第六話 痛いエルフの服問題
遅れてすいません。モチベーションが中々上がらず⋯⋯
次の日。
朝か昼か微妙な時間帯。
煌夜の部屋で、煌夜、ネタル、アリシアの三人で話し合いが行われていた⋯⋯。
「成る程⋯⋯つまりあいつら四人を市役所に連れて行きゃあいいんだな?」
「大雑把に言えばそうだね。住所は⋯⋯煌夜のマンションでいいかな」
「オッケー」
市役所か⋯⋯面倒だが、ちゃっちゃと行って早く終わらせてしまおう。
「それじゃあ行くぞ」と煌夜は椅子から立ち上がったが、ネタルからごもっともな意見が出た。
「早めに行かないといけないないのは分かるけど、アリシア達の服はどうするの?四人の着てる服はかなり目立つと思うんだけど⋯⋯」
煌夜はそう言われて四人の服装を思い出した。
全員が革でできた防具を胸と関節に着け、マントを羽織っている。
確かにこれで行くのはマズイかもしれないな⋯⋯。完全に痛い人に見える。もしかしたらコスプレイヤーと思われるかもしれんが。
どうするべきか⋯⋯。
ーーいいこと思いついた。
「ネタルのとこの姉さん呼べよ。女性物の服、どんなのがいいか知ってるんじゃないか?」
「ええ⋯⋯芽依姉呼ぶの?」
ネタルは嫌そうに顔を逸らし、ため息をついた。
「だってさ⋯⋯あの人カツアゲしてくるんだよ?」
「いいだろ別に、お前だけだし。じゃあ呼ぶぞ?」
煌夜はスマホの電話帳から『姉さん』をタップし、電話をかけた。ネタルはと言うと、もう諦めてカーペットに寝転がっている。
「ネタ⋯⋯ワタルさん。ワタルさんのお姉さんってどんな人?」
「そうだね⋯⋯あっ、別に『さん』とかつけなくていいよ?」
ネタルはそう言った後、軽くため息をついて話し始めた。
「まあ、頼りになるって言ったらなるんだけど⋯⋯振り回された挙句にカツアゲされたりするしね⋯⋯」
「そうなんだ。でも、頼りになるんだったらいいお姉さんだと思うよ?」
だが、ネタルは結構否定している。アリシアは、首を傾げて「お姉さんっていいと思うけどなぁ」と呟いていた。
しばらく雑談していると、『ピンポーン』とインターホンが鳴ったので、アリシアが玄関へ向かった。
「よー煌夜。久しぶりー⋯⋯って部屋間違えたか?」
Tシャツに短パンと、かなりラフな格好をした女性が来たが、煌夜には無縁だろう人物(かなり痛い格好)がいたので少し戸惑っている。アリシアは、ここで間違いないと言って彼女を部屋に入れた。
「おぉ、煌夜いたのか。女に無縁のお前の部屋にこんなヤツがいるなんてな。一瞬、部屋間違えたかと思ったぞ」
なんて失礼な。
⋯⋯まあいい。今回はこっちが頼みごとをしてるんだからな。
「ところで⋯⋯いたいた、おい弥。三万貸してくれ。今金欠なんだよ」
「やっぱりそう来たよ⋯⋯」
ネタルは三万を渋々渡した。彼はため息をつくと、つまらなさそうな顔で机にあったペンを器用に回し始めた。
「ああ、この人が姉さん⋯⋯じゃなくて芽依だ」
「よろしくぅ。てか、姉さんって言うなよな⋯⋯」
芽依は苦笑いしながら『姉さん』を否定する。
「アリシアです。メイさん、よろしくです」
「いーよそんなにかしこまらなくて」
芽依はネタルからカツア⋯⋯借りた三万を団扇がわりにしながら上機嫌に挨拶した。
「えーと?それで要件はなんなんだ?いきなり電話で『いますぐ来て欲しい、ネタルから三万取っていいから』って言われたから来たんだが⋯⋯」
それを聞いてネタルがキレた。
「なんで僕の金なんだよ!?煌夜が渡せばいいじゃん!!」
「まぁまぁ」
悪いなネタル。目的の為なら犠牲も必要なのだ。諦めてくれ。
