2.5日前
◆ココア
ラッシュフォード王子が、マリー伯爵令嬢を婚約破棄した後。
その夜。
王城の一室。
マリーの親友で、王子の【現在】の婚約者、ココアがいた。
私、ココアは先程の一件、婚約破棄を悲しく思っていた。
マリーの泣き顔を見て心が痛んだのだ。
私にとってはマリーは今でも親友だ。
仲良し四人組『四葉のクローバー=リーフカルテット』の一人。
ずっと親しくしてきたのだ。
私は一番小さく、マリーは優しいお姉さんように接してくれていた。
『四葉のクローバー=リーフカルテット』
そういわれる所以は、ただ仲がいいからではないのだ。
一人一人に精霊の加護が宿っているからだ。
それぞれの体に花の刻印が刻まれており、その花が彼女達を象徴していた。
しっかり者の女の子、アイリスには【初恋草】。
花言葉は『淡い初恋』。
たくさんの花が被って蝶が舞うようになる可憐な花である。
アイリスの周りにはいつも蝶のように人が集っていた。
そのため、彼女に与えられた言葉は『時運』
アイリスが人と人を結びつけ、時の運そのものを変えるように思われているのだ。
その縁で、アイリスの婚約者レインは、若くして『王国選定騎士=王選』に選ばれたのかもしれない。
いつも冷静な女の子、サクラには【パンジー】。
花言葉は『物思い、心の平和』
つぼみが下を向き、人が頭をたれて考える姿に似ていることから知性の象徴だと言われている。
そんな彼女も、常に何かを考えている女の子だった。
そのため、彼女に与えられた言葉は『慧眼』
4人の中で一番賢いのはサクラだった。
皆の優しいお姉さん、マリーには【ローズマリー】。
花言葉は『思い出』。
老齢な王妃が、ローズマリー入りの治療水を飲むと若返り、20代の王子にプロポーズされたところからきている。
マリーには優しいおばあちゃんの様に、どこか人を優しく包み込むところがあったのだ。
そのため、彼女に与えられた言葉は『慈愛』。
慈愛の心で皆をつつみこみ、安らぎを与えた。
そんなマリーが御伽噺のように、王子様にプロポーズされて婚約者になったことには、誰もが納得していた。
きっといい王妃になるだろうと誰もが期待していたのだ。
そして一番小さな女の子、私にあるのは【キンセンカ】。
花言葉は【悲嘆】。
悲しみに耐える、別離の悲しみ、さびしさに耐える等々の意味がある。
しかし、私は正直は悲しみに耐えるのは苦手だ。
確かに一人で抱え込んで問題を解決しようとすることが多い。
だからか、私に与えられた言葉は『勇気』。
実際私は単独行動をするせいか、皆より色々な問題に関わることが多かったと思う。
初恋草 :時運=アイリス
パンジー :慧眼=サクラ
キンセンカ :勇気=ココア
ローズマリー:慈愛=マリー
これが、私たち『四葉のクローバー=リーフカルテット』に与えられた加護。
精霊の加護を受けるのは幸運の象徴。
加護を受けたからといって、これといって具体的な能力を得られるわけでがない。
ただの迷信だとはいわれているが・・・
私たち仲良し4人組、全員に加護があるのはまさしく幸運だった。
なぜなら、この加護のおかげで親友になれたのだから。
私は自分の胸元に刻印された文様を見る。
黄色のキンセンカが刻印されている。
寂しさに耐える「勇気」の象徴だ。
でも今の私は・・・・
寂しさ、悲しみに耐えられるか自信がない。
マリーの泣き顔に大きな悲しみをうけていたのだ。
でも・・・・
こうすること。
マリーと王子の婚約を破棄し、私が王子と一時的にでも婚約を結ぶことが・・・
私たちにとっては一番良いことだと思ってる。
なぜなら・・・・
「・・・・・・・・・」
私は不安を自分の心の中に押し込む。
不安を言葉にはしない。
私は自分一人でこの問題に解決しようと思ったのだ。
なぜなら、私に与えられた言葉は「勇気」。
どんな不安、寂しさ、悲しみにも耐えようと思うから。
きっと、今回の問題だって乗り越えられると思ったから。
だからこそ、私はマリーと王子の婚約を破談にしたのだから。
私がふと窓の外を見ると・・・
(!?)
窓に映るのは・・・私以外にもう一人の姿。
(私しか部屋にいないはずなのに・・・・もう一人いる)
ココアは慌てて振り返る。
相手を眺める。
「なぜ・・・なぜあなたがここに・・・・いつ部屋の中に?」
私がそう呟くと・・・
私の目に入ったのは・・・ナイフ。
目の前の人物はナイフを握っていたのだ。
(なんで、あなたがナイフを持って・・・・私の前に・・・・)
私は考える。
そして思ったのでした。
(あなたが・・・・あなたが犯人だったのですか・・・)
私がマリーと王子の婚約を破談においこんだ理由。
こんなことをした理由の答えが目の前にあった。
私はこの時。
私が抱いていた不安、私が抱え込んでいた問題を正体を・・・・答えを知った。
だが・・・時既に遅し。
私に「勇気」はあったかもしれませんが・・・「慧眼」はなかったのです。
(もっと早く気づいていれば・・・・)
ズブシッ!
私の体に、一直線にナイフが振り落とされた。
私は死ぬ直前。
倒れる寸前にカーテンをひっぱった。
カーテンを巻き込みながら倒れることで、花瓶が床に落ち割れる。
ガシャン
物音がする。
侵入者はその音で逃げる。
そして、私は消え行く意識の中で、手の中にとある紙切れを握ったのだった。
こうして。
『四葉のクローバー=リーフカルテット』の一人。
キンセンカ、「勇気」の象徴であるココアは、王子の婚約者になったその日に。
その生涯を閉じたのでした。
―――ココアの最後の行為は、確かに「勇気」を象徴していた
―――そして
―――四葉は三葉になったのでした。
【アイリス、婚約破棄まで・・・・あと2.5日】
【残りのクローバー・・・・・3枚】
※お気づきかもしれませんが、全て12月の花です。花言葉は現代のモノと同じです。
因みに【原産地】は・・・・
初恋草:オーストラリア西南部
パンジー:ヨーロッパ、西アジア
ローズマリー:フランス、スペイン、北アフリカ
キンセンカ:南ヨーロッパ
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短編が好評?であったため、連載を始めました。
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「【連載版】生産職の俺は彼女を寝取られたので、パーティーを抜けて自立することにした」
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