ホウキに乗った恋人
平静を装い内心興奮する自分を抑え、いざ行く。最寄駅の二番線のホーム、まだかまだかと首を長くして特別快速を待つ。天候とは一切関係なく心は晴れていた。意外と早くきたものだ。少々マイペース気味に現れた特別快速は停車時間が短いのだと自分に言い聞かせ、せっせと乗り込む。
白い有線のイヤホンをケータイに繋げ、音楽に浸りながら車窓を眺めた。通学でも使うこの電車。外には名も知らない山と多摩川が太陽は見えずとも輝いて見えた。心が落ち着いていると景色はこんなにも違うものなのかと、動揺した。落ち着いた心とは別に少しの緊張もあった。僕が彼女と会うのは2年ぶり、いや、2年と9ヶ月ぶり。今思えば、彼女はとても大人びて、僕が初の恋人とは思えなかった。
4年前、僕と彼女は新入生と憧れの先輩だった。高校に入りたての僕は3ヶ月ほどでクラスにやっと馴染んだ。人とコミュニケーションをとるのが苦手だった性格もあり、友達も多くはない。自分でも驚きだがそんな自分も恋心というものはあるようで、一個上の先輩に憧れていた。先輩は少女のあどけなさを残しつつも、何か暗いものを抱えているかのような闇をも感じた。
その年の冬、僕史上最大の転機が訪れた。冬の寒い朝、布団の中から目を擦り、重いまぶたを持ち上げて
ケータイを開くと例の彼女からSNSのフォロー申請が来ていた。僕は、掛け布団を思いきりどかし、飛び起きた。SNSに登録された名前は『マチルダ』、欧米チックな名前だった。その日を境に僕らはDMを送り合い、すぐに学校でもお互い挨拶をするような仲に発展していった。僕の彼女に対する恋心はますます募るのに対し彼女は僕に純粋な感情で話しかけてくるのが少し、僕を傷つけた。
数ヶ月後、僕らは彼女側からの申し込みでお付き合いをすることになった。しかし、一般的な男女の好意を向け合う関係ではなくお互いになんでも相談し合えるかけがえのない姉弟のような関係としてであった。しかし僕は、察していた。彼女の恋心に。恋は人生で初めてだったが相手の心を読むことは容易だ。
途切れないDM、毎晩の電話、すれ違うときの微笑み合い、全てが僕らの関係を証明していた。こんなに楽しい毎日は初めてだと強く感じた。
ある日、彼女は死んだ。死因は飛び降り自殺。信じられなかった。お互いが最高の日々を歩んでいると思っていた最中の出来事だったからだ。その日を境に彼女の夢を見るようになった。彼女が死んで約2ヶ月目の夜も彼女の夢を見た。いや、彼女にとても似た『マチルダ』という名の魔女の夢を。夢では、
マチルダは魔女だったが人間の姿をしていた。人間の父と魔女の母の間に生まれた子だった。父の勧めで人間が通う普通学校に通いながら、魔法も母から学んだ。両立はとても大変だったが魔女ということを伏せ、彼女なりにどちらも頑張った。
マチルダは普通学校ですぐにボーイフレンドができた。不良っぽい見た目の金持ちらしかった。マチルダは彼女の持つ愛全てを彼に捧げ、なんでも話した。
自分が「魔女」という事実さえも。
その日を境にマチルダはいじめられた。嫌味のようにホウキで叩かれ、机にはひどい落書き、最後に彼女は独りになった。その結果、学校生活は愚か、魔法さえも使えなくなっていた。
そして、親にも見放されたマチルダは1人の後輩に出会った。彼は、何も持っていなかった。友人も恋人も得意な事も何もだ。そんな彼にマチルダはお互い唯一、信頼できる相手同士になろうと思い。積極的になった。
しかし彼は、そんなマチルダの想いなど知る由もなく、少ないながら、友達を作った。。。
彼女についての夢はこれ以降観なくなった。
この日彼は、とんでもない罪悪感に見舞われた。彼女が死んだ理由、それは僕が彼女の唯一の存在になりきれなかった事。それしか無いとわかった。
しばらくしたある日、彼女はマチルダの姿ではなく、女子高生の姿で夢に出てきた。
「4日後の14時、私の最寄駅に一番近い公園に来て欲しい。」彼女はそれだけ囁いて、夢から消えた。
覚えているのはこれだけだった。
4日後、特別快速に乗り、彼女の最寄駅まで向かった。
公園は僕たちの思い出の場所、いつも下校時には寄って、ブランコで30分から1時間その日の出来事を話し合い、楽しんだ場所。
そこに彼女はいた。女子高生の姿をしたマチルダが。
「ねぇ、なんで突然死んだの」僕が言うと、彼女は思い切り笑って
「夢で話したでしょ、辛かったの。もう、本当に会うのは最後だけれど、最後に会えてよかったわ、ありがとう。」そう言って彼女は下半身から透明になっていった。
彼女に消えて欲しく無い、彼女ともう一度楽しかった日々を共有したいと思い、彼が咄嗟に取った行動。
それもまた、飛び降り自殺だった。
私が聞いた話だと、彼女は今も仮の姿をして人々の弱みにつけ込み翻弄し、殺す魔女なのだそうだ。
-(完)-
気分で初めて描いたので、全く面白くも無いし、
文もおかしいと感じると思いますが、笑って見過ごしてください。
※某交通会社とは一切関係ないです。