第三話 日本に戸惑う隊長さん
うう、眩しい⋯⋯。
あのアイテムは、赤い出っ張りを押したら光が体を包むという罠だったとは⋯⋯。不覚。
⋯⋯ようやく光が弱くなってるみたいだ。何も私の体に害は無いようだけど⋯⋯罠には違いない。他の隊員がこの罠にかからなければいいのだけど⋯⋯。
おっ、光が弱くなって周りの景色が見えるようになってきた。けど私がいるのは⋯⋯座礁した船?ここはどこなんだ?
っ!?大きな金属の箱が走っているだと!?あれは魔物なのか?しかし下手に攻撃するのはやめたほうがいいだろう。この船の中に入って状況を整理するかな。
エルフの隊長は船の中に入って休憩しようとしたが、中に誰か人がいるのに気づいた。
「ロアさん!?」
「アリシアちゃん!?」
「アリシアだと?お前も来てしまったのか。はっはっはっはっは」
「ダイアーさん。笑いごとじゃないですよ」
「そうだなアンヘル。だが仲間が増えるのはいいことだと思うぞ?」
エルフの隊長アリシアは、目の前の現状に驚いていた。
それもそのはず。行方不明となった三人の隊長がここにいるのだから。
「アリシアも押してしまったのか。隊員は真面目だから変なものまで隊長に報告するからよ。ホント良い迷惑だ」
「貴方のせいでもあるんですよ?まあ、僕が言えた立場じゃないんですけどね」
アリシアは三人がいることに安心して、腰を下ろした。すると数冊の書物があることに気づいた。
「ロアさん、この書物は?」
「ああ、私のところにあるのはマンガというこの国の娯楽用の書物らしいよ〜」
マンガねぇ。⋯⋯なんて書いてあるのかさっぱりだ。なんて書いてあるんだこれ。
「アリシア〜、ダイアーが何故かが持ってた言語翻訳の指輪があるけどつけてみたら?」
ロアは、何故か人数分ある言語翻訳の指輪をアリシアに渡した。
「ありがとう。どれどれ⋯⋯コンナトコロニイテタマルカ。ワタシハコノリョカンカラデテイクゾ⋯⋯よく分かんないですね」
この言葉を言ったあと、何者かに殺されたと⋯⋯なんと恐ろしい。
あとこの書物はなんだろ?マンガという書物よりかなり薄い。
「この本が気になるかアリシア。これはドウジンシという規格のエロホンといっていわゆる⋯⋯ゴニョゴニョ⋯⋯というやつだ。未だにR18の意味が分かんねんだが⋯⋯見てみるか?人間のことで参考になることがあるかもしれんぞ?」
「ふふ。アリシア、私もそう思うよ?」
「変なものをアリシアに勧めるのはやめてくださいよ二人とも⋯⋯」
ロアとダイアーがアリシアに『ドウジンシ』なるものを勧めるのをおさえようとしたが、アンヘルにその勢いを止めるのは無理だった。
アリシアは『ドウジンシ』なるものをペラペラとめくった後、真っ赤な顔でドウジンシを閉じた。それもそのはず。紙が貴重な世界で、そのような書物など作れない。よって『ドウジンシ』のような書物をアリシアは初めて見たのだ。
「キャ〜アリシアが恥ずかしがってる〜」
「はっはっはっこれは面白い」
ロアとダイアーは手を叩いて大笑いした。それを見てアリシアは顔を真っ赤にしながら、バンバンと地面を叩いて怒っている。
「ふふ、ふざけないでよ!!こんなのどこで拾って来たの!?」
「なんか中年ぐらいの人間がこの船に投げ入れてきたからそれを貰っただけだ」
ダイアーは確か⋯⋯と言いながら腕を組み、この書物の出どころを説明した。
「それとマンガはここから外に出て拾いに行きました。バレそうになって大変だったんですよ?」
アンヘルもマンガの出どころを自慢げに話す。
そうなんだ。だけどこの船に投げ入れた⋯⋯?
「この国の人間にバレてるんじゃないの?それってかなりマズイと思うんだけど?」
「大丈夫だ。俺の空間魔法によって、ここに人間が見ても入ってもバレることはない。あと、チェイスの時空魔法で時が止まって腹も減らん。マズイのは暇なことぐらいだ」
「そうなのよー。私たちやることなくてさ~」
確かに暇そう。最初に行方不明になったガイアーさんは、少なくとも五日はここにいるはずだから⋯⋯⋯⋯はぁ。これからどうしよう。私達全員の魔力を使っても元の世界には戻れそうにないし⋯⋯。
「暇ですねー何かないですかね」
ふとアリシアが船の外を見てみると、二人の青年が何やら妙な動きをしているのに気づいた。
「そうだね⋯⋯いや、なんかこの国の人間が何かやってるみたいだけど⋯⋯」
「ホントだーあれって魔法の詠唱じゃない?全然成功してないけど」
凄く長い詠唱をしてるみたいだが、全然成功していない。人間は魔法の扱いが下手とは聞いていたがこれほどとは⋯⋯。
「おい、アリシア。この世界であの二人みたいに魔法の練習をする者のことを『チュウニビョウ』と呼ぶらしい。さらに『チュウニビョウ』のほとんどが魔力を持っていないと思われるというのを別のマンガで知ったんだが⋯⋯あの二人は『チュウニビョウ』ではないのか?」
「そうかも知れないね。魔法の素質がないにも関わらず練習するとはすごい」
二人ともかなりの努力家なんだろう。私も見習わなくっちゃ。
あと⋯⋯あの二人に近づいてみるか。私達エルフにどんな反応をするか気になるし。
「あの二人に近づいてみようと思うんだけど⋯⋯三人はどう思う?」
アリシアは三人の意見を聞くことにした。
「まあ、いいんじゃない?」
「俺らはここで待ってるからな」
「危険だったら戻ってきてくださいよ?」
適当な返事しやがって⋯⋯まあいいや。この国の人はどのような反応をするか楽しみだ。前、人間に会った時は酷い目に遭ったけど。
アリシアはチュウニビョウの二人に向かって走って行った。
どうせ襲われても、反撃する力もないだろうから⋯⋯。
お読みいただきありがとうございました!!
〈オマケ〉
TV「ニュースです。十二箇所に及び、猥せつな内容の本を公園の遊具の中に不法投棄したとして、後藤太郎(39)がタイーホされました」
煌夜「よく分からない変態がいるもんだな⋯⋯」
ネタル「エロ本を発見してキャーキャー言う子供を見てニヤニヤしてたのかな」
煌夜「なるほど。犯人はロリコンのクズってことか。てかその本くれよ」
ネタル「やめなよ煌夜⋯⋯」