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流星の牙伝説 - 鬼邪殺戮怒≪キャサリン≫ -

何とは言わないけど完結オメデトウゴザイマス

 ・・・犬、だな。

 水面に映る自分の影を見て、俺は声を出そうとした。

 

 口が勝手に「ワン」と発した。





 俺は地球最強の男だが、理由は分からないが今までに何度か異世界転生を繰り返しては現世に帰ってというのを繰り返している。

 ゲームだったり小説の世界だったりはしたものの、その全てで俺は立場などは様々ではあるが人間の肉体に転生を果たしていた。

 それが今回は人間ですらなかったらしい。


 しかし子犬の姿をした俺の頭に生える可愛らしい角からして、ここもファンタジーな世界である事は恐らく間違いない。

 犬系モンスターの子供か何かに生まれた、と言う事だろう。

 しかしそうなると、どう見ても子犬の身なのに親がどこにも見当たらないのが気になる。

 本能的に分かる嗅覚でも同族と思しきニオイは感じ取れない。


 子育てをする現実のイヌ科の生き物と違う生態であれば、それはそれでいい。

 だが問題は仮に子育てをするタイプの動物であり、その上で・・・親とはぐれたか、親が死んでいる場合だ。

 だとしたら今の俺は、腹を空かせた野生の肉食獣にとって庇護者もいない上弱くて狩りやすく、更に柔らかく美味しい御馳走と言うボーナスアイテムに過ぎない。


 転生の中で技を磨いてきた俺なら自身が人の形さえしていれば、例え幼女の腕力でも固い表皮を持つモンスターの体内に浸透する衝撃で秘孔を突いて爆死させるだけの体術が可能だ。

 しかし犬(と言うかそれっぽいモンスター)という相当に構造の違う生き物の体でどこまでできるかは未知数だ。



 そして、それを安全に試す時間もないようだ。

 辺りに捕食獣特有の殺気が漂い始めたのだ。



「(・・・囲まれているな)クゥーン」



 自身の口から出る鳴き声が可愛らしすぎて気が抜けそうになった。




~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~




 皆様ご無沙汰しておりました。


 個人的には皆様ともアレとも二度と会いたくありませんでしたが、また転生してしまったものは仕方がありません。

 もはやあの野郎とエンカウントせずに済むという淡い期待は端っからしていませんし、大人しく語り部になろうと思います。


 ・・・え、前回の転生はどうしたか、ですって?

 まあ、その・・・当たり前のようにあの野郎によってラスボスワンパンですよ。

 元は自分の書いた小説だからなんでしょうか。

 最後まで書き切る気力はなくエター確実だったし、加えてラスボスは作者も知らない自動生成とは言え、あそこまでアッサリやられると自分の創作が否定されたというか無力感に全身を支配されますね・・・。



 まあ、そんな事より今回の転生です。


 乙女ゲーム乙女ゲーム自作小説と来て、今回はモンスターを集めて育てる系のゲームの中でまあまあ人気の奴の世界のようです。

 私もそこまで熱中してはいなかったものの、携帯機用なので学生時代の通学時間などの暇つぶしには丁度良くちょくちょく遊んでいたものです。

 なお今回の転生先の姿は、女主人公を選んだ場合のデフォルト状態デザインの活発っぽい女の子となっています。


 取り敢えず現在は相棒となる最初のモンスターをもらってチュートリアル代りに山に入るイベント・・・の寸前まで来ています。

 今のところヤツには出会っていません。

 が、予想は付いています。


 元来起きるイベントの下準備として、大人のモンスターマスター達が山から見習いマスター達用に幼体の弱いモンスターを捕まえてくるはずなのです。

 しかし山のモンスターたちがここ近年で異常に手強くなり、それが難しくなったと言うのです。


 ・・・余程勘が鈍くなければ想像がつく程度にあの男と関わりを持ってしまっている運命を、私は今猛烈に呪っています。





 そんな訳で私は今、そのチュートリア山(本当にこんな名前)に黙って一人で来ています。

 え、女の子一人でモンスターのいる危険な山に来て大丈夫かって?

