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鬼邪殺戮怒≪キャサリン≫はインフィニットじゃないよ、もっと質が悪いよ - Δ・ドッキリブレスレット大作戦

 皆が寝静まった真夜中。

 一人の少女が気配を殺しつつ、しかし高揚感を抑えきれないままある場所を目指していた。


 カオルコ・メリンダ・サーキュリアの鞄にいつの間にか入れられていた手紙は、アスク・テンザキの名前での深夜の呼び出しだった。

 罠の可能性もある・・・が、それとは別の用事だったりしたら。

 そんな事あるわけない、いやひょっとしたら・・・と悶々と葛藤しながらも彼女は結局指定の時間、指定の場所に向かう事にした。

 一応武器は持っているし、学園における上位権限者であるカオルコには門限での施錠なども問題にはならない。


 そんな頭から湯気を吹く状態で体育館の裏まで辿り着くと、先客がいた。

 カオルコにとってはあまり見たくないトキオ・カザラギの澄まし顔が、よりによってそこにあった。



「げ、トキオ・・・何であんたがこんなところに居るのよ」


「それはこっちの台詞よ。私はこれからアスク君と熱い夜を過ごすのだから邪魔しないで頂戴」


「・・・ちょっと待って。あんたもアスクに呼ばれたの?」



 そうカオルコがポケットから手紙を取り出して見せると、少し驚いて凍り付いた様な表情でトキオも同じ手紙を出して見せた。



「・・・」


「まさかと思うけど・・・二人が俺の翼DA☆とか言い出さないでしょうね。もしそうなら流石に見損なうわ」



 二人がフリーズ状態で対峙していると、さらにぞろぞろと複数の人間の気配が凍てつく空間内に踏み入ってきた。



「お、だから言ったネ!カオルコとトキオも来てるって」


「ウホ」


「あらあら、アスクったら全員お相手するつもりかしら?」


「・・・私は一向に、構わない・・・」



 そこは構えよ、と誰かが漏らすや否や、この事態を引き起こした下手人が重役出勤の如きタイミングで現れた。



「ああ、みんなもう揃って・・・」


「死ねー!氏ねじゃなくて死ね!」



 そんなわけで、アスクが誤解を解くために多少の時間が必要だった。




「・・・簡単に言うと、僕がこの学園で信用も信頼も出来るのがここにいるので全員って事だよ。ついでに、全ての監視カメラやセンサー類はジャックしてるからここにみんなが集まったのも知られていない筈だ」


「まるで・・・この学園そのものが『敵』の手の中みたいなもの、って言っているように聞こえるんだけど?本当にそんなものが居るかどうかも分からないのに」


「ウーホホ」



 この中で最も頭の回るツートップのトキオとゲロゴ・リラが反応した。

 そこでアスクは、人数分の紐ブレスレットを取り出した。



「明日は週に一度の全校での朝礼がある。その時にこれを装着して壇上を見てくれれば分かるはずだ・・・納得が行ったら、また明日同じ時間にここに来てくれないか」



 その場は誰も釈然としない、しかしアスクのやけに真剣な様子に圧されるように全員ブレスレットを受け取り解散となった。




 - それからどしたの -




「アスク、答えるネ・・・アレ、一体何ネ?」



 翌日の夜、誰一人欠ける事無く集まったメンツがなかなか言葉を発せない重い空気の中で、メイメイが口火を切った。



「エクスター学園長、どう見ても人間じゃあなかったわよねえ・・・?」


「・・・少なくとも地球の生き物では、ない・・・」


「ウホッ」


「ねじくれた触手を縒り合わせた様な甲殻質の体に、レンフォスの光。私の目が腐ってないなら、ヴィザークに似た特徴を感じたわ」


「一生分驚かされたんだから、ちゃんと説明しなさいよね!?このブレスレットや、そんなもの用意できるアスク、あんたが何者かも含めてね」



 期待通りの反応が貰えた事で、アスクはとりあえず安堵した。



「学園長が正確には何なのかは分からないけど、少なくともヴィザークと裏で通じている宇宙人的な存在なのは分かっている。このブレスレットは奴の偽装を見破る機能があって、まずは皆にそれを実感してほしかった」



