表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バケモノの自己満足  作者: 白犬 竜喜
1/1

わたしの神様な『バケモノ』様

「……ぅ、………あ」


 わたしは小さく呻く。 少しでも死から抗うように。


「お、ねぇ…ちゃ……」


 抱きしめるお姉ちゃんの腕の中で、声を出す。 だけど、お姉ちゃんも私と同じ…いや、もっと酷い。



 全身が焼かれていていながら、何とか息をしているだけ。 意識もない。



「うぅ………」


 お姉ちゃんが抱きしめて守ってくれたから、まだわたしはマシ。 だけどお姉ちゃんと比べたら、と言うだけ。

 わたしも全身が焼かれている。 体がボロボロで、熱いも寒いも分からない。 ひとつ解ることは、わたしもお姉ちゃんも…もうすぐ死んでしまう、ということ。


「おねぇ…ちゃ……」


 抱きしめられて焼かれたせいで、体がくっついてしまっている。 だからお姉ちゃんの顔も見えないし、周りの様子もあまり良く見えない。 でも周りがどうなっているか知っている。 ここが死体置き場であることを。


 

 そして、わたしたちの周りには死体だらけだということを。



 魔法によって、いろんな方法で殺されていた。 体を切り刻まれた死体、貫かれて穴だらけになった死体、所々潰された死体とか。 10人以上の人達が、 わたしたちが焼かれる前に、目の前で殺されていった。 殺された理由は、貴族という人間たちの………娯楽のため。

 わたしたちは奴隷として買われ、ここに連れてこられた。 殺されるために。

 ここに連れてこられた時点で、わたしたちは殺されるしかない。 そして他の奴隷たちが殺され、最後のわたしたちは、炎の魔法に焼かれた。 ただ、酷く焼かれて動かなくなって、死んだものと思われたんだろう。 偶然生きたまま、死体置き場に捨てられた。 だけども、わたしたちももうすぐに死ぬ。

 …それでも。


「い……き、て…」


 わたしは願う。 お姉ちゃんが生きることを。

 わたしは、お姉ちゃんと同じ村で生まれながら、1人だけ髪の色が違うだけで嫌われて、村の人達だけでなく両親からも酷い目に遭わされた。


 仲間意識が強い、なんて言われる獣人の村でありながら。


 わたしは犬人種(けんじんしゅ)の両親と、その村で生まれた。 だけど、お姉ちゃん以外の皆に嫌われていた。 

 なんでも私の毛の色は、不幸を引き寄せる忌み嫌われる色とされている。 そのせいで両親を含む村の皆から、たくさんの悪口を浴びせられたり、時には殴ったり蹴られたり、尻尾を踏みつけられたりもした。 ご飯も良くて余りもので、何日もまともにご飯をもらえない時すらあった。

 でも、お姉ちゃんは違った。 お姉ちゃんだけは優しくしてくれた。 

 悪口を言われた時は、優しく抱きしめてくれた。 暴力を振るわれたら、傷薬を使ってくれた。 夜中にこっそりとご飯も持ってきてくれた。 お姉ちゃんのおかげで、生きてこれた。

 そんなお姉ちゃんだけは、助かってほしい。 生きてほしい。


 だけど、現実はいつだってわたしを叩きのめす。


『グゥ…アァ…!』

「っ…」


 人間じゃない声が聞こえて、息を飲む。 かろうじて視線を向けると、そこに食屍鬼(グール)が3体近づいていた。 知性が低く、人間の姿に似た魔物。 骨をも噛み砕く歯と、肉を切るための鋭い爪を持ている。 死体を主に食べるとされるけど、そこに肉があれば生きていようと死んでいようと、なんでも食べる悪食(あくじき)だ。 死体を処分するために、貴族の人間が飼っているらしい。

 絶対に助からない。 解っていたはずなのに食屍鬼(グール)を目にして、そのことを叩きつけられてしまい、思わず目を(つむ)る。


「……かみ、さま」


 無駄だと解ってもいても、わたしは、神様に願う。


「どう、か……おねぇ、ちゃん…だけでも……」


 それでも死が、わたしたちに、近づく。


「たすけ、て……」


 食屍鬼(グール)の1体が、わたしたちに手を伸ばす。


「くだ、さいぃ…っ」


 そして、


≪ドカァッ!!≫


『グァア!?』

「ぇ…?」


 突然鈍い音がして目を開けると、食屍鬼(グール)が視界からいなくなっていた。 代わりに『それ』が背中を向けて立っていた。

 黒い髪に、茶色の服装、服の上に鉄で出来た胸当てを着けていて、そして腰に1本剣を下げている。 少なくとも貴族の人間や、その召使いではない。 むしろ村人に近い格好だ。


「かみ…さま……?」


 それでも、こんなわたしたちを助けてくれる存在なんて、神様以外に思いつかなかったから、思わずそう呟く。


『グアァァ…!』


 死体を食べる食屍鬼(グール)だが、敵が近くにいれば鋭い爪で攻撃して来る。 残りの2体の食屍鬼(グール)が、『それ』に襲い掛かる。 だけど、≪ドドガァッ!≫とまた音がすると、食屍鬼(グール)達が殴り飛ばされた。 状況が()み込めないわたしに、『それ』は振り向き声を出す。 


「悪いけど、俺は神様なんかじゃない」


 『それ』はわたしたちに近づきながら、答える。


「俺は転生者で、『バケモノ』だ」


 『それ』は…『バケモノ』は、わたしに手を伸ばす。


「だから、俺が君の願いを叶えることはない」


 『バケモノ』は、わたしの頭に手を置く。


「俺がするのは、俺のための、『自己満足』だ」


 そしてゆっくりと頭を撫でながら、安心させるような優しい声でわたしに()げる。


「君のお姉さんだけじゃなくて、君も助ける」

 初めまして。 作者の白犬竜喜しろいぬ たつきです。 初めて自分で小説を書き、『小説家になろう』に投稿を始めたので、色々とアンポンタンなミスをするかもしれませんが、生暖かい目で見て下されば幸いです。

 初めての投稿が、なかなかブラックな感じで始まりましたが、よくある異世界転生ものになる考えです。

 題名と同じように、自分も『自己満足』のまま話を書いていくつもりですので、それで良ければお付き合い頂けると嬉しいです^^。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