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三竦みの魔王がいる世界の物語  作者: 史塚 晃
第三章
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22話 新たな出会い その3


 カロンが初対面の人間に敵意を持って発言したことには、

 もちろんそれ相応の理由がある。

 彼女の今の仕事はエルリアの護衛と教育であるのだが、目の前に現れた男女の女の方から、普通の『ジン族《人》』からは感じることのできない魔力にも似た、力の波動のようなものを感じたためであった。

 ここで言う魔力というのは、自らの生命力と精神力を使って発現させる現象のことを指していて、魔王が『狂化』を抑制するために使っている力もこれにあたる。

 そして、『ジン族《人》』は魔力を使えないとされていた。

 魔王も『ジン族《人》』であるが、紋章の力を借りることによって魔力を扱えるようになるのは理解できたが、それ以外の『ジン族《人》』から本来感じるはずのないものを感じた為、エルリアの護衛である彼女は警戒したのだった。


「ワタシはルイン・ウィンスレット。こっちはギズロ・ヘンリーク。

 何が貴方の気に障ったかは知らないが、こちらに非があるのなら謝罪しよう。

 ただ、謂れのない敵意や悪意に対しては、

 ワタシも黙っているわけにはいかないのでな。

 説明をしていただけるかな?」


 突然、敵意をむき出しに自分へ突っかかってきた相手。

 その人物への対応としては、これ以上のものは望めないであろう。

 そして、ルインのこの対応が、結果としてカロンの頭を冷やすことになった。


 この場所へ来て唐突に力の波動を感じたことから、このような態度を取ったカロンであったが、よくよく周りを見てみるとソウタツがいたのだ。

 当然、彼女の感じたものは彼も感じているはずで、その彼が何も言っていないのであれば、それは安全ということなのである。

 ルインの質問に対して、魔力の波動を感じたから、と答えることが出来ない彼女は、なんとかごまかさなければならなかった。


「そこ……、うちらの席なんですけど?」


「なるほど……。

 自分たちの指定席を、見知らぬワタシたちが占拠していることに腹を立てた。

 そういうことなのかな?ならば……」


 おそらく謝罪の言葉が続くはずであったが、カロンがそれより前に、


「もういいー。こっちもいきなり怒って大人げなかった。

 ごめんなさいでした」


 そう言って、頭を下げた。

 カロンにしてみれば、自分の勇み足であったことは事実で、それに対して頭を下げることは苦痛ではなかった。


「そう素直に謝罪されるとは思ってなかった……。

 提案があるんだけど、もう一度自己紹介からやり直さない?」


 謝罪されたことで、ルインの口調もすこし柔らかいものになる。

 そして、この提案を受けて、エルリア・カロン・ルイン・ギズロの四人は、

 もう一度自己紹介からやり直したのであった。



◇ ◆ ◇



「ワタシたちはこの辺りで失礼することにします。

 楽しい時間をありがとうございました。

 また今度ご一緒しましょうね」


「いえいえ、それはこっちも同じですよ。

 是非、またお願いします」


「カロンちゃん、エルちゃん、カズさん、ソウタツさん。

 また一緒に食事しようね~」


 ルインとギズロはそう挨拶して帰って行った。

 カズキとエルリアは家で仕事をしているラフィルの為の食事を屋台街で買い、それを届けるつもりでいる。

 ソウタツとカロンは少し話があるからと、まだテーブルに残っていた。


「ソウタツ、気がついてたんでしょ?なんで、ほっといたー?」


 カロンが尋ねているのは、ルインから感じていた力の波動のことだった。


「最初は使ってなかったんだ。

 男の方が女をからかってから使い始めた。

 つまり、あれは俺たちを対象としたものじゃない」


「だとしてもー、ほっといていいってわけじゃないじゃん?」


「攻撃性のあるものならな。

 少し観察したが、あれはそういう類のものじゃない。

 どちらかというと、受身な感じだった。

 自分の起こした言動に対して、相手がどう思っているか。

 それを察知する能力か、それに近い感じのものだろうな。

 しかも、俺たちには効いていなかったしな」


「ひぇー、そこまでわかるもんなんだ……。

 伊達に魔王様に情報分析の仕事任されてるわけじゃないってことかー。

 見た目マッチョなくせに……。

 そんなの詐欺じゃん!」


「うるさい。

 俺たちも戻るぞ」


「はいよー」


 ソウタツには気になることも、もちろんあった。

 なぜ、ルインがそのような力が使えるのか?

 その力が通じない相手が揃っていることに対して、

 何かしてくるのではないか?

 しかし、自分に命じられていることは、

 護衛と訓練で敵になりそうなものを排除することではない。

 万が一、エルリアに危害を加えてくるようなことがあれば、

 それはその時に対処すれば良い。

 そう考えて、この時は自宅に帰ることにしたのだった。



 一方、詰所へ戻るルインとギズロの二人。

 ルインは何か考えながら歩いているようである。


「隊長、難しい顔してどうしたんですか?」


「ギズロ、お前に頼みがある」


「ソウタツさんに恋人がいるかどうかの身辺調査以外なら、なんでも」


「そういう話じゃない。もっと真面目な話だ。

 ワタシの能力は知っているよな?」


「そりゃもう……。

 そのせいで一番苦労してるのは、俺ですよ!」


「今日会ったあの四人な……。

 四人とも心が読めなかったんだよ……。

 こんなことは初めてだ……」


「調子が悪かったわけじゃないですよね。

 俺が途中でからかってから、使い始めてましたし……」


「ほう……。

 使い始めたところまで、わかっていたのか。

 というわけで、あの四人のことを調べて欲しい」


「ちゃんとした訳のある仕事なら、断る理由がないですね。

 わかりました。まかせてください」


 ルインの能力はソウタツの想像通りであった。

 そして、心配した通りの展開でもある。

 情報分析担当の面目躍如と言ったところであるが、

 それはカズキたちに取って、嬉しくない展開なのである。

 この会話の後二人は何も話さず、

 お互い何かを考えながら詰所へと歩いて行った。


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