「話を戻そう。実は⋯⋯」
青年説明中⋯⋯
「ふん、何バカなこと言ってんだ煌夜。ラノベの読みすぎじゃねぇのか?」
青年ら公園に移動中⋯⋯
「風刃」
木の枝だったもの「」
「マジか⋯⋯」
「ほら、これで信じてくれるか?」
煌夜は少し自慢げに聞いた。芽依は、とりあえずそういうことにしておくとでも言うように、ため息をついた。
「それはそうとアリシアとロアの服を選んで欲しいんだ。俺らはダイアーとアンヘルの服を選ぶからさ」
「はいはいわかったよ。とりま疲れたから部屋に戻そう」
「へいへい」
四人は一旦煌夜の部屋に戻り、ロアとダイアー、アンヘルを呼んだ。
「これからこの世界に合う服装をしてもらう為、服屋に行く。男どもは俺とネタル、女子達は姉さんと一緒に行ってくれ」
煌夜はそう指示して、鞄を持ち、部屋着から着替えた。その後、二手に分かれて服屋に向かった。
服屋か⋯⋯行くのは久しぶりだ。最近はネットで買ってばかりだったからな。ちゃっと行ってちゃっと帰った方が、ネットで買うより手に入るのが早い。とりあえず、この二人に似合うような服を選ばねぇとな。
それより⋯⋯用事があるから帰るって⋯⋯ネタルの野郎、覚えてやがれ。
「ところでこの世界の服を売ってる店はどこにあるんですか?」
痛い格好ではなく、煌夜の部屋にあった服を着たアンヘルが聞いた。
「確か⋯⋯駅を三つばかり乗ったところにあったような気がするな」
「そんな状態で遭難したりしたりしないだろうな?」
煌夜の服を着たダイアーが苦笑いしながら聞いてきた。
「遭難はしないね。多分」
遭難って⋯⋯。
森の中じゃあるまいし。だが、コンクリートジャングルとか言ったりするな。遭難って言葉も、もしかしたらあっているのかもしれない。
そんなことより、服屋はどこがいいだろうか?
⋯⋯ウニクロとかでいいか。どうせ男だからそこまでいいやつにしなくてもいいだろ。
場所が分からないが。
「その⋯⋯場所は分かったのですか?」
アンヘルが不安そうに煌夜に聞くが、煌夜はきっぱりと言った
「さっぱり分からん。なにせここ半年間、ネットだけで買い物をしていたからな。初めて行く場所など、見当もつかない。」
「ネットと言うのは確か⋯⋯あの四角い機械でできる機能のことですよね?いや、それよりどうするんですか?場所分かるんですか?」
確か何かあったような⋯⋯。
煌夜はしばらく考えると、何かを思いつき、スマホを取り出した。
こういう時は⋯⋯
「ガーグルマップだ」
「ガーグルマップ?」
「なんだそれは」
二人はリズム良く質問した。
「これはな⋯⋯行きたい場所を検索すると、目的地までの道のりを教えてくれるんだ」
「なるほどな。俺らにも地図の魔法があった気がするが、あれは行ったことのある場所を記憶しておく必要があるからな」
「ホント、便利なものが多い世界ですよね」
二人は腕を組んで頷き、ガーグルマップを覗き込む。煌夜は、少し邪魔だと顔をどかした後、一番近いウニクロを検索した。すると、二駅先にあると表示されたので、煌夜達は駅に向かった。
「さて、こっちだこっち」
煌夜は、交通系カードをピッとかざして、二人を呼んだ。しかし⋯⋯
「どうなってるんですかこれ!?なんか閉じちゃってそっちに行けませんよー!!」
あーそうだった。この二人は切符買わないとな⋯⋯。
二人に切符の買い方を教えるため、煌夜は二人の所へ戻った。
料金を余計に払わなくてはならなくなったので、損した気分になった煌夜だった。
お読みいただきありがとうございました!!