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ギルド会議




〖ユグドラシルファンタジー・オンライン〗


 略して”YFO”。世界同時リリースされたこのゲームは数多あるVRMMOの中では未だ未だマイナーだ。日本ではコアなファンの間で〖ユグファン〗の名で親しまれている。


 このゲームは配信当初から、北欧神話にならって九つの世界が展開されるというのが売りのひとつとされてきた。だが現在公開されているのは人間たちの住む世界【ミッドガルズ】のみで、早期の新世界の実装が待たれている。


 ここはミッドガルズの南端にある都市【ソフィア】。水と緑が豊かな大理石で造られた街だ。その中心部に俺達〖|Green crossグリーンクロス〗のギルドホームが有る。

 俺はその中のミーティングルーム内に於いて、集まったギルドメンバーに事の経緯と今後について話をしていた。



「事情はわかったわ。つまり会社を辞めるからギルマスも返上したい、そういうわけね」

「ああ、そういうことだ」


 このギルドは会社の有志が集まってできたものだ。そのコミュニティを去るのだから、ギルマス返上及びギルド脱退は当然の成り行きだろう。


劫火(ごうか)のアリーシャ〗こと華藤 有紗は、長テーブルに両肘をついて手を組んだ。某司令官のポーズで俺を一瞥して。


「ひとつ聞いても?」

「何だ?」

「結納の日取りはどうする?」

「結構です。そんな予定はありません」

「いけず」


 これが彼女の平常運転だ。別に俺が大企業の跡取りになったからではないし、人間関係を円滑にする為の話術だと思っている。


「既に退職届と婚姻届は準備してあるというのに」

「華藤先輩、冗談は程々に……」


 アリーシャのアバターを纏った華藤先輩がにこりと笑う。あれっ……?


「華藤さん、玉の輿狙いよ!」

「んまー! 卑しか〜」

「んまー! ホントよね! んまー!」


 外野が五月蝿い。男女関係なく”近所のおば様方”化したギルメンが大量発生。


「俺と華藤先輩とは──」

「違うでしょ? あ・り・さ!」

「……華藤先輩とは何も関係はありません。強いてゆうなら、時々昼飯をたかられるくらいです」

「ほらそこ! 皆さん聞きました? 有紗さんと賢二くんの強い絆を!」

「それは絆とは言わん!」


 右手に座るドノバンが、向かいに座るアリーシャをぴしゃりと戒めてくれた。


「部長、私に厳しくないですかぁ〜」

「マッケンジーが困ってるだろう。それに今はユグファンの中だということを忘れるな。俺は葵木(あおき) 殿満(とのみつ)ではなく重戦士ドノバンだ、そうだろうアリーシャ?」


 ドノバンとアリーシャの間で火花がバチバチしている。そんな時……


「遅れて済まない」

「ギルガメッシュか、おつかれ」

「お疲れ様です」

「おっつー」

「「「「「「お疲れ様です!」」」」」」


 遅れて入ってきた白金の騎士は、マントを翻し兜を小脇に抱えて歩いて来た。


「みんな固いよ。マッケンジーみたいに砕けていいって何時も言ってるじゃない。ドノバン、君もだよ」

「申し訳ありません、常務。………… じゃなかったギルガメッシュ、どうも慣れなくてな」


 栗色ロン毛の美男子のアバター〖白金(プラチナム)のギルガメッシュ〗こと義疏院(ぎそいん) 網守(あみもり)がドノバンの隣に座った。

 彼はこの会社の社長の息子で常務取締役としての顔を持つと同時に、ユグファン内では〖|Green crossグリーンクロス〗の重騎馬隊の隊長でもある。


「聞いたよマッケンジー、君が会社を去るのは残念だ。それはこの際いいとして、このギルドを去る必要はないんじゃないか?」


 ギルガメッシュは柔和な笑みを浮かべながら、俺に向かってウインクした。












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