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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

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97 教団との手合わせ2

 その壁を回避できずに二人の剣士が激突した。

 しかし、その時にはもう大きくイマージュが飛び上がっている。

 否、これはレヴィテーションだろうか? でも、こんなタカが滑空するように移動できる魔法ではないはずなんだけど……。


「あれはレヴィテーションにウィンドバインドを組み合わせたものです。一対一で強敵と戦う場合だけに使う手法ですね」

 姫にとっては不思議な手法でもなんでもないらしい。


 もう、敵の背後にイマージュは回り込んで、首元を木剣で突いた。

「うごあっ……」と濁った声を出して、男の一人が倒れる。


 さらにすぐそばにいたもう一人の男と対峙する。こちらは覇気が感じられないとしゃべっていたほうだ。この男は、なんとか態勢を立て直しているから、それなりにやるらしい。


「くそっ……。ああも早く、大地に関する魔法が効き目を持つとは!」

「はっきり言うぞ。見通しが甘すぎる。ああやって突っ込んできた時点で、お前たちは魔法を剣の補助に使うタイプの魔法剣士だとわかった。わかってしまえば、それだけのことだ。手の内はわかる。一方でお前たちはこちらがどういう魔法剣士かわからないまま。勝手に不利になってどうする」


 これだけ真面目な表情のイマージュは長らく見た覚えがない。いや、真面目というか、殺気を放っているのだ。俺を鍛えてくれた時とも、また態度が違う。


「何を! まだ、勝負は終わってな――」


 その言葉を発する前にイマージュが木剣を敵の体に叩きこんでいた。

 胸を撃たれた敵はそのまま吹き飛んでいく。


「勝負などとっくに決している。それがわからないということは、それだけ力量がないということだ」


 ぱんぱんとイマージュは落ち着いた顔で手を叩いた。

 おい、これ、強すぎるんじゃないか……? 結局、本当の実力はよくわからないままだ。


「イマージュ、お前はなんでもかんでも説明しすぎだ。はっきり言って痛々しいぞ。恥ずかしいぞ」

「タクラジュこそ、もっとタイミングよくウォール・オブ・アースを唱えていれば、直撃させて、それだけで戦闘不能にできた。ずれたから一手間増えたんだ」


 また、いつものように軽口を叩きだしたけど、教団側はざわついていた。

「二人が完敗した……」「勝負にすらならなかったぞ……」なんて声がする。

 なにより、ラクランテさんが唖然とした顔をして、口を半開きにしていた。そんな結果は想定してなかったという顔だ。


「魔法剣士といっても、いくつかのタイプがありますね。一つはあくまでも剣が主流で、その補助に魔法を使用する者。教団側の方はそうだったようですが、イマージュとタクラジュはそうではありませんので」

 姫の言葉は二人への信頼で満ちている。


「イマージュとタクラジュはあくまでも、一流の魔法使いです。その魔法使いが剣も使えるんです。もっとも、剣だけでも負けるつもりはないですが」

「な、なるほど……。お見事です……」

 ラクランテさんはすごく居心地が悪そうだ。

 教団側の人間が負傷した二人を運び出している。


「これ、二人とも、伝説の魔法剣士の力量なんじゃないですか……?」

 神剣を使う資格もあるんじゃないか。

「それはいくらなんでも盛りすぎですね。それ以上のものがまったく想像できないような次元でなければ神剣を扱う魔法剣士とは言えません。二人は一流の魔法使いですが、頂点とはまだ言えませんから」


 俺ももっと上を目指さないとダメだな。こんなところでのんびりしてられない……。


「では、次の試合は、どちらの方が」

 姫が俺のほうをちらっと見た。姫を先に戦わせるなんてことはありえないからな。


「俺がやります。島津時介、魔法剣士です。よろしくお願いします」

「わかりました。こちらも選りすぐりの者を出しましょう……」


 俺はイマージュから木剣を受け取る。

「師匠って、やっぱり強かったんですね」

「敵が弱いだけだ。覇気を出すまでもない。というか、覇気がどうとか言う奴は二流だから、気にしなくていいぞ。精神論に向かう前にもっと基本的なことを磨け。バカか。敵が何してくるかわからないのに、なんで二人して突っ込むんだ。魔法剣士なんだから、魔法で迎撃するわ。あほか。かといって別に剣技もたいしたことないし。やっぱり、あほだな。この教団の中では強いから勘違いしてるだけだ。あほ」


 あほって言いすぎだろ。

 けど、わかりはする。敵の動きはおおざっぱすぎた。これが戦争なら殺されている。


「多分、次の敵はもうちょっとマシなのが来るだろう。だから、師匠としてアドバイスをしてやる」

 ぽんとイマージュが俺の肩を叩く。


「徹底して魔法で攻撃しろ。剣は補助手段程度の発想でいい」

「それ、剣の師匠に言われるの、なんか悲しいですね……」


「これを実戦だと仮定したら、最も勝算の高いやり方で立ち向かうべきだ。勝算が高いということは生き残る可能性も高いということ。接近する前に攻撃できるのが魔法の利点だ。剣はその勝算をさらに高めるために使え」


 多分、これが剣士としてのアドバイスならまた変わったことを言われただろう。事実、イマージュは俺の「剣士の師匠」であって、「魔法剣士の師匠」じゃなかった。


「肝に銘じます。そして、必ず勝ちます」

 勝てない魔法剣士も剣士も何の価値もないからだ。練習でならいい勝負だったと言って納得してればいいが、実戦で負ければすべてを失う。


「そうだな。お前が使える攻撃魔法で最もいいものを使え」

 俺はうなずいて返答の代わりにする。


 もう、敵は出ていたからだ。あまり待たせると悪い。


 ずいぶんと白髪の多い壮年の男。歴戦の傭兵といった容貌で、顔に無数の傷がある。とても魔法を使うようには見えない。


「そちらの一行はみんな、やけに若いな。若い者には負けないようにせんとな」

 表情は落ち着いている。空気だけで熟練者だってことはわかる。


 敵に不足はないようだな。


「よろしくお願いしますね。実戦経験も少ないので、胸を借りるつもりでいきます」


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