 衝撃の事実に、一同に緊張感が走った。



「向こう側の裏切り者として地球の味方、と言う線もないよ。大きな声じゃ言えないけど、僕は盗聴とかそう言うのでも確認してるからね」


「・・・信じられない。信じられないけど、ワタシ自分の目で見てしまったネ」


「ウホウホ(なでなで)」



 今にも狂戦士化して飛び掛かりそうなカオルコを抑え、トキオが指を立てつつ整理された疑問を口にした。



「それじゃあ聞きたいことは取り敢えず三つ。

 ①どうしてそれを教える相手が私たちなのか。

 ②エクスター先生、いえエクスターの目的は何なのか。

 ③最後にアスク君、あなたの正体よ」


「最初の質問だけど、今学園全体は軽い洗脳状態にある。教師やスタッフに生徒の別なくエクスターに対して妙に無批判な感じはしない?でもここにいる皆だけはレンフォスの強さでそれを撥ね退けてるからね。それで一つ飛ばして僕が何なのか、だけど・・・人より強い力を持ってしまった地球人、って言うのは間違いないけど、そういう事じゃないよね?でもその先を聞きたいなら、僕の提案に乗ってもらわないといけない」


「最後に質問②の答えを持ってきたのは、それが・・・一番不愉快な奴だからかしら」


「そうだね。まずヴィザークの目的だけど、習ってる通りレンフォスを求めて地球を襲っているのに間違いない。知能のある種類は今のところ確認されてないけど、統括する何者かにはあるだろうね。エクスターはそいつと連絡を取り合う工作員とかスパイとか、そういう役割だから」



 そしてアスクは次の言葉の前に、敢えて息をついた。



「エクスターは、レンフォス学園生徒の総攻撃を失敗させようしている」


「「「「「「!!」」」」」」


「と言うか成功できるだけの戦力が絶対確保できないのを見越してるんだから、人類の最後の希望としてレンフォス学園を作った時点で企みの仕込みは大体終わっている」



 そんな、何のために・・・と言う絶望の籠った言葉を誰かが零した。



「ここからは推測だけど、例えばこう言うのはどうだろう?敗北して地球側の心が完全に折れたタイミングで敵の親玉が現れて、エクスターが主導して降伏のための交渉。その結果『レンフォスを提供し続ける事を条件に侵略を止める』で交渉成立、とかね」



 実は推測ではなく学園長室で盗み見たプランではあるが。

 流石に集めた皆は言葉がない様子だ。

 余りにもネームバリューや権限が大きく、下手なタイミングで排除すれば全てが瓦解しかねない、エクスターがよりによってそんな立場に収まっているのが分からない人間はここには居ない。


 そしてアスクが提案を口にしようとしたタイミングで、先んじて一人が口を開いた。



「分かったわ、アスク。私を鍛えて強くして」


「ちょっとカオルコ?」


「あんたが言わんとする事はお見通しよ。どんな選択肢を取るにしても力がなくちゃ始まらない、そういう事よね?」



 カオルコの宣言に、段々と賛同する声が上がった。

「アイヤーそういう事ネ!メイメイもやるネ!」「ウホウホ」「アスク君と特訓なんて楽しみ~」「・・・頑張る」と言った具合に。

 ウホウホが賛同かどうかは置いといて。



「・・・やれやれ、人類の存亡が掛かってるんじゃやる以外にないじゃない。不本意極まりないけど」



 最後の一人、トキオの賛成を以て満場一致で方針が決まった。


(あの野郎みたいに人を鍛える事になるとはね)と、アスクの脳裏に一人の人物の顔・・・いや、一人の人物の筈なのに同時にいくつも顔が思い浮かべられた。

 また、自身の真の正体をバラすタイミングもちょっと見失ってしまった。



 後日になって、転生者としてファンタジー世界仕込みの魔法と言う物を見せて「ふざけんな」と集中砲火を浴びたのは言うまでもない。

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