ホンワカパッパ!鬼邪殺戮怒≪キャサリン≫史上最大の危機!
今回はまじで危ない
はっ・・・はっ・・・はっ・・・!
人もまばらな昼下がりの住宅街、私の息遣いと足音だけが鳴り響く。
パラレルワールドの現代日本の世界。
今回の私は眼鏡を掛けた劣等生の男子小学生に転生していた。
本来私のポジションにいるのはどんな存在なのかを、私は今回記憶を取り戻したのと同時に思い出していた。
と言うか、元の世界ではほとんどの日本人・・・下手をすれば世界中の人間が知っているかもしれない。
何気に私としては初めてのTS転生だが、そんな感慨に浸る余裕はない。
この世界は、余りにもヤバすぎる・・・!
―――気配を察知、私は物陰に隠れた。
ついでに幸いにも最初の転生である『ソーサリーアカデミー』などから持ち越せている魔法を使用、完全に誰の、いかなる知覚にも引っ掛からない人一人分の結界を張った。
また同時に、特定のワードに反応してノイズを発生させる魔法も使った。
・・・小学生数人の話す声が聞こえてくる。
「まったくよう、の≪ザ・・ザザ・・・≫のやつどこに行きやがったんだ?野球の試合に出してやろうと思ったのによ」
「あんなやつほっとこうよ≪ザザ・・ザ≫アン。どうせ役に立たないんだし」
「あんまりひどいこと言っちゃかわいそうよス≪ザザー≫さん」
・・・男子二人、女子一人のグループはそのまま歩き去った。
取り敢えずこの場はやり過ごせたようだ。
今歩き去った三人も、この世界では一般人の子供と言う事になっていても元の世界では有名人だ。
体と腕力と自己顕示欲の強いガキ大将で、自身の名を冠したリサイタルを定期不定期に開き殺傷力のある歌唱力を披露する男の子。
特徴的な髪形をした金持ちの子供で、自慢話をする時に専用BGMが流れる男の子。
お風呂好きの代名詞であり、ある事がきっかけで運命が改変され主人公の少年と将来的に結婚する事になっている女の子。
私の口から言える事はそう多くない。
少なくとも今回の転生を穏便に終わらせるのはほぼ不可能だ。
―――転生を司る神に苦情を叩きつけて強制終了させる以外には。
その為にも、全く不本意ではあるけれどまずは鬼邪殺戮怒と合流しないといけない。
今回、奴が何に転生しているかはおおよその目星がついている。
この世界に絶対必要不可欠なあるキャラクターだけが今のところ存在せず、つまり鬼邪殺戮怒はほぼ確実にそれになっているに違いないのだ。
そして今朝転生者としての記憶を取り戻してから使用した未来予知の魔法では、ソイツが来訪するのはまさに今日だ。
全力のスニークミッションの果て、私は無事に今世での自宅に辿り着く事が出来た。
自室に置かれた勉強机を集中して見詰めながら、それが来るのを待つ。
―――どれだけの時間が経っただろうか。
不意にガタン、と勉強机の引き出しが揺れたと思ったら勝手に開いた。
「ぼ~く~キャ~サ~・・・」
「≪アクセルブースト≫!≪変幻抜刀脚≫!」
その瞬間、私は加速の魔法と前回の転生で犬鬼邪殺戮怒に覚えさせられたキックで引き出しを打ち据え、強引に閉じた。
更に間髪入れず≪絶対封印凍結呪≫の結界を作り出し、念入りに開かぬよう固定した。
まあこの野郎であれば強引に破る事も不可能じゃないだろうけど、今は姿を見ないまま会話できる状況である事が重要だ。
引き出しは閉じていたが、それに挟み込まれるように逞しい左腕が飛び出していた。
しかし手の部分は白いものの、手首から根本側は青ではなく黄色だった。
「・・・妹の方かよ!」
「いや、ニコイチだ」
邪神さえも封じられるはずの封印術の掛かった引き出しが当たり前の様にバキッと歪み、今度は青い右腕が飛び出した。
「どういう状況でそんなグロ・・・いや、頭は出さないでよ危ないから。いやマジであんただけの問題じゃないからね」
「ふむ、よく分からないが了解した」
すると今回の鬼邪殺戮怒は青い方の腕を引き出し内に引っ込め、残った黄色い方の腕の表面の筋肉をピクピクさせ顔のようなものを作り出した。
「マッスルコントロールだ。この方が話しやすかろう」
「うわ、キモ・・・ていうかロボットのはずなのに鍛えられるのか・・・」
「意外と何とかなった」
その結果がグロニコイチじゃないだろうな。
そんなこんなで落ち着いて話が出来る状況になったところで時間停止結界の魔法を展開、この部屋以外で時間が流れない状況を作り出し鬼邪殺戮怒の説得を始めた。
確かにこの世界では宇宙規模の危機、時空の危機のようなものが何度も起こりその度に私や鬼邪殺戮怒が転生しているポジションにあるキャラ達の大冒険によって救われている。
その危険だけ見たら今までの転生世界と大差なく、鬼邪殺戮怒の腕力で解決してもこの世界的には問題ないのかも知れない。
だが、そこじゃない。
それは私達を転生させている神よりも遥かにもっと上位の存在の怒りに触れ、私達が存在した事実自体が消滅させられる事態を間違いなく招く所業なのだ。
・・・具体的にどういう事なのかは敢えて文字にはしない。
と言うか皆様の目に見える形には絶対に出来ず省略させていただく他ない。
兎に角そう言った事を懇々と説明しているうちに、最初は納得のいかなかった様子の鬼邪殺戮怒も最終的には黙って聞き入れるようになった。
「・・・むう、まさかそこまでの事だったとは。流石に仕方ない」
心なしかマッスルコントロールで作られた表情にも緊張が見られる様子で、彼は承諾の言葉を紡いだ。
・・・その時だった。
魔法によって私達以外時間が止まっているはずの窓の外で、UFOが飛んでたらこんな音出すんだろうな的な激しいサイファイなサウンドが鳴り響き、同時に眩しい光が飛び込んできた。
「い・・・一体なんなの!?確かに時間は止めているのに!」
「・・・タイムパトロール(SFに於ける一般名詞)だ」
「タイムパトロール(SFに於ける一般名詞)?時間犯罪者とか捕まえるあれの事!?一体何したのよあんた!」
「いや・・・ちょっと未来世界で暴れ怪ロボット扱いされててな」
クラッと気が遠くなりかける中、拡声器で投降を呼びかけるタイムパトロール(SFに於ける一般名詞)の声がする。
それはそうと・・・この野郎、タイムパトロール(SFに於ける一般名詞)からも鬼邪殺戮怒って呼ばれてんのな。
「あーとにかく今回の転生は中止よ中止!強制終了!こっちじゃ二人の意見も揃ったわよ!聞いてんでしょ転生の神様!?諸共滅びたくなかったら私等を元の世界に今すぐ戻しなさいよね早くしろあほんだらーーーーー!」
タイムパトロール(SFに於ける一般名詞)の投光器に照らされる室内の床に、それとは別に複雑な魔法陣の光が浮かんだ。
隊員が窓を打ち破って雪崩れ込んでくるのと、魔法陣を介した私達の魂の転送が完了するのはほぼ同時だった・・・。
お前、おい転生神。
まじでほんといい加減にしろよ。
第五部
世界崩壊阻止エンド
え、今回は暴力で解決してないって?
ダッテ、サイショカラモンダイナンテオキテナカッタンダモン。
イイネ?