エピローグ(バッドエンド)
踏み荒らされた花。汚された墓碑。
一人の男は墓碑を綺麗に掃除していく。そして、墓碑の周りの踏みつけられた草花を新しい物に植え替えていく。
「やっぱ、メッツアには白い花が似合うよな」
ハミルは墓碑の周りに花の絨毯を作るとホッと息を吐いた。
「ランス様は来年隣国の王女殿下と婚姻する。まあ、盛大にパレードするみたいだから、一緒に見ようぜ」
メッツアが好きだったお菓子を取り出すと花を踏まないように器用に墓碑に歩み寄り一つは供え、もう一つは自身の口にほおりこむ。
「やっぱ俺にはこれは甘すぎるわ」
そう呟くハミルは今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「ナニエル様は頑張っている、らしい。婚約者も決まったって。エタサはナニエル様の側仕えを辞しようとしたけどナニエル様が許さなかった。メッツアに償うのに協力しろ。てさ」
風がサーと吹き抜ける。
「野盗の討伐でさー、暫く来れない。土産買ってくるから楽しみにしておけよ」
墓碑に手を振るとハミルは名残惜しそうにその場を去っていく。
ハミルの姿が完全に見えなくなるとランスが姿を表した。
「マメなヤツ」
呆れた顔でハミルが消えた方向を見つめて墓碑に向かいあった。
「メッツア、一言、言って欲しかった。そうしたら、私もハミルも……」
白い花束を墓碑の前に供えるとランスも元来た道を戻って行った。
「あっ、今日は二人が来ていたんだ」
エタサを連れたナニエルは綺麗になっている墓碑の前で来るのが遅かったことを悔やんだ。
「姉上、つぎは私が一番だから」
「手伝います」
力強く呟くナニエルにエタサも相槌を打つ。メッツアの墓碑を綺麗にするのは自分達の役目なのだから。
悪女メッツアの墓碑はいつも汚く荒らされていた。けれどもいつも誰かが綺麗に掃除して花が飾られていた。いつしか誰も悪女メッツアの墓碑を荒らさなくなり白い花が咲き乱れるようになっていった。
お読みいただきありがとうございます。
3日に間に合いませんでした。
もう一話は4日になります。それで完結です。
誤字脱字報告や感想もありがとうございます。
申し訳ありません。目は通していますが、そこまでに至っておりません。
 




