グダグダの決着でも良いと思うんだ
『キシャ!』
「なんの!」
俺はヨルムから吐かれた毒に〖何でも防ぐばんのうのたて〗一号を構える。盾は一瞬で俺を隠すように広がり、毒を全て受け止めた。グッジョブ! かなりの強酸なのだろう、煙が上がり盾の表面が腐食している。危なかった、喰らったら火傷では済まなかったかもしれない。
「くそっ、迷ってる場合じゃない! ルビィ、10秒間だけ持ちこたえてくれ!」
「いきなり何ですの? こっちも手が話せないんですが……」
「ごめん! こっちの話。もう少ししたらヘルプに行くから頑張ってね!」
独り言に気づかれて慌ててしまった。だって憧れの台詞を言ってみたかったんだもん。
俺は咄嗟に片足で膝まづくと、空中でコンソールを開く。〖ふつうの剣〗を〖聖剣エクスカリバー〗にチェンジ! 背中に背負う様にポップアップしたエクスカリバーの柄を握り、上段の構えをとった。どこからともなく、光の粒がエクスカリバーに集まってくる。目を閉じながら大きく息を吸った俺は、カッと目を開きスキルを放つのだった!
「エクスッ! カリバァアアアア!!」
全身全霊で振り下ろした切先から、黄金色の衝撃波がヨルムに向かって伸びて行く。このゲーム〖ユグドラシルファンタジー・オンライン〗では、一定の条件をクリアするとオリジナルスキルを作成できる。俺は自作したスキルの効果に満足していた。決して某アーサー王さんの必殺技を丸パクリした訳ではない。念のため…… とてもよく似ているけど…… 違うよ…… ほんとだってば……
何はともあれ、俺の超必殺スキルを喰らってズタボロになったヨルムだったが……
『キシャー……』
「……ハハッ」
いい顔してやがる。流石伝説級の神の一柱。ならばもう手加減は無しだ。とっておきの切り札を出すしかない。
「ほんとうは使いたくなかったんだがな……」
『キシャ?』
気配の変わった俺にヨルムも気づいたのだろう。
「よく聞け! この技をまともに喰らえば、流石のお前も間違いなく死ぬ! だからよけろ! いいな よけるんだぞ!」
『キシャアア!』
ヨルムが『さあ来い!』と言わんばかりの気合いを見せた。無理しやがって…… 認めよう、お前は最高の好敵手だよ。
「はぁあああああ!!」
最高の好敵手ならば最高の技で応えるしかない! 俺はありったけの気合いを込めて、右手を大きく突き出した!!
「喰らえっ! ヘビ〇ンノォォオ!」
『キシャアアアア!?』
まともに薬を被ったヨルムの断末魔が響く! 馬鹿野郎…… だから避けろって言ったのに。 やっぱりヘビ避けにはヘビノ〇ノだ!
苦しんで藻掻くヨルムが左へ逃げようとする。すると岩陰に隠れていた罠が発動! 謎のスプレーがヨルムにプシャ〜!
『ギジャー!!!』
めちゃくちゃウネウネして苦しむヨルム。気持ち悪…… おっとごめん。
「ごめん、毒ヘビ〇ェット片付けてなかった」
誰にでもミスはある。都合よく罠を片付け忘れる事だって、ましてはその罠がベストな角度で仕掛けられていたって、現場ではよくあるヒューマンエラーなのだ。こういう些細な事から労災につながるのでKYトレーニングは大事である。ご安全に。
よろよろとヨルムが反対側に逃げようとする。だいぶやられたな…… しかしここでも悲劇がっ!
『キシャ!? ッシャー!!』
「すまないっ! ヘビブ〇ックを片付け忘れてた」
言ったそばから再度のミス。社会人にあってはならない。ダブルチェックはどうした? 現場の責任者出てこい! あ、俺か。
『キシャシャ、シャッシャー、シャシャシャシャーー!』
「おい! 待て!」
制止を振り切り、ヨルムはたまらず転移魔法を使い逃げていった。『これで買ったと思うなよ』的なことを言ってた。たぶん。
「なんかぐだぐだな決着だったけど、まぁいいか。ルビィ、今行くぞぉ」
少し離れた所に構えるルビィの元へ、オレは駆け出すのだった。




