古敷谷史夏②
悲しいこと宿題はしっかりと出された。
というより、他の生徒と変わりなく、ちゃんと宿題が用意されていたようだ。
気分としては落ち込んでいるけれど、転校生という新しい刺激に興奮しているクラスメイトと一緒に帰っていると、そんな顔はしていられない。
仲良くしてくれている絵梨ちゃんは自転車、知佳ちゃんは電車が逆方面ということで、駅からは一人になる。
今日は終業式でしばらく二人とは会えなくなる。
絵梨ちゃんと知佳ちゃんはいままでは二人でいたらしい。そこに私を迎え入れてくれた。
だけど弊害もあって、二人は二人以外のクラスメイトを受け入れられない性格のようで、私が他の子と話すのを嫌がるように見えた。
だから二人以外とはほとんど友達になれなかった。
「それじゃあ夏休みに連絡するね」
駅まで送ってくれた絵梨ちゃんが明るく言う。
「うん」
「バイバーイ」
私が返事をすると颯爽と自転車で走っていく。
改札を抜けると知佳ちゃんが「じゃあね」と言って手を振ってくれたので、私も振り返す。
一人慣れない電車に乗って家を目指す。
清瀬駅は以前住んでいた神奈川の駅と同じようなもので、イメージしていた東京の駅とは違った。
でもそれがある意味安心感でもあった。
都会過ぎても委縮してしまう。
清瀬駅に着き、駅前のロータリーを歩いていると、佐井君の姿があった。
「あ、古敷谷さん」
「佐井君。そっか清瀬の人だったね」
清瀬に住んでいることは聞いていたけれど、佐井君と清瀬で会うのは初めてだった。
「そうそう」
席が隣ということもあり、絵梨ちゃんと知佳ちゃんを除けば一番話をしている人。
むしろあの二人よりも話やすい。だってあの二人はあの二人の世界があるんだもん。なかなか入りにくい。
「佐井君も南口なの?」
「そうだよ。三角山っていうバス停の近く」
「ふーん。私は押し出し橋っていうバス停の近くだよ」
「え、三角山は押し出し橋の次だよ」
「うそ、そうなの?」
気が付かなかったけれど、すごく近くに住んでいたようだ。
というのも私は駅までバスで移動しているけれど、佐井君は自転車で来ている。
だから会わなかったようだ。それに三日しか通学していないし。