 本当なら大丈夫じゃないんでしょうね。


 しかし私は、今まで行ってきた世界から魔法の力を引き継げてしまっています。

 しかも最初の転生で覚えた魔力タイプの魔法、サンディとして覚えた精霊型魔法の両方です。

 なお今回の世界には本来魔法などなく、正直アレの事を指さして非難できにくくなっている程度にはチート臭い自覚はあります。

 まあ、ここで大事なのは安全なので・・・。


 五感にを欺き気配も消してしまう魔法を使いながら山道を歩く事しばらく。

 何頭かの野生のモンスターを見ましたが、それらの全てが悪い予感の裏付けとなる異状を示していました。


 元のゲームでのモンスターは基本的に可愛い系、ポップな感じの姿をしています。

 実際村でマスター達に飼われているモンスター達もそんな感じです。

 厳つい感じになってくるのはそう言う進化を選んだ場合ですね。


 しかしこんな最初の村の近所の山で見かけたモンスターの全てが妙にマッスルでハードボイルドとくれば、もう間違いありません。

 ここは、ヤツの領域なのです。



 既に夜、満月が煌々と辺りを照らしていました。

 家に魔法で作った分身を置いてこなければ行方不明事件として大騒ぎになっているでしょうね。


 私は身隠しの魔法を解いて高い岩の上に立ち、新たに拡声の魔法を使って今までの感情を込めた大声で叫びました。



「いるんだろ鬼邪殺戮怒(キャサリン)!出てこいやゴルルアーーーー!!!」



 呼びかけに応える様な四方八方からの遠吠え。

 なんか一緒に聴こえる馬のいななきと、蹄が大地を駆ける音。

 種々のマッスルモンスター達が静かに恭しく並び、その中央を海が割れるように道が開く。

 やがて私の目の前に、一頭の逞しく巨大な馬が止まりました。


 今回は山男になってモンスターを鍛えているパターンか・・・という予想は、視線を上にあげていくとすぐに裏切られました。



 馬上で手綱を握っていたのは、なんと一頭の犬でした。


 頭に生えた角からして、最弱モンスター種の一つに数えられるツノワンコに間違いないでしょう。

 しかし見るからに鍛えられた肉体に、強者や覇者を通り越して絶対者じみてさえいるその威圧的な存在感は見紛う事なき鬼邪殺戮怒(キャサリン)のソレに相違ありません。


 ・・・どうしよう。

 早くもツッコミが追いつかねえ。



 ソイツは犬だと言うのに、当たり前の様に喋りました。



「やはりお前も来ていたか。最早腐れ縁と言うやつかもな」


「こっちはそんな縁今すぐにでも燃えるゴミに出したいんだけどね、でも今の用はそんな事じゃない」


「・・・と言うと?」


「あんたの影響でこの山のモンスター達がマッスルになってる事で何が起こっているかを説明するから、それを何とかしなさいって言いに来たのよ!」



 しかし私の用事は、多少先延ばしになりそうです。

 凶悪な獣の唸り声・・・恐らく熊でしょうか・・・が聞こえてきたのです。


 木々をなぎ倒し現れたのは、どう見ても目測で体高10mは超えている超巨大な熊のモンスター。



「やはりお前か・・・ベニヘルメット!」


「名前だけでビーンボール投げるのやめろおおおお!」


「グオオオオアアア!今日こそ決着を付けてくれようぞ鬼邪殺戮怒(キャサリン)!山に雄の頂は二つも要らぬと知るが良い!」


「お前も当たり前の様に喋ってんじゃねえぞくそがあああああ!!!」




 ・・・え~~、その後の事は何と言ったらいいんでしょうか。

 通常攻撃が前世で見た大魔法に匹敵する破壊を引き起こす巨大熊ベニヘルメットに対し、自らの体を手裏剣やドリルの様に凄まじく回転させてのタックル噛みつきを敢行する鬼邪殺戮怒(キャサリン)の戦いは、あんまり詳しく言うと各方面から怒られかねないので省略させてください。

 何はともあれ流石に子犬の体だからなのか鬼邪殺戮怒(キャサリン)も苦戦してましたけど、最後には勝ってやがりました。


 さらにその後の展開を言いますとですね・・・チュートリア山のマッスル化したモンスター達が新人マスター達のパートナーとなり、私には当たり前の様に鬼邪殺戮怒(キャサリン)が付きました。

 山に帰れ。


 そして始まった旅でこの野郎があちこち闘気をバラ撒いたのが災いし、世界中のモンスターが元のキャラデザの人が涙を流して筆を折る感じにマッスルフェノメノンしてしまった事はここに記しておきます。




 ・・・まあ、後から思えばこの時の転生はその次の奴に比べればまだ許せた感じだとは思うんですが。





                  第四部

                 DAS ENDE

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