3日前
ちょっと違った婚約破棄、予告婚約破棄。
数話完結予定。
他の連載作品もありますので、こちらはゆっくり更新したいと思います。
できれば、1週間以内・・・
「マリー、君との婚約を破棄する!」
王城の一室。
よく手入れされた金色の髪。
豪華な衣装に身を包んだ端正な顔の男。
ライン・ラッシュフォード王子が告げる。
マリー伯爵令嬢は「えっ」っと小さく声を出して驚いた。
まさか婚約破棄されるとは思ってもいなかった。
ずっと上手くいっていると感じていたのだ。
「マリー、知っているぞ。君の数々の暴言。
僕の婚約者という身をいいことに、このかわいらしいココアをイビリ倒したそうじゃないか。
言葉の暴力だけでは飽き足らず・・・・ついには彼女を階段から突き落としたそうじゃないか。
おかげで天使のような彼女がどんなに傷ついたか・・・見ろ、このいたいけな姿をっ!」
王子の隣にはココア。
ふわっとした茶色の髪がかわいらしい、小柄な女の子。
思わず守ってあげたくなるような子だ。
そんな彼女は痛々しく包帯を巻き、王子傍で申し訳なさそうな顔をしている。
ちょこんと王子の服の袖を掴んでいる。
「えっ、一体何が・・・」
マリーは何が何だか分からなかった。
何も心当たりがないのだ。
ココアをいじめた事など微塵も記憶にない。
だが王子は話を続ける。
それが事実かのように。
「まったく、よくもそんな悪魔地味たことができたものだ。実際の悪魔でもそんなことはできまい。
僕が話を聞いたとき・・・どんなに衝撃を受けたか・・・・そして失神する程頭が痛かった!」
大げさな動きで頭を抑える王子。
クラッっとよろめく。
この王子は自分に酔っているところがあり、たびたびオーバーなジェスチャーをするのだ。
そんな王子を、「大丈夫ですか、殿下っ!」っと、心配そうに側近が支える。
「ラッシュ、違うんです。私は・・・」
たった今婚約破棄されたマリーが抗議するが。
「黙れ!マリー、君と言葉を交わすつもりはない。話すだけ時間の無駄だっ!
その毒舌は閉じていろっ!
これは決定事項!君はもはや過ぎ去った過去。
今の私の婚約者はココアだっ!」
「なぁっ!」
マリーが驚く。
「衛兵、この悪女を連れ出せっ!
私の婚約者でない以上、この空間にいることは許さんっ!」
「ま、待ってください」
抗議するマリーも空しく。
彼女は衛兵に部屋を追い出されたのだった。
その姿を見て、王子の隣でココアは小さく微笑んだのだった。
そして誰にも聞こえないように呟いたのだった。
「これで・・・いいのぉ。これが・・・皆にとって一番良い道だからっ」っと。
◆
数時間後。
とある屋敷。
泣き崩れるマリー伯爵令嬢。
そんな彼女を慰めるのが私、アイリス公爵令嬢。
「マリー、大変だったね」
「う、うん・・・」
マリーは泣いていた。
王城で婚約破棄されて、一直線にアイリスの家にきたのだ。
王子との婚約を破談にしてしまい、両親に合わす顔がなかった。
自分の家には帰れなかった。
そこで選んだのが親友の家だったのだ。
私はマリーの背中をさする。
「気にすることないよ。王子だってココアの嘘にいつか気づくよ」
「そうだ、気にするな。ココアよりマリーの方が魅力的だ」
私と一緒にマリーを慰めるのは、レイン伯爵。
艶やかな短い黒髪と、茶目っ気のある茶色の瞳が魅力的。
背中に大きな鷲の文様を施した、紅色の制服に身を包んでいる。
その姿は、彼が国で7人だけ選ばれる最強の騎士、『王国選定騎士=王選』であることを示している。
通常は実績のある壮年の騎士が選ばれることが多いのだが、彼は若くして選ばれたのだ。
王選に選ばれることは、国で最高の栄誉だといわれており、子供の憧れの的だ。
彼が私の婚約者だ。
「でも、許せないな。親友ずらして、まさか友達の婚約者を寝取るなんて!どうなってるんだ?
何が何だか分からない」
レインは義憤に震える。
今回の事態に戸惑っているようだ。
その気持ちは分かる。
そう。
私も驚いているのだから。
私とマリー、それにココアは友達同士だったのだ。
もう一人の友達を加えて、仲良し4人組みだった。
周りからは、『四葉のクローバー=リーフカルテット』と呼ばれる程仲良しだった。
ココアは私達の中で一番小さくて、女の子らしくて・・・・妹的存在だったのだ。
そんなココアがまさか・・・マリーの婚約者を奪うなんて・・
でも・・・
今はココアのことよりも、目の前で泣いているマリーだ。
「マリー、今はココアのことは忘れよう。ねぇ」
「う、うん・・・・」
泣き続けるマリー。
私は泣くマリーの背中をさすり続ける。
この時私は考えていた。
まさか上手くいっていると思っていたマリーと王子がこんなことになるなんて・・・
想像を超えることもあるものだと。
私はマリーの結婚式を楽しみにしていたのだ。
2人で結婚式のことをよく話していた。
なのに今、マリーは泣いている。
私は婚約者のレインとマリーを慰めた。
悲しむマリーを尻目に、私はレインの存在に暖められたのだ。
自分の婚約者のレインがマリーのために悲しんでくれている。
怒ってくれている。
だからこそ、私たちは大丈夫、私とレインは結婚できると思っていた。
私たちは上手くいっていると・・・・
2人の未来は明るいと・・・・
―――でもそれは・・・・
―――大きな勘違いだったのです
―――まさか・・・
―――この三日後、私が婚約破棄されることになるなんて・・・
―――この時は露ほど思っていませんでした・・・・
―――そうです。
―――今私の隣で婚約破棄に怒りを浮かべている・・・・・
―――私の婚約者レインに・・・・
―――婚約破棄されるなんて
―――微塵も思っていなかったのです
【アイリス、婚約破棄まで・・・・あと3日】
始まりの話でした。
次は、親友を裏切り、王子と新たに婚約したココアの話です。
その後は・・・・
傷ついたマリー (今回婚約破棄された)、王子、王選のレイン (アイリスの婚約者)。
もう一人の『四葉のクローバー=リーフカルテット』、他の王選 、等々のお話を予定しています。
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【追記】
1/1、1/2に次話投稿予定です。