【番外編】いまのはなしとかんけいないかんぜんなばんがいへん【その3】
私の名前はエラーイ。
世界を持つ神々の中では若い方だけど、新進気鋭で有能な女神だ。
もちろんものすごいカワイイし、スタイルもいい。
下賤な人間が見たら「うわっ何でこんなところに美の概念の実体化存在が」と驚くんじゃね?程度の自信はある。
そして最終的には美を司る女神の座も目指してる。
三美神の座を全てこのエラーイが独占し、唯一絶対のワンダフルビューティフルゴッデスとなる事さえも夢なんかじゃないはず。
何でそんな事が言えるかって?
元々かわいくて美しくスタイルも素敵なところに、あるお得マル秘テクニックを使ってるからねー。
私達神の力の源は、抱えてる世界からの信仰なの。
そこで「ステータス制」を導入して神の威光を人間に振りまく事でより強い信仰をゲット、益々パワーアップって感じ。
週刊女神自身エイトに載ってる裏技情報を信じて導入してよかった。
おかげで人間換算でこの三百年ほど、私の担当世界からの信仰のパワーによりお肌つるつるのプニプニ。
髪も流れるようにサラサラでまるで銀河とかそんな感じっぽくね?
このシステムは、導入したら後は放置でOKと言う物じゃあない。
生まれる人間に付与されるステータスはレベル上限や適性クラスなんかの才能も含めランダムだけど、たまに勇者や聖女的な超人を直接介入で生み出すことで、神様スゲーでより高い信仰を得られる。
また人間を女神に縋らせるための、魔族とかの脅威も適宜に造り運用しなくちゃね。
あと効果的なのが、勇者や聖女とは逆にわざと物っすごくステータス低い人間を生み出して「神の恩寵から漏れた生まれながらの咎人」とかいって徹底的に差別させること。
これも信仰を高めてやるのにメッチャ効くのよね。
その対象は前世で私に逆らったやつの魂をマーキングして何回生まれ変わってもそうしてやるとか、何か魂の色とか形が気に入らないとかで適当に決めちゃってる。
お陰で効果はこの通り。
あ、そういえばお試しで他の世界から人間強引に呼び寄せてそんな感じにしてたっけ。
なんかそいつねー、いかにも鍛えててめっちゃ強そうでさー、そんなのが神罰で子供にも負けちゃうようなの見せつけたらメッチャ信仰集めなくない?
私マッチョ嫌いだしーちょーどいーじゃん?
「あれ、エラーイ・・・なんか、今日は肌ガサガサっぽくない?」
「えーまさかそんなー・・・なんだろこれ」
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「これは一体・・・どういう事なの」
聖騎士の使命として自ら定め、私ホーリィは一人の男を追っていた。
その中で、ある異常な光景を目にする事になった。
ステータスの極めて低く生まれついた者達が集められた咎人集落。
各地に点々と存在するその集落の住人たちが、サラマンダーとかマンティコアとか、そう言う極めて危険な上位魔物を狩っていたのだ。
重い武器や魔法も駆使して熟練の冒険者でも難しい事を。
ステータスの限界が低く腕自慢の子供にも負けてしまうはずの彼らが。
話を聞くと警戒されながらも、変な服を着た旅の男に鍛えられたらいつの間にかできるようになった・・・と言う事らしい。
ああ、間違いなく鬼邪殺戮怒なる人物だ。
それにしてもこのところ、聖騎士剣技や魔法の冴えがどうもイマイチな気がする。
本来一撃で首を刎ねられているジェネラルオーガに二発必要だったり、ドラゴンの急所にアイスランスがちゃんと当たらずもう一発必要だったり。
焦りが技に出ているのかも知れない。
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旅を続けている中、何やら世界的な異変が起きているのが分かった。
少し長い樹海を抜けてある大きな街に辿り着いた時、それは顕著になっていた。
ありとあらゆる人々のステータスの表示が、微妙に薄くなったりブレて見えるようになっていたのだ。
それに伴い、実に多くの人が魔物と戦う時などの能力について実感できるレベルで下がっているという。
私がジェネラルオーガとの戦闘を避けるようになったのは単に調子が悪いのではなく、世界的な異変の一端として力が低下したから、と言う事なのか。
一方ステータスの低いはずの咎人達はそんなものに影響を受けず、今日も魔物相手にヒャッハーしている。
それにしてもこのペースで私の戦闘力が下がるなら、次の移動で最後にするしかなくなるだろう。
奇しくも天神エラーイ様に賜ったステータスにまつわる異変を追う最後の地が、エラーイ教の総本山の街となりそうだ。
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教皇自ら、エラーイ様への祈りを捧げる大規模ミサを執り行った。
多少私の力が戻った気がしたが、一週間と持たなかった。
伝え聞く話によると、エラーイ教を信仰しない人々が増えているらしい。
事の起こりは、咎人程でなくともステータスの低いある人が能力低下で山を歩く仕事も出来なくなった事だ。
その人物にとって友人の咎人の強化現象を知って、彼からトレーニング法を習ったら今まで以上に働けるようになったと言う事柄だ。
これは瞬く間に広まり、咎人から習った鍛え方で力を取りもどすという事例が相次いだのだ。
彼等は最早、天神エラーイ様を奉じてはいなかった。
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教皇の名前で、反エラーイ勢力を糾弾する言葉が広く発せられた。
でも無駄だ。
エラーイ教の信徒はすでに個人ごとの能力がピーク時に比べ半減しており、ドラゴンも平気で狩る勢力に勝てるわけがないのだ。
私にしても聖騎士など名ばかりの戦闘力しか残っておらず、最早ちょっとした用心棒を兼ねたウェイトレス程度の存在として糊口をしのぐしかない状態なのだ。
こうなったら、私も力を取り戻すためには咎人式のトレーニングを・・・いや、それは邪心だ!
