第二話 唐突すぎる自己紹介
俺の名は二宮煌夜。若干痩せ型で多分顔は中の上ぐらい。ニートの中でも上位に値する、『ネオ』をつけるにふさわしい人間だ。
東京都某所。
クソ暑い夏の昼過ぎ、煌夜と名乗る男の声が、誰にも聞こえることなく部屋に響く。
何故唐突に誰もいないマンションの一室で、一人寂しく自己紹介を始めたかと言うとな⋯⋯なんと俺は就職することにしたのだ!!すげぇだろ?だから自己紹介の練習をしている。
⋯⋯というか、履歴書ってどうやったら入手できるんだ?何を書けば良いのかさっぱり分からん。まあ、自己紹介の続きでもしよう。
俺が何故『ネオ』ニートになったかと言うと⋯⋯あとネオは重要だぞ?収入がある証だからな。おっと、話を戻そう。
高校の時に俺を虐待しまくってた両親が死んだ時から、俺の人生が変わった。マジで因果応報ザマァと思ったが、俺に優しくしてくれたばぁちゃんまで死んじまったのは最悪だった。その後両親は性格が悪すぎるために俺以外の親族全員から絶縁されていたらしいので、親族全員が「そいつらの金など受け取りたくもない」と言い、生命保険と遺産を俺が全て受け取った。
なんか知らんが二千万ぐらいあった。無駄に金持ちやつだと思った。ムカつく。
その時の俺は親族の皆と同じような考えで、両親の施しなど受けたくもなかったので、金を全て無くすためにとある小さな会社エックスの株を両親の金全額分買った。
我ながら最低なやつだと思う。少しだけ。ホントに少しだけ。しかし⋯⋯俺はあるニュースを見て凄まじく驚いた。
「えー次のニュースです。株式会社エックスが世界に轟くほどの製品を開発しました。また、この製品は発表されて三日でグレイトデザイン賞を受賞するなど、前代未聞の事態が発生しています。しかし店頭で売り切れが続いたり、ネットオークション等で高値で転売されたりと、社会問題になりつつあります」
「はあ?なんでだよ」
そのニュースを見た後、三週間ぶりに株価を見てみた。約百五十倍になってた。しかも開発資金の提供を感謝するメールが三件ほど届いていた。運が良いのか悪いのか⋯⋯そんなこんなで今の俺が出来上がっている。
それは置いといて(数少ない)友人のネタルに履歴書の書き方を教えに来てもらおう。
ちなみにネタルはあだ名だ。本名は神谷弥。情報通で、寝ることとパソコンの扱いが天才だったので俺がつけた。たまにオタルというときもある。理由は沢山のアニメのディスク⋯⋯。
「もしもし、俺だ煌夜だ。履歴書の書き方を教えて欲しいからちょっとうちのマンションの前の公園まで来てくれないか?何?ネオニートがそんなこと知らんって?良いからサッサとこい。いいな?」
ちなみにネタルもネオニートだ。俺の両親の金を無くす為に百万渡して競馬に行かせたら、一億になった。ドウシテコウナッタ。俺には株の金があるので、それはネタルにやった。こいつも一億を元手にネオニートをやってる。
しかし、筋トレをしているらしくデブにはなっていない。ネオニートは暇なのだ。
「さて、公園に行くか」
煌夜はまた一人寂しく独り言を言うと、公園に向かって行った。
「あっ煌夜だ。おせーよ」
どうやら待たせてしまったようでネタルを怒らせてしまったようだ。
「ごめん待った?」「いや、全然待ってないよ」
なんて甘酸っぱいことなんて起きるわけない。
「ネタル。ちなみに情報通のお前ならちゃっちゃと調べて来てくれただろ?」
「悪いけど、興味ないので調べてない」
「は?ふざけんなよ」
何でだよ!?俺の世間の風当たりを何だと思ってるんだ。
「ちなみに何故仕事をしたいと思ったの?」
「趣味だ。それと毎日パソコンに向かうのは飽きたからな。こういうことを書けばいいんだろ」
するとネタルは呆れたように返答した。明らかに馬鹿にするような表情だ。ムカつく。
「煌夜は馬鹿なの?そんなんで面接受かるわけないじゃん。僕だったら帰れって命令形でガツンと言うよ。煌夜が面接官だったらどうしてる?」
「⋯⋯多分俺も同じ事してる」
はぁ、やっぱ趣味はマズかったな。というか履歴書ってホントに何書きゃいいか分からん。好きな食べ物とか書くのか?あっ好きなソシャゲのこととか書きたいな。
話は変わるが会社だと割と重要らしい丁寧な喋り方は牛丼屋で注文するぐらいのしか出来ん。尊敬だっけ?そんなん知らん。
とりあえず自販でジュースでも買うか。ネタルにも奢ってやろう。
「自販でなんか買うからお前は何がいい?」
「僕はコーラゼロで」
「オッケー」
俺は自販でジュースを買いに行った。おっ、新商品のアップルサイダーか。俺はこれにしよう。
あれ?公園にある木製の大きな船の入り口の空間がゆがんでいる気がするが気のせいか?
⋯⋯多分気のせいだ。俺は昨日⋯⋯じゃなくて今日は三時間しか寝てないからな。
「おーい、ネタル。コーラゼロだぞー」
「おい危ないだろ、投げないでよ」
「わりぃわりぃ」
ふぁ眠たい。ネタル帰らせて寝ようかな?どーせコイツにやる事なんてないだろーしな。
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