お前らほんと自由だな……
「なんと言うか…… カオスだな」
「そうね」
このロキの悪戯というイベントは、ゲームのジャンルで言えばタワーディフェンスと呼ばれるものだ。ユグファンに登録されているギルドは、それぞれのギルドホームの周りに分け隔てなくアースガルズの神々が攻め込んで来ているはずだ。各ギルマス達はギルドメンバーをホームの周囲に配置させて、防衛戦を戦っているであろう。街の中心にホームがあるギルドは、市街地を巻き込んでの大乱戦になってしまう。NPC達にとっては物凄く大迷惑なことこの上ないだろう。
そしてそれはうちのギルドも同様で、街を派手に壊しながら防衛線は幾つかに分かれていた。
ギルドの前に陣取る俺の周りには、護衛役としてドノバンと重戦士部隊がいる…… いや、居た。(過去形)
他に、いつも勝手に寄ってくるアリーシャ、俺の考えはそっちのけで居なくなる、斥候役のクミンなどが固めている。
クミンは…… へんじがない。ただのチプタプのようだ……
トップがあのザマなので、他の斥候メンバーが困っているようだ。仕方がないので他の部隊のフォローへ回ってもらう。
SHIORIの率いるヴァルキリーの遊撃部隊は、相性の悪い本家本元のヴァルキリー達にプチッと潰されて復活待ちだ。
「あれはヴァルキリーじゃなくて、〖ワルキューレ〗よ」
「あっ、ほんとだ!?」
どうやら今迄勘違いしていた様だが、アースガルズのヴァルキリー達はワルキューレと呼ばれるらしい。アリーシャに指摘されてステータスを確認しなければ分からなかった。
そのヴァルキリー改めワルキューレ達は、ギルガメッシュ率いる重騎馬隊が抑えている。
そういえば巨大なグングニルの槍を投げられて、壊滅状態だったバリスタ隊は? あっ!? あいつら! あ〜 あ〜 あ〜 あ〜
オーディンに戦車を壊されて激怒したバリスタ隊が、手元に残っていた銛を手投げしてる。方やオーディンは何本も銛が刺さってるのに、強引にジャイアントスイングを始めた! ロープを掴むギルメン達はグルン!グルン!と振り回されている。
「なんかあれはアレで楽しそうだな……」
「はぁ〜 何をやってるのかしら」
本人達は真剣そのものなんだろうが、傍から見るとなんとも間の抜けた光景だ。その近くで、神トールとパンツレスリングをしているドノバン達が《《色んな意味で》》花を添えているので尚更かもしれない。
「…………」
思わず脱力してしまうが、気を取り直して……
ウィッチ隊はアリーシャの指揮の下、一時は押されていた戦線を押し戻す事に成功していた。
のだが……
『うふふ』
「うわっ、いつの間に!?」
いきなり背後から声が聞こえて振り向くと、びっくりする程の美女が宙に浮いていた。この申し訳程度に纏った布の下から主張するナイスバディは、美と戦いの女神・フレイヤだ。
俺達はすぐにフレイヤから距離を取り、アリーシャと率いるウィッチ隊を背に庇いながら相対した。
『ネェ、ソコノアナタ』
「おっ、俺?」
フレイヤに話しかけられた。
『イイオトコ ジャナイ。キニイッタワ』
あっという間に距離を詰められて、フレイヤが俺の身体にカラダを絡めてくる。
「ええっ、こっ、困りますぅ」
余りに男前なフレイヤに、思わず乙女ムーブになってしまった。
『カラダハ、ショウジキヨォ……』
すっっごく! 柔らかい双丘の感触と魅惑的な肢体が密着してきて、何の匂いかは解らないが兎に角良い匂いが鼻腔をくすぐった。
「ちょっと!」
意識がぼんやりとしてきたその瞬間、アリーシャが俺とフレイヤの間に割って入った。