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矢崎花蓮②

「よかったじゃん。でも花蓮の決めたことなら、どちらにしても応援するよ」



 麗奈の言葉がちくっと刺さる。



「あ、ありがとう。だからちょっと私も予定が合わなくなるかもしれないな」


「そうなんだ……」



 自分で言っておいて、麗奈の返事に少し寂しくなる。



「ま、まあ私も小柳君と毎日会うわけじゃないから大丈夫だけど」


「うん。よかった」



 安堵の表情を浮かべたあと、にこっと笑う麗奈。


 罪悪感が私を襲う。さっきまで鼻についていた麗奈の態度ももう気にならないくらい。


 なんか取り返しのつかないことを言ってしまったような気がした。



「わ、私の話はここまでにして、映画の話。場所は新所沢のシネパークでいいでしょ?」


「うん。いいよ」



 今年の四月にコナン君を麗奈と二人で観に行ったところだ。あれは旋律の楽譜だった。プッシュホンのシーンは名シーンだった。



「じゃあ日にちは二十八日でどう?」


「十日後だね。うん、いいよ」


「それで決定ね」


「うん」



 二人でケータイに予定を書き込む。


 麗奈の持っているケータイには佐井さんの連絡先が入っているのだろうか。



「それにしてもおめでとう。花蓮」



 たぶん私が小柳君と付き合うことを心から祝福しくれているのだろう。



「あ、ありがとう」



 さっきは勢いで付き合おうと思っていると言ってしまったけれど、本当にそれでよかったのか疑問が生まれてくる。


 でも言ってしまった手前、今さらやっぱやめるとは言いにくい。後戻りできない状況を作ってしまった。



「花蓮に彼氏か。なんだか遠くに行っちゃったなぁ」

 はあ、とため息をついて麗奈が言う。


「麗奈だって彼がいるじゃん」


「彼って……。佐井さんは彼ではないよ。それにほら、私は叶わぬ恋だから」


「そんなことないでしょ。知らない間に近づいていたみたいだし。佐井さんから佐井君に変わってたじゃん?」


「あ、それ気が付いてたの?」


「当たり前じゃん。すぐに分かったよ」



 うつむいて「はずかしい」という麗奈。この仕草はかわいい。



「うん、そう。思い切ってそう呼んでいいか聞いてみたの」


「すごい頑張ってるじゃん。じゃあ次は下の名前で呼ばないとね」


「それはハードル高いなぁ」


「頑張れ」


「じゃあ花蓮も小柳君のこと下の名前で呼ばないとね」

 麗奈は言う。



 好き同士でのお付き合いだと思っているからだろう。


 胸が痛い。頭が痛い。



「ま、まあそんなことはどうでもいいから、今日は何して遊ぼうか」


「何しようか」



 映画の予定を決めた私たちは「何をしようか」といいながら、だらだらと何もせずに過ごしていた。

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