南麗奈②
「面白かったね」
「うん」
シアター2の扉を出てポップコーンのごみを捨てながら答えた。
「ほんと麗奈は、感情の起伏が小さいよね」
これはよく言われていることだ。私としては最大限感情を出しているつもりではあるのだけれど。
「え、そう?」
「そうだよ。もっとなんか、あるでしょ。あのシーンが良かったよね! とか」
「うん。まあそうだね。でも映画の面白さで興奮冷めやらぬ状態だよ?」
「言わないよ。興奮している人は、興奮冷めやらぬ状態だって」
花蓮が笑いながら言う。
「そうかな?」
「そうだよ。やっぱ面白な麗奈」
「ウケは狙ってないけど……」
不本意だ。不本意極まりない。
「ご飯食べる?」
花蓮が言う。
「うん」
「それじゃあロッテリアに行こう」
新所沢で映画を観たら、ロッテリアに行く流れが出来上がっている。
というよりここぐらいでしかロッテリアは食べられない気がする。
映画館から移動する。デパートの最上階にシネパークはあるので、エスカレーターで下りていくと途中の服屋さんなんかが目に入ってしまい、「これ可愛いね」なんて言って寄り道をした。
でもお買い物は食事をしてからとなった。
結局いつもお買い物は後回しにしてしまう。
でも後回しにしないと余計なものまで買ってしまうかもしれないから、それはそれでいいのかもしれない。
いや、後回しにしたところで予定にないものを買ってしまうことはよくあることだから、あまり変わりないかもしれない。
ロッテリアに着くと、ちょうど席が空いていて、二人ともエビバーガーを買って腰を掛けた。
久しぶりに食べるぷりぷりのエビの食感に思わず笑みがこぼれる。
「そういえば、麗奈、彼とはどうなったの?」
エビバーガーで幸せを感じている私に花蓮が不意に言った。
「別れたよ」
私はためらうことなく答える。
「え!? 別れたの!? 何でよ! あこがれてた人とせっかく付き合えたのに!? もしかして来年は受験勉強で忙しくなるから?」
「そういうわけじゃないよ。なんて言うか、やっぱり違ったんだ」
「そうなの? まあ麗奈の決めたことだからね……。でも詳しく聞かせてよ」
「うん。わかった」
花蓮にはずっと相談してお付き合いまできたけれど、別れたことは言っていなかった。
でも花蓮はそういうことを責めたりはしない。
だからちゃんと話そうと思う。
この決断は合っているのか、間違っているのか、全然わからないし、答えなんてないけれど、唯一言えることは、私の心は晴れている、ということ。
清々しいほどに澄みきっている。
一つ深呼吸をして、私は話しを始めた。
「あのね、私ね……」
私のあこがれの人――幸助さん。だからこそ、私は彼と別れたのだ。