エラーイ様への信仰を捨てるというのか、正気に戻れ聖騎士ホーリィ!
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自分の中にあった壁が無くなって、まるで青空が広がったようだ。
思い切って彼ら式のトレーニングをやってよかった。
貧弱な私にサヨナラ、そしてジェネラルオーガをいつかの様にクビチョンパ。
あ、そう言えばこの間魔王が倒されたそうです。
変な服を着た男に率いられた集団によって。
平和なのはいい事です・・・ダブルバイセップス。
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「うわあああああああなんなのこれええええええ!私の顔が!手が!髪があ!こんあに、ごんだに醜くボロボロにいいいいいい!」
神々の集会場の真ん中、まだ若い女神の天神エラーイがのたうち回った。
自身の世界から集めていた信仰が急激に萎んだ結果、衆目にてこんな醜態をさらす事になったのだ。
エラーイに、一人の女神が歩み寄った。
他を寄せ付けぬオーラを放つ彼女は三美神の一角とされるビュリファインだ。
「ビュ・・・ビュリファイン、ざまああ・・・」
「エラーイ、貴女の行状は以前から監視していました。すぐ他の女神を貶めるなどいささか目に余る点があるものの、いつか生来の素直さを取り戻し改心してくれるかもしれないと期待を込めてね」
しかしそこから突き放すようにビュリファインは続けた。
「ですがあなたはそうしなかった。それどころか現在は禁止されている『元々の能力を補正するタイプのステータス制』を自分の管理世界に導入さえもしてしまった」
場が一斉にどよめいた。
ステータス制は多くの世界で導入されてはいる。
しかし現在は『今のその人の能力をそのまま表したもの』以外は禁止されている。
ステータスというシステムを通じてその人の能力に手を加えるのは、いつからか神々の世界では厳重に制限されるようになっていた。
信仰を集め力を高め、それを管理世界のステータスシステムに注ぎより信仰され更に神としての力を高める。
女神としてパワーを得るのに、こんなに効率の良いものは無い。
しかしそれは人の運命や尊厳を弄ぶ所業を引き換えに強い信仰を集めるという、醜悪と言う言葉でも足りない行為なのである。
「そして信仰を生み出すサイクルが破壊されたら、反動でそうなるのよ」
「ぞんな、ぞおんなああああああああ!」
「・・・その状態ではマナからやり直した方が早いかも知れないわね。貴女の事は嫌いではなかったわ、エラーイ」
その時エラーイの脳裏に、どうしても聞きたい事が浮かんだ。
それを聞く為に、最後の力を絞った。
「ま、まっで、ください!どうしてでずが!私の世界に、なにが、あっだんでずが!ご存知なんでじょう、ビュリファインさま!」
「・・・補正型のステータスシステムと言うのは、他の世界の法則などと比べてデリケートで壊れやすいという特徴があります。それを素の能力で超えてしまう者を、貴女は召喚してしまったのです」
「うえ゛・・・!」
デリケートで壊れやすいとは言っても、それは神々基準だ。
人間にどうにかなるものではない。
普通ならば。
どうにも普通でない奴と言うのは存在するのである。
やがてエラーイの姿は光となって崩れ去り、そこには赤ん坊が泣いていた。
どうやらマナまでは還らなかったようだ。
ところで、エラーイより上の世代の女神たちは皆「鬼邪殺戮怒」の名を知っていた。
知っていて口にしなかった・・・いやできなかった。
神々をもってしても余りにも手に余るその名を口の端に出す事さえ、なんかもう嫌だったからだ。
「何であの野郎何度も転生してきちゃうのよおおおお!」
「もうやめてくれえええええええ!」
もはやそれを口に出す男神も女神もいない。
彼等をして、頭を低くして鬼邪殺戮怒が自分のところの世界に転生せぬよう祈りながら通り過ぎるのを待つ状態なのである。
番外編
THE おわり




