レノという少年
とある小さな町
-ガランタード-
「…よっし、こんなものでいいだろ!」
家内のキッチンにて一人満足そうな笑みを浮かべる30代後半くらいの男。
目の前にはいかにも美味そうな料理がいくつも並んでいる。
「そろそろあいつらを呼びに行かねえとな…全く、祭りまで待つことはできないのか?」
男はため息混じりにそう呟くと、誰かを呼びに行くために家から出ていった。
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「いくぞ、レイヤード流…光白閃!」
「なーにかっこつけてんだよ、何回やっても当たらねえからそんなの!」
「そうだぜ?ちゃんとした武器でならわかるがこんな木の棒切れでとか笑うわー」
「レノにい、がんばれー!きょうこそきめちゃえー!」
町の広場で男女4人の子供達が何やらチャンバラごっこをして遊んでおり、レノと呼ばれる少年はもう一人の少年から一本取ろうと頑張っているようだ。
しかし先程から当たらないせいかレノは少年2人に嘲笑われている。
「ほらよ、いただきだぜ!?」
「しま…がっ!」
「はいー、今日もお前の負けな。レノ」
木の棒を振ってはかわされ振ってはかわされを繰り返したせいかレノに隙が出来始める。
そしてそこにすかさず少年の一撃が当たるとレノは地面に倒れてしまった。
「レノにい、しっかりして!」
「く…そぉ…!ちっくしょう…!」
「じゃあ今年の祭りもお前の奢りってことでよろしくなー」
「お前は一生俺らのパシリがお似合いだぜ」
少年達が勝ち誇って広場から立ち去るのを見て地面に拳をガンガン叩きつけるレノ。
徐々に拳の甲が赤くなり、後数回地面を殴ると拳が酷いことになるのだがそこを誰かが止めた。
「その辺にしておけ、レノ。悔しいのはわかるがそれによって自分自身を傷付けるのは良くない」
「親父…!わかってるよ!けど俺は…!」
「いいから落ち着け。それに今日の夜はかつてこの世界に平穏をもたらした英雄達を讃える祭りだということを忘れるなよ」
「…っ!」
レノの父は怒り悶えるレノを落ち着かせようとする、がレノにはやはり納得がいかずそのままどこかへと走り去っていってしまった。
「レノにい…」
「心配するなルリス、今はそっとさせておくんだ。さ、俺が腕を奮って作ったせっかくの料理が冷めちまうから家に戻ろう」
「え!?おとうさんのりょうり!?わーい、たのしみー!」
レノを心配する妹ルリスだったが、レノの父のその一言でその気持ちもどこへやら。
曇った表情からすぐにぱあっとした表情を浮かべると、レノの父と手を繋いで家へと戻っていくのであった。
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