があるらしく、戸惑っている。


「なんか目の前の人の心が読もうとしても読めないなんて変な感じです」


橋本さんはそう言うと居心地悪そうにもじもじしている。


なるほど、人の心が読めないなんて経験は初めてなんだな。

俺はちょっとからかってみることにした。


「もじもじしている橋本さんも可愛いよね」


橋本さんはさらに顔が真っ赤になり、もじもじも激しくなった。

あ、悪いことしちゃったかな。もうからかうのはやめにしよう。


「ここまで近づいても心が読めないのだから、魔石ペンダントによる物理結界でも遠距離からの脳の破壊やコントロールの超能力も防げそうだな。作戦を練るぞ」


俺たちは教団掃討作戦にも参加することになると思うので、作戦を練ることにした。


◇◇◇


1週間後、アラスカにある教団のシェルターを襲撃するチームが米軍の特殊部隊を中心に組織された。

もちろん俺たちも参加する。

輸送機でアラスカの米軍基地に移動後、ヘリで教団のシェルター近くに移動。

シェルター入り口から1Km離れた荒れ地に作戦本部を設ける。


ボストンの本拠地を攻撃した際に使用した睡眠ガスによる攻撃は、外気取入れ口が見つからないため使えないらしい。


俺は突撃部隊と一緒に最前線に乗り込むことにした。

橋本さんは安全を考慮し、作戦本部にさやかと共に残ることになった。


正午より突撃が開始された。

まずは入り口の強固なドアを爆破し、特殊部隊がなだれ込む。

内側からマシンガンにより発砲があったが、すぐに鎮圧された。


入り口を確保後、スピーカーで投降を呼びかける。


「周囲は完全に包囲されている。降伏する者は両手を上げて出てきなさい。今なら罪には問わない」


30分ほどの呼びかけで、100人ほどの人が両手を上げて投降してきた。

主に作業員で、雇われて構内で作業していた人たちだ。

何名かは教団関係者だったので、彼らからは事情を聴く。


俺も投降してきた教団関係者の一人に触れて、探知魔法で記憶を探らせてもらった。

うん、教祖はこのシェルターの一番奥の方に潜んでいるみたいだな。

俺はこの情報を攻撃部隊の隊長に告げる。


俺はシェルター内に攻略部隊と共に入る。

近くの部屋に入ると、パソコンが置かれていたので、電源を入れて、魔石USBを接続する。


この操作により、メーティスがシェルター内のネットワークに侵入することができるようになった。

教祖がCIAやFBIを警戒しているため、シェルター内のネットワークは外部から完全に切り離されており、電力も施設内部で自家発電で供給していたため、今まではメーティスが侵入できなかったのだ。


