うそつきザックのさがしもの
あるところに、動物たちがなかよく暮らす村がありました。
その村に住んでいるオオカミのザックは、みんなから「うそつき」と呼ばれていました。
ザックは本当は正直者で、うそをついたことなど一度もないのです。
それでも、「オオカミはうそをつく」という勝手なイメージから、村の動物たちはみな、ザックをうそつき呼ばわりするのでした。
ある夜、ザックはふしぎな夢を見ました。
その夢は、ザックが、この村の外れにある大きな山で、黄金のニワトリに出会うというものです。
黄金のニワトリの羽は、一枚一枚が黄金でできており、とてもキレイでした。
明くる日の夜も、その次の日の夜も、ザックは同じ夢を見ました。
くり返し同じ夢を見るうちに、ザックは、本当に村の外れに黄金のニワトリがいるのだと信じるようになりました。
ザックは、村の動物たちに、黄金のニワトリについて話しました。
すると、村の動物たちは、
「うそつきザック、またうそをつくのか」
とザックをバカにしました。
「違うもん。黄金のニワトリは本当にいるんだもん」
ザックは、村の外れの山に、黄金のニワトリを探しに行くことにしました。
季節は冬。
ただでさえ寒いのに、山の温度はさらに寒く、ザックが山を登れば登るほど、温度が下がっていきました。
オオカミは寒さに強い生き物ですが、ザックはあまりの寒さにこごえそうになりました。
しかし、ザックは、これ以上村の動物たちにうそつき呼ばわりされたくないので、黄金のニワトリを見つけるまでは帰らないと決めていました。
ついにザックは山の頂上に来ました。
そこでザックは、黄金のニワトリを見つけたのです。
黄金のニワトリは、夢で見たとおり、羽の一枚一枚が黄金でできていました。
黄金のニワトリは、山の頂上のすこし盛り上がったところで、じっと座っていました。
「黄金のニワトリさん、ぼくに羽を一枚分けてくれませんか?」
ザックは、黄金の羽を持ち帰れば、村の動物たちに黄金のニワトリの存在を証明できると考えていたのです。
「オオカミさん、私の羽をどうするつもりですか?」
「村の動物たちに見せるんです」
ザックは正直に答えました。
黄金のニワトリは、じっと座ったまま、首だけを大きく振りました。
「ダメです。オオカミさんに羽を渡すわけにはいきません」
「どうしてですか?」
黄金のニワトリはそーっと立ち上がりました。
黄金のニワトリが座ってた場所には、黄金のニワトリの卵がありました。
黄金のニワトリの卵は黄金でできており、キラキラと輝いており、宝石のようでした。
「もし、オオカミさんが私の存在を村の動物たちに話したら、村の動物たちがこの山の頂上まで来てしまいます。そして、私の大事な卵を持ち帰ってしまうかもしれません。私は誰にもじゃまされずにこの子を育てたいんです」
ザックには、黄金のニワトリの気持ちがよく分かりました。
「分かりました。黄金のニワトリさんのことは、村の動物たちには内緒にしておきます」
そう言って、ザックは、村へと帰っていきました。
村に戻ると、村の動物たちは、ザックに、
「おい。うそつきザック、黄金のニワトリはいたのか?」
とたずねてきました。
ザックは、黄金のニワトリの約束を守るために、
「黄金のニワトリなんていなかった」
とうそをつきました。
「うそつきザック!やっぱりお前はうそつきなんだ!」
村の動物たちは、愉快そうにザックをからかいました。
ザックは言いました。
「そうだよ。ぼくはうそつきザックだよ!」
(終わり)
毎回この企画にはふざけた作品を投稿していたのですが、去年末に子どもが生まれ、絵本を買って読むようにもなったこともあり、真面目に童話を作ってみました。
本来はミステリー作家なので、もう二ひねりくらい加えたいのですが、童話らしくシンプルにまとめてみた次第です。