エピローグ~矢崎花蓮~
結局、私は小柳君と付き合うことになった。
麗奈と一緒にメールを送った。
あんなことを言ってしまった手前、後戻りできなくなってしまったから。
小柳君はその日のうちに会いたいと言って、私の家に来た。
「二人とも、おめでそう」
麗奈は私たちを祝福してくれた。
なんか悪い気はしなかった。
いつもヘラヘラしている小柳君が、まじめな顔して「好きだ」と改めて告白してくれたし、照れ笑いしながら「よろしくな」と言ってくれたところも、なんかいいなって思えた。
「下の名前で呼び合いなよ」
悪ノリした麗奈が言った。
「やめてよ」
私は抵抗したけれど、小柳君はまんざらでもなかったみたいで「よろしく、花蓮」と言ってきた。
私も仕方なく「よろしく、貴裕」と言い返した。
付き合えたことを確認した小柳く……貴裕は「じゃあ今度デートしような」と言って帰っていった。
私は「うん」と小さい声で返事をしたけれど、聞こえたかどうかはわからなかった。
「ちょっと茶化さないでよ」
貴裕が帰った後、麗奈に大きい声でさっきの悪ノリを責めた。
「ごめんごめん」
「麗奈も佐井君を下の名前で呼ぶんだよ」
責めたように言ってはいるけれど、全然怒ってはいない。
それは麗奈も伝わっていたようで、「だって幸せそうだったんだもん」と笑って言った。
でもその笑顔には影が見えた気がした。
たぶん、佐井君ことを思い出しているのだろう。
花火の日に佐井君の周りに佐井君の同級生と思われる女の子たちが多くいた。
いくら麗奈がかわいい女子だからって、簡単に適う相手ではないだろう。
でも勉強を教えてもらうことになったと言っていた。急接近する可能性もある。
麗奈は今自分が報われていない状態なのに、私たちを祝福してくれた。
優しくていい奴だな、まったく。これだから麗奈は大好きだ。
私は麗奈が佐井君をこのまま好きでいたいと言っても、佐井君を忘れたいと言っても、他の人を好きなっても応援するつもりだ。全力で協力するつもりだ。
私たちはこれからも毎年一緒にコナンを観に行くことを約束するほど仲が良いのだ。
麗奈は私にとって貴裕よりずっと大切な人だ。




