南麗奈①
新所沢はパルコがあるから楽しい。
かわいい服や美味しいものがたくさんある。
それに映画館まであるのだから完璧だ。
夏休みの終盤、今日はそんな新所沢で花蓮と待ち合わせをしていた。
今日は細田守監督最新作を一緒に観に行くのだ。
私たちは時をかける少女をバイブルと言ってもいいほど今でも大好きで、たまにどちらかの家でDVDを流して上映会をするほどだ。
そんな細田監督の最新作なのだから心が弾むに決まっている。
うん、なんだか清々しい。気持ちがリセットされたというか、もやが晴れたというか。
それには実は他にも理由がある。
「麗奈、久しぶり」
後ろから声をかけられ振り返る。
「久しぶり。花蓮は変わらず元気そうだね」
ほぼ毎日メッセージのやりとりはしていたので、実際は久しぶりの感じはしない。
花蓮はほんの少し顔を観なかっただけで、すっかりかわいくきれいになっている。
女の子はきっかけがあればすぐに女性になるのだろう。
だとしたら私もそうだといいな。
「ここに来るの久しぶりだね」
きれいになった花蓮が言う。
「そうだね。四月にコナン君を観に来た以来だね」
「うん。それって来てる方なのかな?」
「たしかに。西東京市に住んでる人からしたら来てる方なんじゃない?」
「そうだよね。私、新所沢って結構好きだけどな」
「私も」
しゃべりながらシネパークを目指す。
シネパークは新所沢にある映画館の名前だ。
パルコの中に入っている。
小さい頃はすごい怖い公園のことかと思っていた。
死ねパーク。
それを花蓮に話したら、「私もそう思っていた」と言っていたので、もしかしたらみんなそう思っていたのかもしれない。
パルコでお買い物も楽しみたいけれど、それは映画の後にすることになっている。
まずは映画で気持ちを上げてから、お買い物ということだ。
映画館に着くと、すぐさま券売機でお目当てのチケットを買って、売店へ。
映画にポップコーンは必須だ。これがないと映画を観る意味はないと言ってもいい。
私は断然キャラメルポップコーンだけれど、花蓮はバターしょうゆを選んでいた。
上映時間をしっかり調べての待ち合わせだったので、すぐに開場する。
席を間違えないように番号を確認して腰を下ろす。
二人並んでポップコーンを食べながら、ノーモア映画泥棒のロボットダンスを観て本編が始まるのを待っていた。