メーティスにより施設内部の情報が一挙に判明した。

施設の構造図も入手できたので突撃部隊と情報を共有した。


さらには施設内の各所に設けられている監視カメラにも接続できたので、その情報も共有しておく。


一般の教団信者は他の兵士に任せ、俺はシェルターの奥の教団幹部と教祖の潜むエリアに向かう。

特殊部隊の少数精鋭の兵士3名が一緒についてくる。


彼らには、”教祖は超能力者で、人の心を操ることができる”と伝え、十分注意するように言っておく。


『メーティス。教祖の位置は分かるか?』


『教祖のいる部屋のおおよその位置は分かりますが、その部屋には監視カメラが無いので確実に居るかは不明です』


あちらこちらから銃撃戦の音がする。


『メーティス、状況は?』


『シェルター内の教団メンバーの一部は武装していたようで、味方兵と打ち合いとなっているようです。しかしこちらが有利に展開しています』


そりゃ武装しているとはいえ素人の教団側と、正規の米軍兵じゃ奴らに勝ち目はないよな。


よし、では後は教祖だけだな。

再度やつを取り逃がすとめんどくさいので、必ず仕留めてやる。


俺はストレージからピッピを取り出して、偵察に行ってもらうことにした。

メーティスの案内でピッピを先行させると、教祖が潜んでいる部屋の前に護衛と思われる教団員が2名銃を持って立っていた。


教祖様がここに居るって宣伝している様なもんだな。

俺はこのことを一緒に来ている味方兵に伝える。


「そこの角を曲がった先に教祖の部屋がある。武装した兵が2名立っているぞ」


「分かった。俺たちが制圧するから待っていてくれ」


味方兵が角を曲がると、銃撃の音が響き渡る。

狭い空間での銃撃なので、音が響く。

耳栓してきて正解だったな。


ピッピからの視界共有で戦闘の様子をうかがう。

教祖の部屋の護衛兵は、味方の兵によってあっという間に倒されたようだ。

しかしその後とんでもないことが起きた。


味方兵の一人が頭を抱えてしゃがみ込む。次の瞬間その兵は立ち上がると、他の2名の味方兵に向かって銃撃したのだ。

不意を突かれた味方兵は銃撃を受けて倒れる。


しまった。教祖により心が乗っ取られたな。

心の乗っ取りにはもっと時間がかかるかと勝手に思い込んでいて油断した。


俺はピッピを通じて操られている兵に電撃魔法を喰らわせる。

兵が倒れたことを確認し、物理結界を張ってから角を曲がり兵たちに駆け寄る。


打たれた兵は防弾ジャケットを着ていたことで、幸い死んではいないようだった。

俺はハイポーションを取り出すと、撃たれた兵に飲ませる。


「大丈夫ですか?」


「あ、ああ。あれ?撃たれたはずなのに痛くないな?」


「傷は治しましたから、もう大丈夫です」


「いったい何があったんだ?」


「そこに倒れている彼が、教祖により心を支配され操られたようです」


「なんだって? そんなことができるのか? 教祖はバケモンだな」


「危険なので倒れている兵を連れて少し下がってください。後は俺が何とかします」


「わ、分かった」


彼らにも物理結界の魔石ペンダントを渡しておけばよかったな。失敗した。

彼らが後方に避難したことを確認すると、俺は身体強化魔法を発動し、ドアを思いっきり蹴り飛ばす。


かなり頑丈なドアだったが、強化魔法Lv10の俺の身体強化には対抗できなかったようだ。

ドアは大きく凹んだ状態で、部屋の中に吹き飛ばされる。


部屋の中には初老の爺さんが豪華な椅子に座ってこちらをにらみつけていた。

椅子の両側には若く美しい女性が立っており、こちらに銃を向けている。


どう見ても銃の扱いには慣れていないみたいなので、彼女らは護衛ではなく、教祖の愛人だな。

それにしても趣味の悪い部屋だな。

高そうだがゴテゴテとした趣味の悪い調度品で埋め尽くされ、でかい金庫が奥に設置されている。

どうせ金と金塊でも入っているんだろうな。


女性たちが銃を発射する前に電撃魔法で二人とも気絶させる。


「お前が教祖のダニエルか?」


「貴様がイモトとかいうやつか? なぜお前の心が読めないのだ?」


「そんなこと答える義理は無いな。それより俺の質問に答えろ。お前が教祖か?」


「お前、わしと組まないか?わしと組めば世界制覇も夢ではないぞ。金も十分ある」


は? 馬鹿かこいつ? 世界なんて制覇しても面白くも何にもないだろ。忙しくなるだけだわ。(まあ今も十分忙しいが)

それにしても、こいつは全然俺の質問に答えないな。


『メーティス、こいつが教祖で間違いないな?』


『教団の啓蒙ビデオや集会のビデオに映っていた教祖と同一人物です』


奴は俺の心が読めないので焦っているようだ。

橋本さんもそうだったが、普段は人の心を自由に読めるのに、目の前に心が読めない人が居るのは相当な違和感があるらしい。


教祖は背後にあるでかい金庫をあわただしく開けると中を見せた。

案の定、大量の金と金塊が詰め込んである。


「どうだ? これだけの金があれば何でもできるぞ。仲間になれ」


教祖はそう言いながら俺に対し超能力を放ってきたっぽい。

物理結界で防いでいたが、頭が殴られたような衝撃を感じ、一瞬意識が遠くなる。

なるほど、これが脳を破壊する攻撃だな。

これだけ強力な物理結界を張っていても衝撃を受けるんだから、結界無しじゃ危なかったな。

しかも魔石ペンダントが予知魔法により自動的に物理結界を展開していて、2重の結界を張っていてもこの衝撃だ。


あー、もうめんどくさいな。

奴の能力はだいたい理解したので会話でのやり取りはもういいや。

俺は電撃魔法で奴を気絶させる。


意外とあっけないな。

ゲームでのボスキャラをイメージしていたので、あっけなく気絶してしまったのに拍子抜けした。

とりあえず、探知魔法で奴の記憶を調査する。


あー、出てくる出てくる、奴の悪事のオンパレード。

殺人も数知れず。

銃やナイフで殺しているんではないが。部下に指示して殺させただけでなく、超能力を使って心を操り自殺させたり、脳を破壊して廃人にしたり。

前世ででもここまでひどい奴は見たことないな。

当然有罪だ。


奴は危険だ。

このまま当局に引き渡してもいいが、拘束されても意識を取り戻したら誰かの心を乗っ取って直ぐに脱獄してしまう可能性が高い。

新たな犠牲者が出る可能性もある。

よし、こちらで始末しますか。


俺は手早く魔布で教祖を包むと、ストレージに放り込んでおいた。


「おーい、もう大丈夫。入ってきていいですよ」


俺は一緒に来た味方兵に声を掛ける。

一人は気絶したままだったので彼を引きずりながら2人が部屋に入ってきた。


「ここの女性二人は心を操られていた可能性が高いので、精神科に入院させてください」


「分かりました。教祖はどこですか?」


「俺の方で始末しました」


「それはどういう意味でしょうか? 遺体はどこですか?」


「詳しくは聞かないでください」


二人の兵士は顔を見合わせていたが、隊長より、”彼の指示には絶対に逆らわないように”と言明されていたので、それ以上は追及されなかった。


「今本部と連絡を取りました。直ぐに応援が到着します。シェルター内は概ね制圧した模様です」


その言葉通り、直ぐに数名の隊員が担架を持って到着し、意識の無い3名を連れて運んで行った。

俺も一緒に本部に引き上げた。

これでひと段落だな。

教団は意外とあっさり壊滅しましたね。

主人公がとらえた教祖はどうなるんでしょうか?

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