首謀者来ちゃったよ
うん、知ってた。お前らが結構チョロいってこと。先代のギルマスから引き継ぐ時にも、口を酸っぱくして言われたものだ。
────「マッケンジー、甘やかしちゃ駄目よ。彼奴ら、こっちの我慢の限界を見定めて好き勝手するから」────
「そうは言われましても…… ね」
特に舐められているわけでもないし、邪険にされてもいない。手前味噌だがギルメンとは良好な関係を築けてると思う。
「毎度の事ですからねぇ」
彼等に悪気はないのだ。ただちょっとだけ自由なのだ。
「俺、今攻められたら終わるぞ」
このイベントの勝利条件は、一定時間を耐えきるか神々を全滅させること。もちろん敗北の条件も有って、ギルマスが倒されるか戦闘不能になると終了だ。
「とは言っても、簡単には殺られるつもりはないんだけど」
巨大な白いワンコ? 狼? あっ、フェンリルか。勢いよく飛びかかってきたから、思わずクレイモアをぶっ刺してしまった。許せ。
『おうおう、ひでぇ事してくれるじゃねぇか』
声のした方へ振り向くと、肩まで白髪を伸ばし、胡散臭いちょび髭を生やした男が…… どう見てもアースガルズの神だな。宙に浮いてるし、ちょっと身体がでかい。しかもこの不快なニタニタした笑みを浮かべる様な奴は、奴で間違いないだろう。
「いきなり酷いとは失礼だな」
フェンリ犬の首根っこを掴んで、ブスッ! と刺してパリン! と散った。キャッチ・アンド・リリースをしたまでだ。
『フェンリルは俺の子供だったんだがな』
「知るか。獣が居たら刺す、当たり前だ」
『人の子よ、お前鬼畜と呼ばれてないか?』
ビンゴ。とゆうかヤバい! 言ってるそばから攻めて来たじゃねーか。しかも今回の主犯格・元凶の神ロキ直々のご登場ときたもんだ。俺一人では荷が重そうだなぁ。ロキの後ろにウネウネしてるの、アレってヨルムンガンドってヤツだろ。めちゃくちゃ睨まれてるし。
『弟のこいつも怒ってるぞ。仇を取りたくて仕方がないそうだ』
嘘つけ!その蛇畜生は目をギラギラさせてるじゃねぇか! どぉ〜 見たって捕食者の目だ。
『だがしかし!』
「なんだ?」
『我々は争いを好まん。ヨルムの奴もそれは重々承知でな、謝罪してくれれば水に流すと言っている』
「ふっ、騙されるかよっ!」
そんな見え透いた嘘を信じるおめでたい奴なんているかよ。どうせ油断したところをパックりといくん………… あの蛇野郎、なんて綺麗な目をしてやがる。さっき迄の殺気ムンムンしてたのが嘘のようだ。つぶらな瞳で愛くるしい…… ヨルムンガンドが曰く『ボクラハ、ミンナイキテイル』……そうだよな、オケラだってカエルだってヨルムンガンドだって生きてるんだもんな。そのチロチロした舌も可愛くて仕方がない、ゆ〜っくり顎を開いて自慢の歯を見せてくれるのか? そうか、ありがとう………… ってぇ!?
ズドッ!!
「ふぬぉおお!!?」
ゆっくりとヨルムンガンドが俺の真上に来たところで、足元に真っ赤なロングソードが勢いよく突き刺さった。慌てて後ろに回避した俺は、一瞬で我に返る。刹那、ヨルムンガンドの口がバクりと閉まる!
「危ねぇじゃねぇかっ!!」
『ハイ、トリックスタァ〜♪』
ロキがニタニタしながら両手を突き出し肩をすくめる。まるでダ〇ョウ倶楽部だ。ヨルムンガンドも嫌らしい目付きでロキの真似しているようだ。この親子、がっぺむかつく!
「ぶっ〇す」
俺はロキ達と睨み合いながら、轟々と燃える真っ赤なロングソードを一瞥した。そして軽く頭痛を覚えつつ、ひとつ溜息をついた。
「居るんだろ? 出てこいよ!」
空に向かって声を張り上げる。こんな物騒なもん投げる奴は彼奴しかいねぇ。
すると一拍置いて、美しい声で高笑いが響き渡った。
「オーッホッホッホ! わたくし参上ですわっ!」
見上げると真っ赤なドレスを着た美しい女性が、空を飛ぶグリフォンの上に立っていた。