坂浜恵美②
ふれあいどーりの終わりのところのファミリーマートで花火を買った。
三人なので、三千円のを割り勘して買った。
公園に向かう途中で涼子に「あとは頑張りなよ」といわれたけれど、それどころじゃなかった。
「覚えてる? ここがゴリラ公園だよ」
佐井君が公園に着くなり言った。
思い出した。この公園だ。
私が迷子になって泣いていたところ、佐井君に助けてもらったあの思い出の公園。
「あ、ここなんだ」
「長峰さん、知ってるの?」
「え、あ、うん。恵美から聞いたよ」
「そうなんだ」
「うん、話したの」
涼子が口を滑らせてしまったような顔をしていたので、肯定した。別にそれは隠しておかなくてもいいと思ったから。
それにそんなことで涼子に腹を立てる立場にない。
「もうゴリラの遊具はないんだけどね」
佐井君がそう言って公園を進んでいく。
一歩一歩が懐かしい。記憶のピースがはまる感じがした。
私たちの他に小さな子供たちを連れた二家族くらいが花火を楽しんでいた。
佐井君が「こんばんわ」と言うと、小さな子供とその親も「こんばんわ」と挨拶をした。
邪魔にならないように離れた場所で買ってきた花火を広げる。
「あ、火種がないや」
佐井君が言う。
「たしかに」
「ここで佐井君が何のためらいもなくライターを出したら驚いてたかも」
涼子がふざけて言う。
「おいおい、たばこは吸わないよ」
佐井君も笑顔になる。
「うん、吸うイメージない」
この機会を逃すまいと、私も参加する。
和やかなムードになった後、ろうそくを持った佐井君が「もらってくる」と言って先客の家族に火をもらいに行った。
「恵美、佐井君との夏休みの予定立てちゃいな」
佐井君が離れている隙に軍師からの指示が出た。
「わ、わかった」
「あとは名前で呼び合うこと」
「えぇ!? やること多すぎない?」
「いっぺんにやっちゃえば大丈夫だよ」
「わ、わかったよ……」
佐井君が戻ってきてしまったので、そういうしかなかった。
「おかえり。ありがとう」
涼子は何事もなかったかのように、さっきと同じテンションに戻って言う。
「ありがとう、佐井君」
私も涼子に続く。
佐井君はろうを垂らしてその上にろうそくを立てた。
なるほど、そうやって安定させるのか。
私だったら砂の山を作ってぶっ挿しちゃうなと思った。
「よし、これでオッケー。それじゃあ始めようか」
私たちは好き好きに選んだ手持ち花火に火をつけた。