プロローグ
俺は井本史郎、平凡な中学3年生の男子生徒だ。
漫画やアニメが大好きで、特に異世界召喚ものが好きだ。
小学校の低学年のころは本気で魔法が使えると思っていた。
一生懸命魔法を発動しようとしたが、当然使えるわけもなかった。
しかし、テレビで紹介されていた、空の雲に向かい集中して気を放つと雲が消えていく、という現象? というか魔法? を真似してやってみたら見事に狙った雲を消すことができた。
ついに魔法が出来たと大喜びで、友達にも披露し、大いに受けた。
しかし、やがて動画サイトに似たようなトリックが紹介されていたことを友達が見つけた(すぐに消える雲は特徴があり、それを選んで気を送るそぶりを見せれば、やがて雲が自然に消えるので、あたかも魔法で雲を消しているように見える)。
それを見た友人達から「魔法じゃないじゃん、インチキじゃん」と馬鹿にされ、以後『こいつは嘘つきだ』と、クラスで孤立し、いじめも受けてしまうようになってしまった。
中学に入学しても孤立といじめは続き、3年の今ではクラス中から無視されたり、一部不良生徒から酷いいじめを受けるまでに至ってしまった。
「雲を消す魔法はインチキじゃない、動画サイトで紹介されているような消える雲だけでなく、小さければどんな雲でも消せる」
と、いくら説明しても誰も聞く耳を持ってくれなかった。
それどころか、やっかいな不良3人組に目を付けられ、金を恐喝されるまでにエスカレートされてしまった。
もうすぐ夏休みとなる7月の中旬のある日の放課後も、俺は不良の三人に難癖をつけられていた。
「おい、夏休みに俺たち金が要るんだ、明日一人1万円の合計3万円持って来いよ」
「そ、そんな、前に貸したお金も返してもらってないのに」
「あ? 俺らに逆らうの? また殴られたいの? いいから明日持ってこい」
ここ最近しょっちゅう同じようなことが起こる。
周りを見回しても誰も助けてくれようとしない、史郎はクラスで孤立状態だった。
もちろん担任の教師にはいじめについて(特にお金を巻き上げられた件について)相談したのだが、教師の回答は、
「生徒間のお金の貸し借りは禁止されているので気を付けるように」
と言うだけだった。そしてそれ以上何もしてくれなかった。
絶望感に打ちひしがれていると、一学期の終業式を明日に控えた日、さらなる悲劇が史郎に襲い掛かる。
その日、先生の一人が教室に駆け込んでくると、俺に向かい、
「井本君、直ぐに市民病院に行って。ご両親が事故に遭われたんですって」
と言ってきた。
そこから先はよく覚えていない。
どうやって病院へ行ったのか、どうやって父方の実家に連絡したのか、どうやって葬儀が執り行われたのか……。
父も母も交通事故で帰らぬ人となってしまった。
これからどうすればいいんだろう。
この小説を読んでいただきありがとうございます。
毎日投稿していく予定です。
励みになりますので、面白いと思った方、ブックマーク、ポイントをしていただけると嬉しいです。