表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/119

96 教団との手合わせ1

「その意志ははっきりと確かめさせていただきました。一国の指導者となられる方としてとてもご立派だと思います」

 ラクランテさんは厳しい表情のまま、姫を讃えた。


「しかし――まだ、皆さんの魔法使いとしての実力を確認できておりません。もし、頭数として加えるに足らないのであれば、我々だけで作戦は遂行いたします。それで王国の姫が身まかるというようなことはあってはなりませんので」


 タクラジュが無礼だと思ったのか前に出ようとしたが、姫がとどめた。


「そうお考えになられるのも当然かと思います。わたくしも命を落とすつもりは毛頭ありません。まずはこちらの実力を見極めていただければ幸いです」


 ここにいる人たちは俺たちのことを何も知らないに等しいし、こっちも相手の実力がよくわからない。


「では、こちらで教会の者と手合わせをお願いできますか?」


 場所を移る際、イマージュが声をかけてきた。

「こういう共闘は必ずまず力関係をはっきりさせようとする。完全なる対等な関係などというものはないからな」

「おっしゃりたいことはわかります。上下があいまいなままでは、指示を出しづらいですからね」


「ふん、イマージュの言うことはもっと多人数での共闘の場合だろうが。四人しかいないこちらが主導権を握れる可能性などない」

 またタクラジュが文句を言ったが、これも正しいとは思う。


 けど、それもあくまで一般論だ。


「どうせなら、四人でも主導権が握れるぐらいのことをしてやりましょうよ。そうでなきゃ面白くない」

 姉妹二人が顔を見合わせた。


「そうだな」「妹より骨がある奴であってほしいものだ」

 二人は思った以上に楽しそうな顔をしていた。実は俺も同じだ。自分の全力を見せる機会ってほとんどなかったんだよな。ここの教会の人間なら相当な使い手だろ。


 森を抜けたところに。木々に囲まれたテニスコートみたいな空間があった。

 そこに何人か、教会の関係者と思われる者が集まっている。ただ、聖職者らしい服装の者はいないから、村人のように暮らしてるのかもしれない。


「そちらに合った対戦相手をこちらもお出しします。剣士の方が多いようですが」

「わたくし以外はみな、魔法剣士です」

 姫がラクランテさんに説明する。


「イマージュとタクラジュは二人で連携して戦うことをむねとしていますので、二人同時でやらせていただけませんか?」

「なるほど、双子ならではのチームワークということですね」


 ラクランテさんの言葉にちょっと笑い出しそうになってしまった。むしろ、ちょっと「ぷっ……」と声が出た。

「おい、島津」「言いたいことはわかるが、反応で示すな」


「すみません。じゃあ、双子ならではのチームワークをお願いしますね」

 ものすごく二人が嫌そうな顔をした。絶対、連携とか無理だろ。


「まず、タクラジュを片付けてから私だけで敵を倒す」

「敵を攻撃すると見せかけてイマージュをつぶす」

「いきなり同士討ちかよ!」


 敵のほうも二人組が出てきた。中年の男二人だ。どちらも帯剣しているので、最低でも剣士ではあるようだ。


「教団側からは、マルガとクーウィーという者が相手をいたします。どちらも長らく魔法剣士として戦ってきた者です」

 解説役はラクランテさんがするらしい。名前を呼ばれて武骨そうな男二人が頭を下げた。


「王国側のタクラジュだ。ルールを教えていただきたい」

「木剣で五分やりあっていただきます。意地を張る場でもありませんし、それだけやれば自然と優劣はわかるかと」


 ラクランテさんの言葉は丁寧だが、表情からこちらを少し侮っているようなところが感じられた。こちらが少人数なのは間違いないことだし、ある程度はやむをえないかもしれない。

 あるいは帝国に屈していないことにそれなりの誇りを抱いているのだろうか。


 実は俺もガチでやる二人の戦いを見たことは少ない。なので、かなり興味があった。実戦で手を抜いていたことはないだろうけど、それだと敵との差がありすぎて、力の神髄を見る前に終わってしまうのだ。

 王城の中でも、姫の護衛をやる立場上、そんなに力を見せびらかす場も作らなかった。少なくとも、二人が同時にやるというのはなかったと思う。


 今回は敵も使い手のはずだし、期待が持てる。


 審判役はラクランテさんがやるらしく、「はじめてください」と手を振り下ろした。


 教団側の二人組は、なにやら符丁めいた言葉をぶつぶつつぶやいた。攻撃時のサインなんだろう。

 そして、二人で声をあげながら襲いかかってくる。


 走りながら男たちがそれぞれ呪文を詠唱する。


 二人の動きが圧倒的に加速した。さらに剣がオーラのようなもので包まれる。あれは強化系の魔法か。


「付近の仲間すべてに効果がある魔法ですね。それをお互いに唱えることで速さと攻撃力両方を効率よく高めたようです」

 姫は冷静に戦闘を眺めている。俺もその横で話を聞いていた。


「たしかにこれなら二人で戦うメリットがありますね」

「でも、まあ、元の威力が知れています」


 珍しく、姫は不敵な笑みを浮かべた。


「この勝負、こちらが勝ちました」


 タクラジュはぶつぶつと魔法の詠唱を行う。防御らしい態勢にも入らない。

 イマージュも大差はなく、ぶつぶつと詠唱を小声で行っていた。


「なんだ、なんだ! 魔法剣士のくせに戦う気持ちもないのか? 覇気が感じられんぞ!」

 バカにするというより叱咤するように敵の一人がしゃべった。


 しかし、そんな男の表情はすぐにこわばった。


 目の前の大地がせり上がって壁になる。

「なっ! こんな短時間でっ!」


 その壁を回避できずに二人の剣士が激突した。

本年最初の更新です。1月21日にレッドライジングブックスさんより書籍化去れます。よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